無料版と比してあらゆる面で段違いに優れているChatGPT Plus。そんな有料バージョンが、アラブ首長国連邦(UAE)の全国民に無料提供されるというニュースが5月の下旬に世界を駆け巡りました。しかしながら、フューチャリスト(未来予測士)で16万人超のフォロワーを誇る公式YouTube「2030年の未来予測チャンネル」を運営する友村晋さんによれば、「UAEのあらゆる公共施設から無料アクセスが可能となった」というのが真相とのこと。とは言えなぜOpenAIは月額20ドルの有料版を、UAEに無償提供するに至ったのでしょうか。その背景を友村さんが、7月に新創刊したメールマガジン『友村晋の「読むだけで年収が変わる!?」週刊メルマガ』の最新号で詳しく解説。さらにUAEに訪れるであろうプラスの変化を予想しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:アラブ首長国連邦の全国民にチャットGPT有料版を無料提供!?
UAEのあらゆる公共施設でChatGPT有料版を無料で提供。OpenAIと米国の狙いは何か
2か月前のニュースなので知っている人もいると思いますが今日はこのニュースを深堀りしたいと思います。
UAE(アラブ首長国連邦)で国民全員がチャットGPTプラス(月額20ドル)が無料で使えるようになる!
というニュースが報道されました。
このニュースが報道されたときはオープンAIの公式サイトのアナウンス(「Introducing Stargate UAE」)に、
Under the partnership, the UAE will become the first country in the world to enable ChatGPT nationwide-giving people across the country the ability to access OpenAI’s technology.
と書いてあるのでこの部分が拡大解釈されて、
UAEの全ての国民がチャットGPTの有料プランを無料で使える
と報道されたみたいです。
実際に日本でも、SNSやブログで「UAEは国民全員が無料だってさ!」という記事を散見します。
しかし、実際は、オープンAIもUAE政府も公式には全国民に!とは言っていません。
UAE国内の、学校、大学、病院、そのほかのあらゆる公共施設で有料版が無料で使える
というのが本当のようです。
ただし今後思い切って全国民に開放する日がくるかもしれません。それぐらいの勢いを感じるニュースです。
今日は、なぜUAEのあらゆる公共施設でチャットGPTの有料版が使えるようにするのか、アメリカ(オープンAI)とUAE、双方のメリットを考えてみました。
そもそもUAEとはどのような国なのか
United Arab Emiratesの略です。Emirate=首長国という意味です。
※ 首長とはイスラム圏の君主のこと。
日本語ではアラブ首長国連邦と訳され、7つの首長国から構成されています。
- アブダビ(Abu Dhabi)※首都
- ドバイ(Dubai)※経済・観光の中心
- シャールジャ(Sharjah)
- アジュマーン(Ajman)
- ウム・アル=カイワイン(Umm Al-Quwain)
- ラアス・アル=ハイマ(Ras Al Khaimah)
- フジャイラ(Fujairah)
場所はこの辺り(アラブ首長国連邦:Googleマップ)です。
ChatGPTの有料版と無料版の大きすぎる違い
詳しくはコチラ(「ChatGPT無料版と有料版の違い!8つの観点でわかりやすく解説 https://generative-ai.sejuku.net/blog/374/ 」)をみてもらうとして、ざっくり言うと、
- 回答の精度
- 回答の速度
が違います。
この2つを頭に入れて以下を読み進めてください。
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まさにウィンウィン。アメリカとUEA両国のメリット
中国に競り勝つためUAEと組む。アメリカ(オープンAIを含む)のメリット1
一番のメリットはなんといっても地政学的なメリットです。
AI覇権争いでもアメリカは中国と競い合っているので、今のうちに中東で資金力も影響力もあるUAEとパートナーシップを組みたいのでしょう。
AIインフラでUAEと提携すると、サイバーセキュリティーの観点から、軍事面や安全保障面でも提携していくのが自然なシナリオになることをアメリカ政府はよく分かっているのです。
UAE側の「依存度」を高める。アメリカ(オープンAIを含む)のメリット2
中国のディープシーク(チャットGPTと同じような生成AI)ではなく、チャットGPTをインフラにしておくことで、チャットGPTとAPI連携できるアメリカ発のビジネスを展開しやすくなります。
金融でも医療でもバイオでもあらゆるアメリカ発のソフトウェア企業がUAE国内で活躍できます。
そうするとますますチャットGPT無しには、UAE国内でビジネスが成立しにくくなります。依存度が増すという意味です。
UAEは米国内のインフラ整備に巨額投資を約束。アメリカ(オープンAIを含む)のメリット3
UAE側は首都のアブダビにStargateスーパーコンピューティング施設(最大1GW)を建設するだけでなく、アメリカ国内のAIインフラ整備にも同額規模の投資を約束しています。
石油で儲かってる国はすごいな~~~!
すごい太っ腹!
先行投資をしておきたいという思惑。UAEのメリット
実はUAEは世界で最初に「AI大臣」なるものを任命した国(2017年)で、AIに対して先進的な考えをもった国です。
これは、やがて訪れる「化石燃料をもつ国が覇権を握る時代の終焉」を見据えて、AIによる先行投資をしておきたい思惑が一致した形だと思います。
これからUAEにどのような変化が起こるのか
ここからが今日一番言いたかったことです。このコーナーの後の「気になった日本のニュース」というコーナーとも関係がありますので併せて読んでください。
有料版と無料版の違いは、
- 回答の精度
- 回答の速度
と言いましたがこの2つは本当に大きな差を生みます。
回答の精度も大事ですが、回答の速度もとても大事です。無料版はときどきフリーズしたり反応しなくなったりします。僕のようなヘビーユーザーはとてもイライラして使えたもんじゃありません。
たったの月20ドル(3,000円ほど)で、東大卒の優秀なバーチャル秘書を雇える時代がきました。
これを有効活用しない手はないと思います。
これからUAE国内ではどんどん国民レベルでAI活用の知識がつき、業務が効率化され、労働生産性が上がり、新しいビジネスが生まれ、そしてなによりそこに優秀な人材が世界中から集まり、国が発展していくでしょう。
そしてその格差は、どんどん世界中で広がっていくでしょう。
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ChatGPT未使用者が視聴すべき「健全な危機感」を煽る動画
UAEの初代AI大臣オマール氏の意気込みは相当です。
Whoever leads the AI race will lead the future.
AIを制する者が世界を制す。
また、グーテンベルクの印刷技術導入で中東が立ち後れた歴史を引き合いにして、
Today we are still paying the price, UAE will not make the same mistake again.
今でもその代償を払っている、UAEは同じ間違いを二度と繰り返さない。
と発言しています。
まさに愚者は経験に学ぶ、賢者は歴史に学ぶですね!
特に教育の分野でも生成AIを積極的に活用すると名言しているので、UAEの子供たちがどんどん生成AIリテラシーが高まります。
子供たちは、国の未来そのものです。
日本も早く旧体質の教育システムを改め、フルモデルチェンジしていかなくてはいけないと思います。
このメルマガの読者の中で、まだチャットGPTを使っていない人がいたら、ぜひ僕のこの動画をご覧ください。
● 生成AI【ChatGPT-4o】でなくなる仕事・職業の新時代、AI規制でビジネス活用【ホリエモン×松尾豊も激白の勝ち筋とは?】仕事を奪われない方法を初心者向けに解説
健全な危機感を煽っているつもりです。
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