4つの宗教が共存するインドの小さな町で見た、日本人が知らない「現実」

 

私が訪問したのは、朝の早い時間だから苦行にはならず、爽快な気分で丘の上から町を見下ろす。

山がちなこの土地にはココナツの木を中心に、バナナの畑や米の田圃も点在する。

その中にあってキリスト教のカトリック教会もココナツの木と争うように尖塔に十字架を掲げている。

この小さな町には、4つの宗教が入り交じっていることになる。

前日にはカトリック教会で行われた結婚式に出席した。

司祭の説教と祈りと讃美歌と儀式で繰り広げられた言語が理解できない約2時間のセレモニー。

それなりに見ごたえがあったが、インドの民族衣装に身をまとい出席する人だけ見ていると、それはどの宗教の儀式か分からなくなる。

見上げるとそこには十字架にかけられたイエス・キリストがいた。

町の中での宗教の「共存」を印象のみで書いたが、さらに観察し、現地の言葉を耳にすると美談とはならないようで、表面上はお互いを尊重しているものの、利害が絡むとそうはいかないらしい。

ほかの村や集落を車で通りながら、現地の人が話すには、「ここはイスラム教が多い地域だから道路が通りにくい」「彼はカーストの低い身分だからキリスト教徒しか相手にしない」などの宗教がらみの実態を聞く。

日本に伝わる情報はモディ首相のヒンズー至上主義に関する政策と反応に終始しているようだが、現実は他の宗教も絡み、各地域で宗教に根差した課題が顕在化している。

30年前の自分が見た路上にへばりつように座り、手を差し出して「物乞い」をする女性は今も都会にはいる。

「彼女は身分の低いカーストだから」と説明する現地のインド人の言葉に戸惑いながら、この違和感を整理して説明していきたい、と考えている。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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