豪州内で上がる「中国接近に強い警戒」の声。それでも豪首相が習近平の存在感を重視せざるを得ない理由

 

貿易統計のデータも証明。中国が着々と進める「脱米」の動き

タイミングよく中国は今年上半期のGDP成長率を発表。メディアは5.3%という数字を誇らしげに報じた。

今年の第2四半期はまさにトランプ政権が相互関税を発表するなかで幕を開け、世界的にも強い逆風が吹いた。

そうしたなかで達成された5.3%という数字だけに、中国としても「容易なことではない」(国家統計局盛来運副局長)との結論に至ったようだ。

興味深かったのは、GDP成長率と同時に発表された貿易統計だ。米ブルームバーグは、輸出が力強く経済をけん引したと報じたが、ここに見られた傾向は、やはり相変わらずの「脱米」の動きだった。

税関総署のデータによると中国の上半期のモノの貿易は、21.79兆元(約435兆8,000億円、1元=20円で計算)で対前年比2.9%の増加だった。

輸出入を比較すると輸入が対前年比でマイナス2.7%と落ち込んだのに対し、輸出は7.2%増と大きく伸びた。

対米貿易が大きく落ち込むなかで、輸出が大きく伸びたという現象こそ、前述した「脱米」の正体だ。

詳しく見てゆこう。

まず対米輸出は、相互関税の影響をもろに受けてマイナス9.3%と落ち込んだ。しかしアメリカ以外の国や地域との貿易がそれを上回って伸びたのである。

具体的には一帯一路諸国との貿易額は11.29兆元で4.7%の増加。貿易全体の51.8%を占めるまでに成長した。また対ASEANは3.67兆元で、こちらも9.6%増で拡大を続けた。2つの数字を全体の伸びであるプラス2.9%と比べれば、その大きさは一目瞭然だ。

ちなみに対EU、韓国、日本向けの輸出も拡大傾向を維持した。

オーストラリア国内ではアルバニージーの中国接近に強い警戒感が示されたという。

オーストリアABCは「中国がオーストリアの周辺で行う軍事演習にもっと目を向けるべきとの声がある」と報じた。

しかし国民生活をあずかる首相であれば、中国の存在感を重視せざるを得ないのも無理からぬことだろう。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2025年7月20日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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