報復型の「無差別攻撃事件」が頻発する中国。日本のマスコミによる「経済の低迷が原因」報道が“眉唾”な理由

 

不動産価格はピーク時から3割程度下がったとされ、資産の目減りによるマインドの消沈に加え、有望な投資対象を失ったショックが重なって資金が塩漬けになり、経済に悪影響を及ぼしている。

これは一瞬にして商業地の価格が8割下落してしまった日本のバブル崩壊とは違う。当時の日本人の多くは借金だけを抱え苦しんだが、中国の場合には、使う金が消えてしまったわけではない。

問題は自信喪失とよく指摘されるが、言い換えれば、将来への自信を回復すれば使う金はあるということだ。

中国経済のこのような現在地がどうやったら「5失」とつながるのか、具体的に知りたいものだが、矛盾はそれだけではない。

そもそも報復社会という言葉が社会に定着したのは、胡錦涛時代のことである。

当時の中国経済は低迷していただろうか?

むしろ絶好調ではなかったのか。報復社会は経済が上り坂でも多発するのだが、それは当然のことで、自暴自棄になる前提として「自分だけが不幸」という被害者意識がセットになっているからだ。

全体の経済が上り坂であればあるほど、余計に自分の不幸な境遇が際立ってしまうということでもある。

つまり報復社会の広がりと中国経済の低迷はそもそも連動するものではないし、それ以前に、中国経済が低迷しているという認識にも注意書きが必用だ。

中国経済が苦しんでいることに異論はないが、それは一方で当たり前の話でもあるからだ。

一つは中国経済がいま体質転換の過程にあり、ある程度の痛みが伴うことは当初から予測されていた。それが不動産依存からの脱却という大手術なのだ。

もう一つはコロナ後の財政規律の回復のため、大規模な景気対策を避けている点だ。

中国経済が「悪い」という場合、ひっかかるのが「何と比べて」という視点だ。

中国のコロナ前の絶好調の時期と比べれば見劣りするのは当たり前で、それが続くと考える方が不自然だ。

さらに別の国と比べたとき、たとえば欧米先進国と比べたときにはどうかといえば、とくに欧州との比較では中国経済の現状ははるかに楽観できる。

日本と比べても同じだ。

11月20日、フランスのテレビ「F2」のニュース番組は、「人員削減計画:この波は何に起因するのか?」と題して、各地で相次ぐリストラのニュースを長時間報じた。
 
番組の中では突然、「良いニュースもあります」と、プジョーの自転車工場跡地に中国のソーラーパネルメーカーが進出するというニュースを、まるで救世主のように伝えた──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年11月24日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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