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コメの高騰で「全品値上げ」はNG?ラーメン・とんかつ・カレー…業態別・値決めの最適解とは?

米の仕入れ価格が上昇する中、飲食店にとって値決めが業績を大きく左右する局面に差し掛かっています。今回、外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一さんの発行するメルマガ『飲食・デリバリー企業向け/業績アップメルマガ』では、業態別に交差原価率や実態ベースの原価分析から導き出された最適な価格戦略のリアルを紹介します。

米の仕入価格増。気をつけるべき業態別値決め

日々米のニュースが活況ですが、飲食業にとっても4月~6月には卸価格の改定もあって原価影響ありましたね。

卸からも新米出ても今の契約価格だと小売ほど大きな変化を出すのが難しいかも。。このような声も既に出ています。

ではそんな中で値決めをどうするか? です。商売は値決めです。

単品の原価はもちろん高騰ですが「全体に占める原価影響率」を正しく把握して戦略を決めるのが大切。

これを把握できていないと、やるべき価格改定を間違えて客数や客単価にマイナスの影響が出てしまいます。

今日はご支援先のケーススタディで色々と見ていこうと思います。

■年商20億円ラーメン企業のケース

ラーメンだからお米の影響はほぼ無いか。このようにスルーされていました。

しかし原価率を見ると約1%悪化!

そこで全体的な値上げを検討されていました。そこにちょっと待ってください!と。

交差原価率=売上構成比率×単品理論原価率

これで見てみると、「ランチのご飯セット」がお得すぎて、従来よりも売上構成比率が高く。

かつそこの単品理論原価率ももちろん悪化しているため、1%の原価悪化はほぼこれで説明がつく感じに。

その為やるべき事はシンプル。ラーメンというど真ん中のものを値上げせず、ご飯関連のメニューを適正価格にするという事。

お得感が強くので売上構成比率が高くなっただけで、従来の構成比率に戻ったり、それより下がっても業績インパクトは全くない状況。

・全品の値上げは不要

・交差原価率を見て、影響のある米だけ改善

このようなケースがありました。

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■年商15億円とんかつ企業のケース

とんかつと言えば、

・ご飯お代わり無料

・キャベツお代わり無料

・味噌汁お代わり無料

このようなサービスが多いですよね。

ただご飯の度重なる値上げでどんどんコストプッシュに。その為、お代わり有料を検討されていました。

ここもちょっと待ってください!と。

確かにお代わりは人気。男女問わず「お代わり率は80%」と非常に高い人気なのがわかりました。

80%もの人が支持されているのを急に有料にするのは気になるなと。

その上で更に気になったのが、お米の高騰における原価圧迫が想定よりも小さかったという事。

よく調べてみると理論原価にて、お代わりは2.5杯分で計上。

しかし実態は2.0杯程度。つまり、0.5杯分が想定より少なかったのです。

それで言えば敢えて有料化せずとも、今の所は理論原価率範囲内で収まる事に。

・お代わり有料を中止

・理論原価率を超える時に再検討

このようなケースもあります。

■年商5億円カレー企業のケース

カレーはお米高騰の影響が大きく、前年比比べて3%原価率が悪化。

原価率が30%から33%になった訳です。

もしこれを値上げで30%に戻すには、売価も同じく110%で上げる必要が出ます。

CoCo壱さんもベースのカレーで、

2022年6月:平均+5.9%(+33円)

2022年12月:平均+7.4%(+44円)

2024年8月:平均+10.5%(+43~76円)

ここまで値上げされています。その必要性を感じさせられますよね。

その為、こちらの企業も値上げを実施。但し困った事がありました。

それは、

従来の下限:990円

従来の中心:1,150円

こう設定したのですが今回の値上げで、

今後の下限:1,090円

今後の中心:1,250円

こうなってしまう訳です。これは正直めちゃくちゃ怖い値上げでした。

・下限商品は集客商品。

ここを一気に1,000円を越すと来店頻度の悪化が気になる点。

しかも集客商品なのでABC分析すると、出数1位はもう何ヶ月もずっとこれな訳です。

・中心価格も心理的予算帯が上に。

ランチでは1,200円は重要なポイントで、

1,200円以上:1,500円予算帯

1,199円以下:1,000円予算帯

こうなってきます。もちろん1,500円予算帯は狙っていきますが、今自分たちのポジションを冷静に考えるとキツイ。。

その為、

・レシピ自体を見直し

・短期的にお米を輸入米に切り替え

・下限990円をキープ

・中心価格1,180円に設定

上記にて来店頻度を守りつつ、内部対策で原価対応を行う事にしました。このようなケースもあります。

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■年商30億円の居酒屋のケース

お米の仕入価格高騰から、お米関連メニューの全体的な値上げを検討されていました。

しかし!これは上述のラーメン企業と同じ。

「〆とかご飯カテゴリー弱いですよね??」となり、交差原価率を分析してみました。

すると!やっぱりお米系の影響ほぼなし! もちろんちょびっとの影響はありますが、それよりもドリンク強化した方が値上げせず粗利改善。

その為、ご飯ものの値上げはストップ。一部のカテゴリーの値段が上がったな~とお客様が感じる方が嫌だねという判断に。

・交差原価率が低い(影響が低い)のでほったらかし

・それよりもドリンクを強化していく

・もし交差原価率が高くなればその時に検討

こうなりました。ちなみにこの戦略を1年続けてこられ、1年前よりも原価率は1.5%改善。

業態のセンターピンを把握するのは大切ですね。

■年商10億円の仕出し企業のケース

お米の値上げによって原価率は2.8%悪化。その為、値上げ自体は実施する事に。

包材を除いた食材の理論原価率は28%。これが30.8%になっていました。

その為、売価自体も110%にする必要がありました。このレンジで値上げはする事にしたのですが、気をつけるべき点がありました。

それはBtoBの領域です。

BtoCであれば法事法要や慶事が中心。

3,300円→3,600円

4,200円→4,600円

この辺りの値上げは許容頂けるとの判断。ただBtoBはそうもいきません。

1,500円→1,650円

1990円→2,200円

こうなると「領収書が切れる」金額の設定値を超えてしまうんですよね。

この領域は会議費や交際費や福利厚生費です。その為、どんだけ魅力があっても、損金にできなければ注文が入りません。

全品の値上げであれば、元々下だったメニューが今の領収書のちょうど金額になる事もあります。

しかし反面、下限系はーーー(『飲食・デリバリー企業向け/業績アップメルマガ』2025年6月9日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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関西学院大学卒業後、新卒で船井総研に入社。当時史上最年少にてフード部のマネージャー職へ。その後事業承継と起業を行い、 京都にて外食・中食業態を複数経営しつつ、多くの企業をサポート。事業規模は年商2,000万~1兆円企業まで幅広いです。外食/フードデリバリーが専門領域なので、それについての情報を書いています。

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