報復型の「無差別攻撃事件」が頻発する中国。日本のマスコミによる「経済の低迷が原因」報道が“眉唾”な理由

Shutterstock_2228376417-2-2
 

日本の隣国・中国で最近、自動車を暴走させたり刃物で殺傷したりする「無差別殺人事件」が多発していると報じられています。このような凄惨な事件が起きてしまう根本原因は、一体何なのでしょうか? 今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂教授が、日本のマスコミで報じられている「中国の経済低迷が原因」とする説を一刀両断。過去の事例をあげながら、リアルな中国の現状をリポートしています。

無差別攻撃事件が多発の中国。日本で蔓延する「経済崩壊論」はどこまで信用できるのか?

中国ではいま、社会に対する報復型の暴力事件が頻発している。

中国語で「報復社会」と分類される犯罪で、たいていのケースは生活の行き詰まりが発端だ。無差別に人を攻撃するケースがほとんどで被害も多数に及ぶことから社会に深刻なダメージをもたらしている。

報復社会では当初、深センの小学校に通う生徒が犠牲になったことで日本メディアが過熱。「原因は、反日」とミスリードしたことで外交問題にも発展した。

その見立てはどこに消えてしまったのか。

反日説を煽った専門家は、いまでもテレビに出て「原因は『五失人員』」と解説しているから驚かされる。

五失人員とは報道によれば「投資の失敗、生活における失意、人間関係の調和の喪失、心理的なバランスの喪失、精神失調」の五つの「失」を指す。

そうであるならば、すべて個人的な問題であって社会問題ではない。ましてや政府の失政を問う話ではなかろうと突っ込みたくなるが、本稿の目的はそこではない。

この報復社会的犯罪の報道にからんで必ずセットで言及される「いま、中国経済が低迷しているので……」という見立てについてだ。「低迷」ならまだよい方で、なかには「失速」とまで表現される。

だが、本当に中国の現地を見てそんなことを言っているのだろうか。

私は11月の上旬、北京に1週間ほど滞在したが、大きな混乱が起きている雰囲気は感じなかった。

確かに、超高級レストランはガラガラで閑古鳥が鳴いていたが、少しリーズナブルな店はどこもにぎわっていた。

また空席が目立つ店でも、入り口には「外売」(テイクアウト)用の紙袋が積まれ、ひっきりなしにバイク便が出入りしていたので、実態はよくわからない。

現状を見る限り中国経済の現在地は、どんよりとした曇天の中にあって晴れる見込みがなかなか立たないといった状態なのだろう。ただ、決して土砂降りではない。

足を引っ張っているのは不動産市況の回復の遅れと、それに連動した個人消費の不振、そして米中貿易の前途に立ちはだかる暗雲だ。

この記事の著者・富坂聰さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 報復型の「無差別攻撃事件」が頻発する中国。日本のマスコミによる「経済の低迷が原因」報道が“眉唾”な理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け