劇場版が大人気となっている『鬼滅の刃』。詐欺、悪質商法のジャーナリストである多田文明さんは、この作品を読んでいて、現実での特殊詐欺集団やカルト団体の手口とあまりにも似通っている点を見つけたのだとか。多田さんは自身のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で、その詳細を語っています。
「鬼滅の刃」に出てくる「憎珀天」が、特殊詐欺グループにみえてしまう理由
「鬼滅の刃」(きめつのやいば)の漫画を通じて、鬼側の視点から、旧統一教会やオウム真理教の問題についての記事を書きました。
鬼滅の刃 鬼の側からの視点 旧統一教会、オウム真理教の問題を読み解くための示唆がつまっている
鬼の組織は鬼舞辻無惨を絶対的な存在として、上意下達の世界になっており、カルト的思想団体の組織体制とよく似ているという話をしましたが、記事では書ききれなかったことを話しておきます。
「刀鍛冶編」で、竈門炭治郎らは、十二鬼月の4番目の地位にいる「半天狗」と戦います。そこに出てくる憎珀天(ぞうはくてん)は、詐欺の専門家の視点からみると、よくできたキャラクターに思えるのです。
半天狗は「空喜(うろぎ)、積怒(せきど)、哀絶(あいぜつ)、可楽(からく)」という、喜怒哀楽を表した、それぞれの鬼に分かれて、剣士(鬼滅隊)たちと戦います。しかし不利な状況となるとみるや、突然一つとなり、「憎珀天」(ぞうはくてん)の姿にかわります。
役割分担して戦っていた者たちが一つの集合体になるのを見て、「指示役」「かけ子」、お金をだまし取る「受け子」といった、本来の特殊詐欺グループの姿を現したように思いました。
実は、喜怒哀楽の鬼の姿に分かれて戦う姿も、詐欺行為そのものにも思えます。
特殊詐欺グループは、ターゲットにした人たちの心を喜怒哀楽の感情を持って揺さぶります。
「オレだけど」と、息子や孫を装って高齢者の家に電話をかけて、「事故に遭った」や「会社のお金を使い込んだ」という状況で相手の心を動揺させます。その上でお金を出させます。そして、息子、孫役は「ありがとう」と感謝の言葉を述べて、高齢者を安心させます。まさに相手の喜怒哀楽の感情を揺さぶりながら、だましていくのです。
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「鬼滅の刃」の無限城が、あの宮殿にみえてしまう人もいるのでは?
喜怒哀楽を使って、相手の心を揺さぶる手法は霊感商法でも使われます。
「トーカー(霊能師)」と呼ばれる人物は、その上の指示役である「タワー長」からの命令を受けて、連れ込んだ人の悩みを聞き出します。それに同情を寄せながら「不幸の原因は、先祖の悪因縁だ」といい、「その悩みを解決したいですか?」と尋ねて、相手が「はい」と答えると、解決方法として印鑑や壺を売りつけます。
「救いの方法がある」と聞いて、それを聞いた人は「これまでの苦しい思いから逃れられるかもしれない」と思いから、涙を浮かべる人もいます。旧統一教会は、喜怒哀楽の感情を巧みに揺さぶりながら、ジェットコースターにのせるようにして、お金をだましとっていきました。
今、「鬼滅の刃」の無限城編が公開されています。ここは鬼たちの根城になっているわけですが、この城を見ながら、最近話題になった総工費500億円ともいわれる「天苑宮」に重なってみえてしまうのは、私だけでしょうか。
鬼たちたちは多くの人たちの血を食らいながら増殖しますが、その結果として存在するのが無限城といえます。もちろん、旧統一教会の信者らは人を殺すことはしないかもしれませんが、霊感商法などで、幸せに暮らしていた人から奪ったお金は、彼らが血と汗を流して得た代価です。それに、多くの日本の信者が身を削って出した献金もあるはずです。
多くの人々の苦しさや悲しみを味わせながら、それをもとに存在した城という意味では、同じようなものだと思うのです。
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