自閉症をどう“開く”?シンポジウムで見えた主体性と神経多様性の未来

 

赤木さんは、同著を読んだ印象を語る中で、ASDに関するバロン=コーエンが自閉症を独自に認知障害として定義した、いわゆる「心の理論」(1985年)に出会い、当時大学院生だった自分が「ワクワクした」と振り返った。

しかし、自閉症の「欠損」「欠落」に学術的な「お墨付き」を与えるとし、2000年頃から当事者が自らの体験を語るようになり、研究の修正が迫られるようになったことを紹介し、発達心理学の可能性を問題提起した。

さらに教員を養成している立場から、公立中学校の古文の授業実践を紹介した。

この授業は、古文暗記の時間を20分間と設定し「どこで暗記してもよい」とし、教室を歩き回っても、教室の外に出てもよいこととした方法。

これを「合法的たち歩き」と呼び、すべての子どもの学び方に合わせて授業をつくることの実例を示した。

大内さんの実践からの報告は「気づきあいを通して対話的調整を生む、自己に取り込む配慮」と題し、問題行動を起こす子どもが何度注意をされたのにも行動が治らなかったところ、自分の問題行動により弟が怒られたことで、自分の行動を見直すことになった事例を挙げて説明した。

「自己決定論」「ナラティブ・アプローチ」「道徳性発達理論」などの既存の理論で語れることを抑えつつ、それらを越える支援の在り方として「共存対話」を提示した。

それは「気づきあいによる対話的調整」へとつながる考えだ。

支援する、という行動の文脈でいえば「支援者が一方的に『配慮する』のではなく、気づきあいを通して、当事者の世界に自らを『取り込む』こと。

そのとき初めて、支援は『ともに生きるための営み』へと変わる」(大内さん)としている。

みんなの大学校の教授であり、また支援の現場で対話を繰り返す大内さんの言説は私の現場での実感ともつながる。

みんなの大学校、ケアメディアラボの実践はまだまだ続く。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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