いま、世界各国で子供のSNS・スマホ利用を規制する動きが加速しています。うつ病や不安症自殺のリスクが高まる他、脳の発達への影響が指摘されており深刻な社会問題になっています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、日本の対応の遅れを指摘しながら、大人たちも「情報過多によるストレス」が心身に大きな影響を及ぼしている現状を紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:脳、疲れてませんか?
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
脳、疲れてませんか?世界で子供のSNS利用を規制する動き
子供のSNS利用を規制する動きが、世界で進んでいます。
アメリカ・フロリダ州では、14歳未満の子どものSNSアカウント保有を禁止する法律が2025年1月1日から施行され、ユタ州では 午後10時半から午前6時半まで、未成年者のアカウントアクセスを禁止するほか、保護者が1日当たりの利用時間制限を設定できるような選択肢を企業に義務付けました。全米50州のうち少なくとも35州がSNSの規制の導入や検討に乗り出しています。
オーストラリアでは24年11月に16歳未満のSNS利用を禁止する世界初の法案が可決され、プラットフォーム側が16歳未満のサービス利用を制限する「合理的な措置」を取るよう義務付け、違反時には罰金が課されます。
フランスは15歳未満の子供がSNSを利用する際に、保護者の同意を必須とする法律が制定され、学校内でのスマートフォンの使用を全面的に禁止する法律も18年に定められています。
オランダは小中学校でのスマートフォンの非教育的使用を禁止する法律が施行。ノルウェー、イギリスでは15歳・16歳未満のSNS利用制限を検討中です。
また、ブラジルでも学校でのスマートフォンの使用を禁止する法律が成立し一部の例外を除き、休み時間を含めて全面的に学校でスマホが使えなくなるそうです。
日本では全くゼロではないですが、かなり慎重です。
香川県が20年に、1日のゲームやスマホの利用時間を制限することを推奨する「ネット・ゲーム依存症対策条例」を制定したのは大きな話題を呼びました。
しかし、「スマホを利用する自由を侵害している」などとして住民から訴訟を起こされる事態に発展しました。22年8月、高松地裁が原告の訴えを退ける判決を言い渡し、確定しましたが、その効果については十分な検証が行われていないとする声があとを断ちません。
そもそも各国が規制に乗り出した背景には、子どものSNS利用が、うつ病や不安症自殺のリスクを高める可能性を示す調査結果が多数示されたことが背景にあります。
子供がスマホの画面を見ている最中、前頭前野への血流が下がり、脳の発達を妨げるとする指摘や、使用時間が増えると学習能力や思考力に悪影響を与えるとする研究結果もあるほどです。
ビル・ゲイツやジョブスも自分の子供には、iPadやパソコン、SNSなどのテクノロジーに触れる機会を厳格に制限していたので、日本でも国としてどうするのか?
早急に議論を進めてほしいものです。
一方で、あまり問題視されていないのですが、大人もスマホやSNS利用が増えると心身に悪影響を及ぼします。
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