南海トラフ地震と首都直下型地震。どちらも、いつ発生してもおかしくない段階に入ってきています。メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』の著者で生物学者、CX系「ホンマでっか!?TV」でおなじみの池田清彦教授は今回、私たちが大地震にどう備えるべきかを具体的かつ現実的に解説しています。
『日本壊滅 巨大地震(南海トラフ・首都直下)被害を最小限に抑える』を出版する
『日本壊滅 巨大地震(南海トラフ・首都直下)被害を最小限に抑える』(本の雑誌社)と題する本を出版した。南海トラフ地震は2030年代に起きる確率が高いと想定されており、首都直下地震はいつ起きるかは予測できないが、30年以内に起きることは間違いないと言われている。もしかしたら、今日明日にも起きるかもしれない。

『日本壊滅: 巨大地震(南海トラフ・首都直下)被害を最小限に抑える』(本の雑誌社)
地震が起きた時最も重要なことは、命を落とさないことだ。しかし命が助かっても、その後の暮らしが悲惨になって、例えば、食べ物がなくなってしまえば飢餓に直面することになる。南海トラフ地震の最大マグニチュードは9.1、想定死者数は2025年の3月31日の内閣府の最新情報では29万8000人、被災者は日本の人口の半分以上の6800万人である。一方、首都直下地震はマグニチュード7.0、想定死者数は最大2万3000人、帰宅困難者は450万人と推定されている。
とりあえず、まず重要なのは死を免れることだ。南海トラフ地震は海溝型の地震で、同じく海溝型の地震であった東日本大震災の死者の9割は津波による溺死であったことに鑑みれば、地震直後に津波からいち早く逃げるにはどうすればよいかを考えるのが、喫緊の課題となる。首都直下地震で問題となるのは津波よりも火災で、関東大震災の10万5000人の死亡者の9割は火災で亡くなっているので、火災から免れる方途を考えるのが最も重要である。
海溝型の地震で、津波警報が出たら、まず高台に逃げるのが必須のセオリーで、自宅や職場が海の傍の低地にある場合は、普段から避難経路を確認しておくことと、避難場所まで、どのくらいの時間で行けるかを実地に計測しておくことが重要である。巨大な防波堤を築いている海岸もあるが、すぐ裏手に標高40m以上の丘があれば、防波堤を築くよりも、この丘に登る通路を整備しておいて、地域住民に周知しておく方が、はるかに賢いやり方だと思う。その際に、みんなで一緒に一人も残さずに避難しようというやり方はNGである。
すぐそばに、乳幼児や自力では速く歩けない人がいれば、屈強な若者がこれらの人を背負って避難することはありだが、すぐそばにいない家族や知人を探して、一緒に非難しようとするのはダメである。東日本大震災で多大の犠牲を出した石巻市の大川小学校では、児童を校庭に集めて点呼を取って、みんなで一緒に、川の袂にある僅か5mほどの高さの場所に誘導して津波にのみ込まれた。何度も津波に襲われた三陸地方では「津波てんでんこ」という言葉があるように、津波が来たら、てんでんばらばらに逃げろと言い伝えられており、薄情なようだけれども、これが自分の命が助かる最も確かな方法である。
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