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アメリカ・ファースト政策が米国を殺す。トランプ政権の致命的な大誤算

トランプ大統領の第二次政権が本格始動しましたが、その政策は米国の国際的リーダーシップと経済的安定に深刻な影響を及ぼす恐れがあるとメルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは懸念しています。今回の記事では、米中両国のリーダーシップを比較し、経済・地政学・社会の三つの視点から、トランプ政権の危険性を批判的に検証しています。

トランプ政策への警鐘:米国と中国の比較を通じた批判的論説

2025年、ドナルド・トランプの第2次政権が始動し、その「アメリカ・ファースト」政策は世界経済と地政学に大きな波紋を広げている。

習近平の中国が香港の自由を抑圧し、国際的信頼を損なったように、トランプの保護主義と一国主義は、米国の国際的地位と経済的安定に深刻なリスクをもたらす可能性がある。

両者のリーダーシップには、不確実性、高圧的・独善的姿勢、協調性の欠如、そして国際的信頼性の低下という共通点が見られる。

本論説では、米国と中国の政策を比較しつつ、トランプ政権の政策に対する批判的視点を専門的視点から展開する。以下の議論は、経済、地政学、社会的影響の3つの軸を中心に、トランプ政策が米国および世界に及ぼす潜在的危険性を検証する。

1. 経済政策:保護主義の落とし穴

1.1 トランプの関税政策とその影響

トランプ政権は、対中60%、カナダ・メキシコ25%、その他10%の関税を柱とする保護主義を推進している。

これにより、2025年上半期の関税収入は1,270億ドルに達したが、消費者物価は4.2%上昇し、インフレ圧力が高まっている(ピーターソン国際経済研究所)。

最悪のシナリオでは、2026年までにインフレ率が7.4%上昇、2028年までにGDPが9.7%低下する可能性が指摘されている。

この関税政策は、国内製造業の保護と雇用創出を目指すが、輸入コストの上昇は消費者に転嫁され、特に低所得層に打撃を与える。さらに、グローバルサプライチェーンの混乱は、米国企業の競争力を損なうリスクを孕む。

例えば、日本の自動車産業は、関税によるコスト増で、米国市場での価格競争力が低下し、ASEANへの生産シフトを加速させている。

1.2 習近平の経済統制との比較

習近平の中国は、香港での国家安全維持法(2020年)やゼロコロナ政策の急変(2022年末)など、経済的不確実性を高める統制を強化してきた。

これにより、香港からシンガポールや東京への企業移転が加速し、2023年までに約3,000社が撤退した。

トランプの関税政策も同様に、予測不可能な経済環境を生み出し、多国籍企業の米国離れを誘発している。フォーチュン500企業の12%が2025年上半期にメキシコやASEANへの投資拡大を表明している点は、香港の状況と類似する。

しかし、米国の経済規模(2025年GDP約28兆ドル)とドル覇権により、完全な「敬遠」は難しい。それでも、関税による短期的な財政補填が、長期的な経済成長の阻害要因となるリスクは無視できない。

1.3 批判:経済的不確実性の増大

トランプの関税政策は、短期的な政治的勝利(支持基盤の強化)を優先し、長期的な経済安定を犠牲にしている。

習近平の香港統制が国際金融ハブの地位を損なったように、トランプの保護主義は、米国のビジネス中心地としての魅力を低下させる。

経済学者ジョン・メアシャイマーの「攻撃的現実主義」に基づけば、覇権国は新興勢力の挑戦を抑えるべきだが、トランプの政策は、むしろ中国の相対的地位を高める結果を招きかねない。

中国はASEANやBRICSを通じた経済的影響力拡大を進め、2024年の貿易黒字は1兆ドルに達した。

トランプの関税は、米国企業のコスト増と国際的孤立を招き、米国の経済覇権を自ら弱める逆効果を生む可能性がある。

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2. 地政学:孤立主義と国際的信頼の喪失

2.1 トランプの「アメリカ・ファースト」と同盟国との亀裂

トランプの外交政策は、WTOやパリ協定からの離脱、在韓米軍撤退の示唆、NATOへの圧力(防衛費5%要求)など、国際協調を後退させる「一国主義」を特徴とする。

2025年8月時点で、カナダ(81%)、ドイツ(72%)、日本(61%)の世論調査でトランプへの信頼低下が顕著である(YouGov)。

これにより、同盟国は米国依存からの脱却を模索し、日本はASEANとの経済連携を強化、EUは中国との貿易関係を再評価している。

トランプの「取引型外交」(例:パナマ運河やグリーンランド問題での強硬姿勢)は、短期的な譲歩を引き出すかもしれないが、長期的な同盟の信頼を損なうだろう。

2.2 習近平の地政学戦略との比較

習近平は、一帯一路構想やBRICS、SCOを通じて、多極化世界の構築を推進し、米国の覇権に挑戦している。

香港での強権統治は、西側諸国からの制裁を招き、国際的孤立を深めたが、中国はグローバルサウスでの影響力を拡大し、2024年にはサウジ・イラン和平仲介に成功した。

トランプの孤立主義は、皮肉にも習近平の多極化戦略を後押しする。トランプが同盟国を遠ざける一方、中国はロシアや北朝鮮との連携を強化し、ウクライナ戦争での間接的支援を通じて、欧州の不安定化を助長している。

トランプの政策は、米国の地政学的リーダーシップを弱め、中国の「中華民族の偉大なる復興」を間接的に支援する結果を招いている。

2.3 批判:地政学的リーダーシップの放棄

トランプの孤立主義は、米国の伝統的リーダーシップを放棄し、中国に地政学的空白を埋める機会を与えている。

習近平の統制が香港の自治を奪ったように、トランプの高圧的姿勢は同盟国との信頼を損ない、米国のソフトパワーを弱体化させる。

スティーブ・ツァン(SOAS大学)は、「トランプの『アメリカ・ファースト』は、習近平の『中国の夢』を大きく前進させた」と指摘する。

台湾問題においても、トランプの取引型アプローチ(例:台湾への軍事支援削減の示唆)は、中国の軍事的圧力を助長し、アジア太平洋の不安定化を招くリスクがある。

米国の地政学的後退は、民主主義国家の結束を弱め、長期的に中国の影響力拡大を許す危険性を孕む。

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3. 社会的影響:分断と強権的リーダーシップ

3.1 トランプの国内分断と高圧的姿勢

トランプの「Drain the Swamp」やメディア・司法への攻撃的発言は、国内の分断を深めている。

2025年、反トランプデモが全米で散発し、移民追放政策(例:1000万人の強制送還計画)は、人権団体やリベラル層からの反発を招いている。

トランプの強権的リーダーシップは、支持基盤(中西部、保守派)には「強い指導力」と映るが、反対派には独善的で抑圧的と見なされる。

この分断は、米国の社会的結束を弱め、政策の持続性を損なう。

3.2 習近平の統制との比較

習近平の香港政策は、民主派の逮捕やメディア統制を通じて、社会的自由を抑圧し、市民の不満を高めた。2020年以降、香港の外国人居住者は20%減少し、若者の海外移住が増加した。

トランプの政策も、移民やマイノリティへの強硬姿勢により、米国の多様性と包摂性を損なうリスクがある。

両者とも、反対意見を抑圧し、自己の権力基盤を優先する点で類似しているが、米国の民主的制度(議会、司法、州政府)は、トランプの統制を一定程度抑制する。対照的に、中国の中央集権体制は、習近平の独裁的統治を強化する。

3.3 批判:民主的価値の侵食

トランプの強権的姿勢は、米国の民主的価値を侵食し、習近平の権威主義に近づける危険性がある。

トランプのメディア批判や、司法への介入は、民主的チェック・アンド・バランスを弱め、長期的に制度の信頼性を損なう。

習近平の香港統制が国際社会から「自由の死」と批判されたように、トランプの政策は、米国の「自由の象徴」としての地位を危うくする。

特に、移民政策や言論への圧力は、米国の社会的包摂性とイノベーション力を損ない、国際的魅力の低下を加速させるだろう。

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4. トランプ政策への警鐘

トランプの政策は、短期的な政治的勝利と支持基盤の強化を優先するが、以下の理由から米国と世界に深刻なリスクをもたらす:

経済的混乱:

関税によるインフレとサプライチェーン混乱は、消費者と企業の負担を増大させ、米国の経済覇権を自ら弱める。

習近平の香港統制が金融ハブの地位を損なったように、トランプの保護主義は、米国のビジネス中心地としての魅力を低下させる。

地政学的孤立:

同盟国との関係悪化と中国の影響力拡大は、米国のリーダーシップを弱め、習近平の多極化戦略を助長する。台湾やウクライナ問題での不確実性は、地域の不安定化を招く。

社会的分断:

高圧的リーダーシップは、国内の結束を損ない、民主的価値を侵食する。

米国の社会的多様性とイノベーション力は、長期的な競争力の基盤だが、トランプの政策はこれを危うくする。

5. 結論

トランプと習近平の政策は、不確実性、高圧的姿勢、協調性の欠如を通じて、国際的信頼を損なう共通点を持つ。

習近平の香港統制が自由と自治を奪い、国際金融ハブとしての地位を弱めたように、トランプの保護主義と孤立主義は、米国の経済的・地政学的リーダーシップを損なうリスクを孕む。

米国の民主的制度と経済規模は、香港のような急激な崩壊を防ぐが、長期的な影響は深刻である。

日本を含む同盟国は、トランプの不確実性に備え、経済的・地政学的多元化を進める必要がある。

トランプ政権の政策は、短期的な「勝利」を追求するあまり、米国の長期的な利益と価値を犠牲にする危険性がある。

今後、議会や国際社会のチェック機能が、トランプの衝動的決定を抑制できるかが、米国の未来を左右するだろう。

■編集後記「締めの都々逸」

「弱い犬ほど キャンキャン吠える 静かに見つめる 強い犬」

関税を言い出してからのトランプを見ていると、わざと米国経済を弱体化させているとしか思えない。「あの国から関税を取ってやる」と言ってますけど、関税を払うのは米国の輸入業者であり、最終的に負担するのは米国の消費者ですよね。つまり、悪代官のように自国の国民から重税を徴収しているだけです。

それで米国が豊かになると言われてもねー、と思います。

カネも人もビジネスも、米国、中国から逃げています。日本は、おもてなしの心で頑張りましょう。(坂口昌章)

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image by: miss.cabul / Shutterstock.com

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