備蓄米が放出されたにも関わらず、高止まりが続く米価。かような状況に苦しむ日本の国民に救いの手を差し伸べてくれたのは、「世界一の親日国」でした。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、コメ不足にあえぐ日本に対する台湾の「恩返し」を伝えるニュースを紹介。さらに統治時代の日本の功績を正しく評価する姿勢こそが、台湾の発展の礎となっているとの見方を記しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【台湾】日本人がつくった蓬莱米で台湾が日本へ恩返し
日本人がつくった蓬莱米で台湾が日本へ恩返し。いま評価すべき八田技師の偉大な功績
● 八田與一技師の逝去から83年 台南で慰霊祭 頼総統が貢献たたえる/台湾
5月8日、台南市の烏山頭ダムで八田與一の逝去83年慰霊祭が行われました。慰霊祭には頼清徳総統も出席し、スピーチもしています。以下、報道を一部引用します。
八田は日本統治時代、南部のかんがい施設、嘉南大圳の設計や烏山頭ダムの建設に携わった。
頼総統は台南市長在任中の2011年から毎年慰霊祭に出席している。あいさつで、八田が建設した烏山頭ダムは台南を台湾の米どころにしただけでなく、商工業の発展を後押ししたとたたえ、半導体受託製造世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の先端半導体、回路線幅3ナノ(ナノは10億分の1)メートル品の製造プロセスにも烏山頭ダムの水が使われていると紹介。八田の貢献は農業、工業、商業に及び、台湾全体にプラスの貢献をしたと語った。
● 八田與一技師の逝去から83年 台南で慰霊祭 頼総統が貢献たたえる/台湾
頼総統は、「八田の貢献は農業、工業、商業に及び、台湾全体にプラスの貢献をした」と言いました。日本が台湾を統治していた時代のことにも関わらず、恨み事をひとつも言わず、八田の業績を賞賛したのです。
八田の功績は、台湾にとって非常に重要な役割を果たしたし、台湾が発展するために必要なことだったからこそ、感謝と賞賛の言葉を堂々とスピーチに盛り込んでいます。韓国や中国のように、日本による統治への恨み節を言うことが一切ありませんでした。これこそが国家の元首のあるべき姿ではないでしょうか。
国家発展に寄与したのであれば、誰であれ、どんな状況であれ、高く評価する。そして、その礎の上にさらなる発展を実現すべく努力する。元首がそのような思想でいれば、国民も自然と同じ思想になるのではないでしょうか。誰だって自国には発展してもらいたいですから。
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もうひとつ、台湾のジャポニカ米に限りなく近い米も、日本統治時代に日本人が台湾で品種改良に成功したものです。手掛けたのは、磯永吉と末永仁ら、日本から台湾に派遣された農学者たちで、台湾の在来米とジャポニカ米を交雑して品種改良を重ねた結果、「蓬莱米」という台湾の気候に強い品種の開発に成功しました。磯永吉は、終戦後も請われるがままに台湾に残り、蓬莱米の普及にあたったことから「蓬莱米の父」とも言われています。
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台湾の台東にある池上という米どころで生産されている「池上米」は、「蓬莱米」の子孫だとも言われています。池上米は鉄道弁当でも有名ですね。
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台湾発展の礎となった日本の功績を評価する姿勢
磯永吉については、以下のような逸話もあります。
ジャポニカ×インディカの交配は当時至難と思われていた。だが、ぼう大な数の交配を繰り返すことによって、この困難は克服され、「嘉南2号」などの優良品種が育成された。並行して行われた日本稲同士の組み合わせからは「台中65号」などの優良品種が育成されている。彼らが育成した品種は総計260にも達したという。
大正11年、総督府は蓬莱米の普及に踏み切った。蓬莱米は収量で2割、農家収益では30%のアップにつながる。蓬莱米普及前の大正10年の台湾米生産量は75万トンだったが、普及後の昭和13年には147万トンに達している。特筆すべきは単収が150キロから230キロに急増したことである。有名な緑の革命の40年前の出来事だが、磯らの活動こそもう一つの緑の革命といってよいだろう。
昭和20年に日本は敗戦。だが磯は長年の功労を評価され、請われて台湾に残留した。さらに10余年の台湾農業への貢献を終え、彼が帰国したのは昭和32年。帰国に際し、台湾の政府は毎年1,200キロの蓬莱米を終生彼に贈ることを約束し、深謝の意を表明した。食糧管理法の関係で米は換金されて磯に贈与されたらしいが、心温まる逸話である。
● 台湾政府から毎年感謝米1,200キロ~「蓬莱米」の父・磯永吉~
上記の資料によれば、磯永吉への米贈与は換金されたようですが、今、米不足で困っている日本に台湾政府は台湾米の輸出を、「直近5年の平均輸出量の約3倍に相当する」、1万トンに増加するということです。以下、報道を一部引用します。
農業部(農業省)の胡忠一(こちゅういち)政務次長は13日、今年の対日輸出量は1万トンを超える見通しだと明らかにした。これは直近5年の平均輸出量の約3倍に相当する。
同部農糧署が開いたコメ関連新商品の発表会に出席した際、報道陣の取材に応じた。
胡氏によれば、台湾は無関税の「ミニマムアクセス」の枠内で、2020年から24年まで年平均約3,500トンのコメを日本に輸出。今年は7,160トンの枠を獲得した。今年1月から4月までの対日輸出量はすでに5,136トンに達している。胡氏は、枠外のコメには1キログラム当たり341円の関税が課されるものの、それを含めても日本で売りさばけると話した。
胡氏は、台湾米は日本のコメと同様にやや粘り気があり、価格は日本米の半分であることから日本で競争力を持つと紹介。また、日本が台湾を統治した際にコメの栽培技術と品種を台湾に残し、台湾は後に暑さに強い品種をさらに多く開発したと言及し、日本市場で台湾米と競争できる国は他にないと自信を見せた。
● 日本のコメ不足で台湾米の輸出増加 年間1万トン超える見通し
台湾の米が日本の米の味に近いのは当然ですよね。そして、その味に自信を持って、胸を張って輸出する台湾の農業部の姿勢には、前出の頼総統と同じように、台湾への愛情と日本への感謝を感じます。日本に統治されたことへの恨み言は言わず、功績を評価する。この姿勢があるからこそ、今の台湾の発展があるのではないでしょうか。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2025年5月14日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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