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ポケットのSuicaを見れば思い出す。気仙沼線「東北地域本社色」とキハ40系、もう見られない風景

生きづらさを抱える人たちの支援に取り組むジャーナリストで宮城県出身の引地達也さんは、毎年3.11が近づくこの時期に代々木で「気仙沼線写真展」を開催しているそうです。引地さんは、自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の中で、あの東日本大震災で大きな被害を受けてしまった気仙沼線への思い、そして鉄道を通じて3.11の「風化防止」をしたいという新たな自身のテーマについて綴っています。

3.11を前に気仙沼線を走った緑色の東北カラーを思い出しながら

東日本大震災からまた新たな歳月を刻む3月11日は、壮絶な震災な記録とともに、それぞれの記憶がよみがえる時期でもある。

私が毎年この時期に東京・代々木のカフェヌックで開催している「気仙沼線写真展」は、気仙沼線の写真を題材にして趣向をこらしながら、あの日を思い出すきっかけを提供している。

昨年は能登半島地震とのつながりを意識し「港」をテーマに行った。

今年は、初めてとなる「車両」に焦点を当ててみた。

鉄路では復活しないという現実を受け止めながら、そこで走っていた車両に目を向けるとイメージするストーリーも変わってくる。

キハ40系との記号もまた、情感を持って語られそうである。

私自身は不案内な鉄道の世界から見える気仙沼線は、やはり愛らしい鉄道だったのだと気づかされる。

気仙沼線は、宮城県石巻市の前谷地駅と気仙沼市の気仙沼駅を結んでいたJR東日本の路線である。

東日本大震災の被害により、特に沿岸部に近い柳津駅と気仙沼駅間が破壊され、震災の翌年からBRTの運行となった(編集部註:現在、鉄道路線は宮城県石巻市の前谷地駅から同県登米市の柳津駅まで)。

橋梁右側の土手上にあった陸前小泉駅は、駅舎を越える高さの津波に襲われ流失した。ChiefHira, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

鉄道であった気仙沼線の車両は2両及び3両編成で走っていて、上がアイボリー、下がグリーンのツートンカラーが代表的な色合いで、これを東北地域本社色と呼ぶという。

当初は宮城県の小牛田運輸区所属の気動車からこの色が導入されたため、「小牛田色」と呼んでいた。

東北本線等でキハ40系気動車が運用されて以降、東北地域本社色と呼称された。

気仙沼駅にて気仙沼線のディーゼルカー。Yamaguchi Yoshiaki from Japan, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

全国的に言えば東北新幹線の色だ。

東北新幹線の開業当初は、東海道新幹線の青色の印象が強く、仙台に住んでいた小学生の私にも初めて見た車両への「緑!」の驚きは今でも鮮明だ。

それは、その後JR東日本のシンボルカラーともなって、私のポケットのSuicaの色彩にもつながっている。

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気仙沼線写真展では、気仙沼駅に停車する車両、海辺を走る車両、車両基地から出発する車両、森の中、ライトを照らし疾駆する車両、もう戻らない景色と車両の風景は、車両が語り出しそうな雰囲気もある。

キハ40系を改造したお座敷列車の「ふるさと」は、元来「漫遊」として数奇屋づくりの高床層畳敷きで作られたが、2000年から小牛田運輸区所属となり、2000年から「ふるさと」に変わった。

上部がグリーン、下部が黄土色のカラーは渋く、高級感さえ漂う。

あの色彩が気仙沼線を走っていたことを想像する。

そして、それらの車両たちは今もどこかで働き続けているかもしれない。

その場所は日本のどこなのか、それとも東南アジアのどこかの国か。

気仙沼線で活躍したキハ48、キハ40たちが「そこにはいない」ことによって、想像は膨らんでいく。

毎年行われる代々木での写真展は、JR東日本の本社がある場所のおひざ元でもある。

毎回鉄道ファンも来てもらいたいと思いながら、具体的なアプローチはしてこなかった。

鉄道を通じた風化防止は、私にとって新しいテーマ。

駅のホームで車両を撮影する人や、駅のアナウンスを録音する人、ホームに入ってきた車両に目を輝かせる小さな子ども。鉄道には、人を惹きつけてやまない魅力がある。

たんなる移動手段ではない、その人なりの付加価値を見出している鉄道ファンのみなさまに敬意を表しながら、彼彼女らに宿る車両への愛情と震災で失われてしまう、車両や風景を重ね合わせて、震災を感じる機会にできたらよいと思う。

東京・代々木のカフェヌックで3月10日(月)から22日(土)まで開催。

来場の際には、鉄道ファンのひとことも是非記載してください。

【関連】専用道路に感じる気仙沼線の名残は、鉄路を知っている人の郷愁か

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image by: Shutterstock.com

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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