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イーロン・マスクが「米国を生まれ変わらせる」ためのモデルは日本だった⁉

トランプ政権の政府効率化省のトップに君臨するイーロン・マスクが米国を生まれ変わらせようとしています。そして驚くことに、そのモデルは日本なのだとか。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、日本自体も、強かった時代に立ち返るべきなのでは?と語ります。

CIを捨てて屋号に戻ろう

皆さん、こんにちは。

イーロン・マスク氏がXに「侘び寂び」と日本語で投稿し、話題を呼んでいます。

マスク氏は、トランプ政権の「政府効率化省」のトップです。と言っても、「政府効率化省」はNPOのような組織で、マスク氏は無給です。だから、しがらみなく大ナタが振るえます。

マスク氏は、単純に行革を行うだけでなく、人々の価値化を変えようとしています。

そのモデルは日本にあるとか。80年代の日本のように国家と企業が一丸となって働くイメージです。日本の強みは、米国のグローバリストによって奪われましたが、今度は米国が日本の強みを参考に、生まれ変わろうとしています。

日本も、日本が最も強かった時代に立ち返るべきではないでしょうか。

1,日本のCI(コーポレート・アイデンティティ)ブーム

日本のCI(コーポレート・アイデンティティ)ブームは、1980年代から1990年代初頭にかけて発生した企業のブランディング戦略の一環で、企業がロゴや社名を変更することを通じて、ブランドイメージを刷新しようとした動きのこと。この時期、日本はバブル経済の影響を受け、多くの企業がCIを導入した。CIは単なるVI(ビジュアル・アイデンティティ)にとどまらず、企業の理念や文化を反映する重要な要素とされたが、多くの場合、VIだけに終始した。

CIブームの背景には、企業の国際化と多角化があった。日本企業の社名は業種名がつくことが多かった。東洋レーヨン、帝国人絹という社名は、繊維以外の事業領域には相応しくなかった。そこで、東洋レーヨンは東レに、帝国人絹は帝人にすることで、業種のイメージから解放した。

日本企業のVIは、「暖簾紋」「屋号紋」と呼べれるものが多かった。三越は丸の中に越の字、伊勢丹は丸の中に伊藤屋の伊の字。キッコーマンは亀甲の中に萬の字。しかし、これらは海外の人には読めないし、分からない。
そこで海外展開する企業は、社名を英文字表記にして、無国籍のシンボルをVIとして使うようになった。こうした現実的な理由と、企業イメージを刷新したいというニーズが、バブル時代にはあったのだ。

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2.国際化で貧しくなった

CIブームは、おびただしいカタカナの社名と、無国籍のシンボルを生み出した。その結果、日本企業のイメージも無国籍となり、会社の歴史、祖業などを含むアイデンティティは消失した。多額の費用をかけ、コーポレート・アイデンティティのコンセプトやシンボルデザイン、カラー等を決定し、結果としてコーポレート・アイデンティティを失ったのだ。

日本のバブル景気は、国内需要が基本であり、そこに輸出が加わったものだ。国際化によってもたらされたものではない。

バブル崩壊後、国内生産から海外生産に移行したが、結果的に国民は貧しくなり、日本企業の淘汰が進んだ。もし、関税を維持し、国内製造業を保護すれば、日本経済の長期低迷は避けられたのではないか。また、海外資本の流入を規制することが出来れば、日本経済は健全に成長しただろう。

日本が導入した自由貿易、自由競争は、日本の国益を損ない、海外資本に利するものだった。日本経済が強かった時代に戻ることが、今後の成長につながるのではないか。

3.国際化は日本企業弱体化の陰謀

これからの時代は国際化時代であり、企業も国際化を目指さなければならない。世界は広いので、成長する可能性は無限大だ。こんな夢のようなことをマスコミや専門家に乗せられ、闇雲に海外生産、海外市場に突っ込んでいったのである。

しかし、海外進出すれば、今度は現地企業との競争が待っている。政府や業界とのコネもない中、地元に根差した企業に勝つのは容易ではない。

世界が広いと言っても、日本市場で通用する技術を持つ工場は少ない。工賃の低い工場は技術レベルも品質レベルも低いのだ。日本市場のレベルが下がれば、今度は外国企業が直接日本に乗り込んでくる。結果的に、海外生産で継続して儲けることは非常に難しい。

海外市場進出も同様だ。日本の消費者と海外の消費者は嗜好が異なる。日本の商品をそのまま持って行っても現地では売れない。

現地の消費者向けの商品を開発し、販売するビジネスも現地企業との競合が待っている。投資しようにも、信頼できるパートナーを確保するのは難しい。現地に親戚も友人もいない日本人は圧倒的に不利なのだ。

同様に、日本で生産し、日本で販売するビジネスなら日本人、日本企業が有利だ。「国際化」というフレーズは、日本企業を弱体化させる陰謀だったのかもしれない。

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4.国際化から国粋化へ

国際化とは、目を外に向ける発想だった。世界は広い。世界は可能性に満ちている。世界に飛び出すべきだ、と。

しかし、グローバリズムが浸透した結果、世界はそれほど広くないことが分かった。本気で生産すれば、供給過剰になってしまう。また、世界に共通のルールは存在しない。フェアな勝負は困難なのだ。

グローバリズムは、貧富の格差を拡大し、一部の人間が富を独占してしまう。むしろ、世界は細分化していい。各国が独自の文化を守ることで、自立した経済が保てるのだ。

今後は、目を内側に向ける時代が来るのではないか。国粋化である。

国粋化というと、国粋主義を思い浮かべる人もいるだろう。近代日本において国粋主義は、欧化主義に対抗して、日本の文化・伝統の独自性を強調・発揚し、これを保守しようとする政治思想で、尊王攘夷思想のような排他的なものだった。

ここで言う「国粋化」は、グローバリズムの経験を経て、その反省の下で日本に目を向けようというものだ。

これまで、単一のグローバル市場を想定していたが、それは幻想だった。むしろ、日本らしさを追求することで、それに共感する世界中の顧客を獲得することが出来る。日本の色を消して世界に出るのではなく、日本の色を取り戻して、日本に顧客を呼び込む発想が重要だ。

日本らしいブランディングを考えれば、日本の歴史を遡り屋号や暖簾紋に行き着くのではないか。無国籍なデザインは、伝統や文化のない国でも可能だ。しかし、日本独自の屋号や暖簾紋は日本企業にしか使えない。我々は胸を張って古い暖簾に掛け直す時代に生きているのだ。

■編集後記「締めの都々逸」

「日本良いとこ 一度はおいで 飯は旨いし 人も良し」

「国粋化を目指せ」と言いながら、やたらと「日本は最高」という人は信用できないとも思います。日本にも改善すべき点は多いし、たゆまぬ努力が必要です。現状に満足していたのでは向上しません。と言って、「米国が理想」「中国は凄い」という意見にも反論を唱えたくなります。

まあ、日本、米国、中国にもそれぞれ良いところと悪いところがあるわけで、その中で日本はかなりましです。日本の良さは、海外に出るとよく分かります。ですから、海外に行くのは良いことです。

でも、仕事は日本を中心にすべきです。そして、お金を国内で回す。海外に持ち出すと日本は貧しくなります。海外投資より国内投資。海外投資を推奨する人は、海外資本からお金をもらっています。米国株を推奨する新NISAは大丈夫でしょうか。(坂口昌章)

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image by: Thrive Studios / Shutterstock.com

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