アメリカを強く意識した李強中国首相の発言
では中国は、そんなアメリカとどう向き合おうとしているのか。
実は、中国は選挙前から「トランプが良くてハリスが悪い」といった発想から早々と脱却していたと思われる。
別の表現をすれば、「不安定なアメリカの影響を受けない世界をできるだけ拡大」しようと動いてきたのだ。
実際、大統領選挙の期間中も、中国はそうした動きに余念がなかった。
象徴的なのはBRICS首脳会議であり、奇しくも開催が重なったのが、5日に上海で開幕した第7回中国国際輸入博覧会(輸入博)である。
輸入博初日に基調演説を行った李強首相は、「中国にとって輸入博の開催は開放的協力を拡大する重要な措置であり、世界に対する厳かな約束」だと強調した。
強くアメリカを意識した発言だ。
そもそも輸入博は、第1期トランプ政権時代に対中貿易不均衡を問題視するアメリカを意識してスタート。貿易不均衡への不満を解消するイベントに位置付けられた。
つまり、当初は中国経済の独り勝ちに対する世界の風当たりを和らげる目的だったが、いまでは中国のグローバル化推進の象徴の一つとなっている。
李は演説で「現在の世界は100年間なかった変化が加速し、反グローバリズムの思潮が台頭し、一国主義と保護主義が強まり、世界の平和発展事業の直面する不安定化要因と不確定要因が増加している」と暗にアメリカを批判。その上で、「このような状況であればあるほど、我々はなおさらに開放を堅持し、拡大し、高め、永続的な平和・安定と発展・繁栄を後押しする必要がある」と断じた。
ドナルド・トランプの大統領への返り咲きは中国にとって「吉」なのか、それとも「凶」なのかはわからない。しかし、トランプが「アメリカ・ファースト」を叫べば叫ぶほど世界のアメリカに対する警戒は強まり、もう一つの秩序を作り出そうとする中国の動きを加速させてしまうのかもしれない。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年11月10日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)
この記事の著者・富坂聰さんのメルマガ
image by: Algi Febri Sugita / Shutterstock.com









