北日本では記録的な大雪が続き、各地で混乱を招いている今年の冬の気象。しかし、なぜ温暖化が叫ばれて久しい昨今なのに日本各地で「大雪」が降るのでしょうか?今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では気象予報士として『ニュースステーション』のお天気キャスターを務めていた健康社会学者の河合薫さんが、「温暖化ゆえに大雪」である理由を解説しながら、今後の異常な気象を憂いています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:燃えて、冷えて、その先は?
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
燃えて、冷えて、その先は?
この冬は異常です。
12月に青森県の酸ケ湯の積雪が272センチに達し、今季全国で一番の積雪が観測されて以降、北日本を中心に大雪による被害が続き、三連休も各地で混乱が続きました。
温暖化なのになぜ大雪??と思う人もいるようですが、本メルマガで度々書いてるとおり、温暖化だからこその大雪です。
温暖化で地球の大気のバランスがくずれると大気の流れが変わり、豪雨と旱魃、高温と低温といった極端な現象が起こりやすくなってしまうのです。
例えば、日本では2024年の6月から8月の平均気温は、1898年の統計開始以降、23年と並んで最も高く、欧州でも6月の平均気温が1850~1900年の産業革命前以来で最も暑くなりました。
米国も同様に熱波に襲われ、8月は月別最高気温を更新し、この夏は1880年来の観測史上で最も暑かったと報告されています。
冬の状況も同じです。
1月5日、大雪と氷雨でヨーロッパ全土の空の便と交通が大幅に乱れ、英国では主要空港で欠航が相次ぎ、北部の主要道路が通行不能となりました。
12日には、米南部ケンタッキー州から首都ワシントンまでの広い範囲に降った雪と氷雨の影響で、数百件の交通事故と停電が発生。
また、ウエストバージニア州にも30センチの雪が降るなど、全米でほぼ4000便に欠航や遅延が生じています。
もちろん温暖化がなくても、異常気象は起こります。しかし、温暖化によって過去30年以上にわたって観測されなかった異常な気象が、数年おきに繰り替えされているのです。しかも、その異常さは予想をはるかに超えているため、社会的弱者ほど厳しい状況に追い込まれます。世界各地で異常気象による死者が増えているのです。
昨年末、世界気象機関(WMO)は、温室効果ガスの濃度が高まってるとし、「この先さらに熱が閉じ込められる」と指摘。25年以降も気温が上昇しやすい状態にあるとし、WMOのサウロ事務局長は「わずかな気温上昇でも気象はより極端になる。異常気象が増え、毎日のように目にするようになっている」と警告しました。
ご承知のとおり、15年のパリ協定で、気温上昇の抑制目標値「1.5度」以内に気温上昇を抑制することが合意されましたが、去年1年間の世界の平均気温は工業発達以前と比べて初めて1.6度も高くなったと、欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」が発表しています。
気温だけではありません。世界の海面の平均水位は上昇していて、大気中の総水分量も記録的なレベルに達しています。
一方、日本では気候変動や温暖化の問題が、ニュースで伝えられることがめっきり減りました。2月14日時点で、この冬の死者は少なくとも40人、重軽傷者は679人もいるにも関わらずです。
17日からの大雪でも事故が相次いでいますし、死者の約8割は65歳以上の高齢者です。
温暖化を加速させないためにできること。メルマガでは繰り返し書いてきましたが、一人一人が立ち止まって、考えてほしいです。
みなさんのご意見や体験など、お聞かせください。
この記事の著者・河合薫さんのメルマガ
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