中国に見限られた日本。グローバルサウスへ目を向け「極東の隣国」を軽視する習近平

 

グローバルサウス全般で存在感を示す中国

興味深かったのは、番組がその6億ドルのアメリカの投資規模を中国と比較して以下のように嘆いたことだ。

(6億ドルの投資)とはいっても、中国が2023年に投資した217億ドルと比べると雀の涙です。中国はこの20年間、サハラ以南のアフリカ諸国にとって最大の貿易相手となり、輸出先の20%を占めるまでになっているからです。輸入品の主なものは重金属、鉱物、エネルギー。中国はこれまでの24年間で、アフリカの53カ国に対し、合計1,820億ドルを投資しています。

要するに、中国のアフリカへの食い込み方に比べれば、アメリカが簡単に存在感を高めることは難しいというわけだ。

実際、今年行われた中国─アフリカ会議に際し、中国は「中国企業がアフリカ各国で新規建設や改修に参加した鉄道は合計1万キロメートルに達し、道路は10万キロメートル、橋梁は1,000本、港湾は100港、送変電網は6万6,000キロメートル、基幹通信網は15万キロメートル」と胸を張った。

こうしたアフリカでの存在感は、いまではグローバル・サウス全般に向けたものになりつつある。

そのことは11月13日から21日まで、APEC(アジア太平洋経済協力)非公式首脳会議、ペルーへの国賓訪問、G20サミット、ブラジルへの国賓訪問を一気にこなした習近平の外交に如実に表れている。

トランプシフトの裏で対中関係でも微妙な調整を迫られる日本

そんななかトランプ再登板後の立ち位置が難しくなるのが、日本である。

まずトランプがメキシコとカナダからの輸入品に対して25%の関税をかけると予告したことで、日本の自動車メーカーがダメージを受けることは避けられない事態だ。同時にトランプは、新日本製鉄のUSスチールの買収にも改めて「NO」とSNSで発信したのである。

さらにトランプシフトの裏側で、中国との関係も微妙な調整を迫られている。

中国がいま、先進国との関係にも増してグローバル・サウスに目を向けていることはあらためて触れるまでもないが、その傾向は日本軽視という特徴を通じて対日本にも帯びつつある。

分かりやすいの日中首脳会談の位置づけの変化だ。

習近平がAPECで会談した首脳は日本だけではない。同じタイミングで6カ国の首脳との会談をこなし、中国中央テレビ(CCTV)が夕方のニュース『新聞聯播』でそれを報じているのだが、問題はその順番だ。

韓国の尹錫悦大統領がトップ。続いてチリのガブリエル・ボリッチ大統領との会談が流れ、3番目にタイのペートンターン・シナワット首相。4番目にシンガポールのローレンス・ウォン首相と来て5番目にニュージーランドのクリストファー・ラクソン首相。そして6番目にやっと石破首相だったのだ。

CCTVの報道は、国の重要度や関係の好悪など総合的に判断される。つまり中国がいまどの国をどの程度重視しているのかが一目瞭然なのだ。

言論NPOの調査でも中国国民の日本に対する感情もいよいよ悪化が顕著となった。

これは本当に日本人が望んだ結果なのだろうか。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年12月8日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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