糖質制限食を実践中の人に見られる症状の一つである「こむら返り」。これを起こす原因はどこにあり、なるべく起こさないようにして糖質制限食を続けるためにはどうしたら良いのでしょうか。メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者で糖尿病専門医の江部康二先生は、この事例について詳しく解説しながら、「こむら返り」が起こらないようにするための対策についても紹介しています。
糖質制限食とこむら返り
糖質制限食実践中に比較的よくある症状の一つに「こむら返り」があります。
良くあるといっても、10人に1人くらいでしょうか。
確かに野菜・海藻も摂らない極端な糖質制限食だと、カルシウムなどミネラル不足などで、こむらがえりを起こすことがあるようです。
一般にカルシウムやマグネシウムが不足すると、こむら返りを起こしやすいとされています。
カルシウムは乳製品・干しエビ・小魚・海藻・緑黄色野菜などに多く含まれています。
マグネシウムは、大豆製品・魚介類・海藻・ナッツ類に多く含まれています。
従って、カルシウムやマグネシウムは糖質制限食OK食品に多く含まれているので、こむら返りも通常は起こらないのだと思います
一方、糖質制限食に関係なく、スポーツの最中や後にこむら返りを起こすことはよくあります。
実際、私の所属するテニスクラブのメンバーでも、よくこむら返りを起こすタイプがおられます。
幸い私はスポーツ中やその後も起こしたことがありません。
激しいスポーツをして汗をかくと、汗とともに多量のミネラルが体の外に排出されてしまいます。
ですから、カルシウム・マグネシウムなどミネラルをちゃんと補給してやらないと、筋肉が痙攣したり足が攣ったりします。
糖質制限食の場合、相対的に高脂質・高タンパク・高繊維食となります。
自ら1型糖尿人でスーパー糖質制限食実践中のバーンスタイン医師によれば、野菜に多い食物繊維は食事中のカルシウムと結合してカルシウム吸収をさまたげ、タンパク質中のリン化合物もカルシウムとわずかに結合するそうです。
バーンスタイン医師は、「糖質制限食実践中で、チーズ・ヨーグルト・生クリームを摂らない人たち、特に閉経後の女性」には、カルシウム補充を奨めています。
つまり、糖質制限食実践中のほとんどの人でサプリは必要ないと思いますが、上記のバーンスタイン医師の条件に当てはまる人やこむら返りをよく起こす人、また結構スポーツをする人は、安価なカルシウム・マグネシウム剤、或いは安価なマルチビタミン剤を補充するのもよいと思います。
スポーツを全くしない人でも糖質制限食実践中にこむら返りを起こすことがあります。
この場合もカルシウム・マグネシウム剤、マルチビタミン剤でほとんど良くなります。
また、漢方薬の芍薬甘草湯(68番)もこむら返りに有効です。
2週間以上、芍薬甘草湯を2-3回/日、連続で内服すると、時に血中カリウムが低下することがあるので、連用している人は注意してください。
芍薬甘草湯や、カルシウム・マグネシウムで、こむら返りが改善しないときは、エルカルチンFFが有効です。
エルカルチンFFは、体内にカルニチンを補いカルニチンの欠乏状態を改善し、筋肉症状や精神症状などを改善する薬です。
とても良く効く内服薬ですが、とても高価なのが難点です。
エルカルチンFF(250mg)6錠/日を3回に分割経口投与が通常量です。
数日間規定量を内服して、その後は、ほとんどの場合は、眠前に2錠を1回投与で明け方のこむら返りが予防できますので節約可能です。
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