従来からの「方程式」が通用しなくなったという事実
さらに興味深いのはアラブ票の行方だ。
大統領選挙の直前、カタールのテレビ局・アルジャジーラは、アラブ系有権者内部の分裂を米中西部ミシガン州のデトロイト郊外にあるディアボーンからの中継で伝えた。
ディアボーンは、別名「アラブ系アメリカ人の首都」と呼ばれていて、ミシガン州は大統領選を左右するとされたスイングステートの一つだ。
アルジャジーラの現地特派員は、「4年前の選挙ではアラブ票はバイデン氏を支持しましたが、今回は割れています。最新の現地の世論調査によると、2020年にアラブ票の32%を獲得したトランプ氏は、今回は42%ほどの票を獲得するのではないかと予測されています」と危機感を伝えた。
現地では、ディアボーンの商工会議所が音頭を取り、何とか民主党支持で票を一本化しようと動いていたことも報じられたが、アラブ系有権者は必ずしもそれには応じなかったようだ。
バイデン政権の対パレスチナ政策に不満があっても商工会議所が民主党支持を呼び掛けた理由は、「民主党政権に変革を促し中東政策を変えさせることは可能であっても、トランプ氏率いる共和党では望みがない」と判断したからだ。
しかし、有権者の多くは、現在のガザの惨状を目の当たりにし、なおイスラエルに武器を供給し続けるバイデン政権への怒りをより深刻に受け止めたようなのだ。
こうした事情から見えてくるのは、従来からの黒人や中南米系有権者が民主党を支持するという従来からの方程式が通用しなくなったという事実だ。
つまり、来年1月に誕生するトランプ政権の行方を占おうとしても単純な四則演算では追い付かないほど複雑化したのだ。
この記事の著者・富坂聰さんのメルマガ









