ラグジュアリーブランドの売上が世界的に低迷。これからはカネだけの“豊かさ”より「社会的な価値」を創造すべき理由

 

ソーシャルインパクト・ポイントシステムの提案

その具体的なアプローチとして提案したいのが、「ソーシャルインパクト・ポイントシステム」の導入です。このシステムは、ラグジュアリーブランドの全商品に一定額の寄付金を組み込み、購入者は商品を購入するだけで自動的に社会貢献活動に参加できるというものです。

購入金額に応じて「ソーシャルインパクト・ポイント」が付与され、累積ポイント数によって顧客のステイタスが変動します。

このステイタスは、単なる購買履歴を示すのではなく、社会貢献への貢献度を可視化する指標となります。そして、このステイタスに応じて、以下のような特典を提供します。

  • 限定商品の購入権: 高いステイタスの顧客のみが購入できる、希少価値の高い限定商品を展開します。これらの商品は、ブランドの哲学や技術が凝縮され、社会的なメッセージを内包する特別なものとします。
  • パーソナライズされた体験: 高いステイタスの顧客には、ブランド主催の社会貢献イベントへの招待、専門家との交流会、パーソナルなコンサルテーションなど、特別な体験を提供します。
  • ブランドとの共同プロジェクトへの参加:最も高いステイタスの顧客には、ブランドが取り組む社会貢献プロジェクトの企画段階から参加する機会を提供し、共に社会変革を目指すパートナーシップを築きます。
  • 情報への優先アクセス:新商品情報やイベント情報、ブランドの社会貢献活動の進捗状況などを、ステイタスの高い顧客に優先的に提供します。

コミュニティと透明性の重要性

さらに、このシステムを成功させるためには、顧客同士の繋がりを強化するコミュニティ機能と、社会貢献活動の透明性を高める取り組みが不可欠です。

オンラインプラットフォームを通じて、ポイントやステイタスを可視化するだけでなく、同じ志を持つ顧客同士が交流し、情報交換やアイデア共有ができる場を提供します。また、集められた寄付金がどのように活用されているかを定期的に報告し、具体的な社会的なインパクトを顧客と共有することで、信頼感を醸成します。

ソーシャルなラグジュアリーの未来

このような「ソーシャルなラグジュアリー」の概念を取り入れることで、ラグジュアリーブランドは、単なる富裕層向けの消費財を提供する企業から、社会をより良くするための推進装置へと進化する可能性を秘めています。

顧客は、ブランドの商品を購入することで、自己表現や満足感を得るだけでなく、社会貢献という意義のある活動に参加し、自身の行動が新たなステータスとして可視化されることで、更なるエンゲージメントを高めるでしょう。

経済的な価値に加えて、社会的な価値を創造し、共有する。これこそが、これからのラグジュアリーブランドが目指すべき新たな方向性であり、「ソーシャルなラグジュアリー」という概念は、その可能性を大きく広げるものと言えるでしょう。

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■編集後記「締めの都々逸」

「金があっても 買えないものを 提供するのが ラグジュアリー」

 日本人に、ラグジュアリーブランドは必要ないと思います。所詮、西欧の文化だし、なくても困らない。成金が見栄を張る手段が減るかもしれませんが、大きな問題ではありません。

でも、西欧社会においては、ラグジュアリーブランドは文化であり、伝統産業です。なくすわけにはいきません。

ラグジュアリーブランドは階層社会を前提にしており、上流社会への憧れによって成立しています。しかし、上流の基準が変わってきました。

階層構造を残しながら、新しい時代に対応する。そんな、仕組みが求められるのではと予測しています。(坂口昌章)

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