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元国税調査官が検証。外国人労働者が「日本人の賃金を下げている」は本当か?データから見えた“驚きの実態”

巷間で声高に叫ばれている「外国人労働者の増加が日本人の賃金を押し下げている」なる言説。果たしてそれは正しいと言えるのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、この主張の真偽を「外国人労働者数」や「日本人の平均賃金の推移」等のデータをもとに検証。その上で、現在の日本社会が抱える問題点を浮き彫りにしています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:「外国人が増えれば日本人の給料が下がる」は本当か?

「外国人が増えれば日本人の給料が下がる」は本当か?各種データを検証して判明した事実

昨今、「外国人問題」がクローズアップされることが多くなっています。

参政党などが「不用意に外国人を入れるな」「外国人を優遇する政策をやめろ」というようなスローガンを掲げて、先の参院選で大躍進し、大きな議論を巻き起こしました。

不法滞在の外国人が犯罪を起こすケースも多く、埼玉県の川口市ではクルド人がたびたび集団で騒ぎを起こすなど、住民に不安を与えています。

また外国人労働者が増えることで、「日本人の職が奪われる」「日本人の賃金が上がらない」とする主張も多く、その一方で「外国人は日本人のやりたがらない仕事をやってくれる」「日本人の賃金が上がらないのは外国人は関係ない」などと擁護する主張もあります。

今回は、「外国人労働者が日本人の職を奪っている」「外国人労働者が日本人の賃金を下げている」という説は本当なのかどうか、データ的に検証したいと思います。

現在、日本国内な就業者に占める外国人は、約230万人です。これは国内の就業者(アルバイトも含む)の3.4%になります。

外国人がいつからどれくらい増えているのかというと次のような推移になります。

外国人労働者の推移

1990年    約26万人
1996年    約63万人
2000年    約71万人
2008年    約49万人
2012年    約69万人
2016年    約108万人
2020年    約172万人
2024年    約230万人

この外国人労働者の推移を見てみると、1990年から1996年のたった6年の間に、倍以上の増加をしていることがわかります。この間に何があったかというと、1993年に「技能実習制度」というものが開始されたのです。

技能実習制度というのは、外国人が日本の技術を学ぶという建前のもとで、実質的には日本人よりも低賃金で労働者として外国人を受け入れるという制度です。

労働環境の悪さや、実習生の逃亡など様々な問題が生じたために、現在は廃止され別の制度になっていますが、この技能実習制度が取り入れられたことで、外国人労働者が爆発的に増加したのです。

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外国人労働者の激増と日本人の賃金低下はリンクしている

では、この外国人労働者が増えた時期に日本人の平均賃金がどう動いているかチェックしてみましょう。

日本人の平均賃金は、高度成長期以降、ずっと上昇を続けていましたが、1997年をピークに減額に転じています。それ以降、2010年代後半まで20年に渡って減額し続けたのです。

昨今では、さすがに賃金が下がりつづけていることに国も危惧し、安倍首相などの賃上げ呼びかけもあって、2010年代後半から若干上昇に転じていますが、それでもまだ30年前のピーク時には達してないのです。

だから、外国人労働者が増加するのと、日本人の賃金が下がるのは、完全にリンクしていると言えるのです。

日本人の平均賃金

平成3(1991)年   447万円
平成9(1997)年   467万円(最高値)
平成10(1998)年    465万円
平成11(1999)年    461万円
平成19(2007)年    437万円
平成22(2010)年    412万円
平成23(2011)年    409万円
平成27(2015)年    420万円
令和2(2020)年   433万円

国税庁の統計発表から著者が抜粋

「日本人の給料が下がっていると言っても、ピーク時と比べて10%も下がっていないじゃないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、その感覚は間違っています。

というのも、現代の世界では経済の規模が毎年拡大しているのだから、時とともに賃金も上がるのが普通です。

実際に、先進国の1997年と2017年の賃金の上昇率は下の表のようになっています。この表は、主要先進国の1997年を基準とした賃金増加率を示したものです。

2017年の先進諸国の賃金1997年を100とした場合

アメリカ    176
イギリス    187
フランス    166
ドイツ     155
日本       91

出典(日本経済新聞2019年3月19日の「ニッポンの賃金・上」)

これを見れば、先進諸国は軒並み50%以上上昇しており、アメリカ、イギリスなどは倍近い金額になっていることがわかるはずです。

その一方で、日本だけが下がっています。イギリスの187%と比較すれば日本は91%であり、半分しかありません。つまりこの20年間で、日本人の生活のゆとりは、イギリス人の半分以下になったといえるのです。

賃金が上昇しているのは、先進国のみならず世界中で同様の傾向です。戦争や紛争、飢餓などのよほどの悪条件ない限り、賃金というものは時間とともに上昇するものなのです。平成以降の日本だけがこのセオリーから取り残されているのです。

2020年以降、日本は、平均賃金で韓国に抜かれてしまいました。

この2~30年、日本は明らかに「異常な賃金低下」に見舞われているのです。

そして、日本の「異常な賃金低下」と、外国人労働者の激増の時期は完全に一致します。

もちろん、日本の賃金が上がらないのは外国人労働者だけが原因だとは言えません。が、それも原因の一つではあるのです。

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外国人労働者は「悪質な職場」を増やしている

外国人労働者が増えると日本人の賃金が下がるというのは、理屈でも説明がつきます。

現在、外国人労働者の多くは日本人にとっては「この時給でこんな仕事やってられるか」というような仕事をやっています。これがどういう現象を引き起こすかというと、「時給が上がらなくなる」のです。

たとえば、コンビニや建設業などでは、従業員の賃金は仕事の割に安いです。日本人はあまりやりたがりません。だから、本来であれば経営者は賃金を上げなくてはならないはずです。が、そこに外国人が入ってくれれば、経営者は賃金を上げなくて済むのです。

その結果、日本全体の賃金はなかなか上がらないということになっているのです。

そして、割の合わない悪質な職場がそのまま継続されることになります。だから外国人労働者が、日本人の職場を直接奪っているわけではありませんが、「仕事に見合う賃金をもらえる職場」が減り続けることになります。

つまり間接的に、日本人の職場を奪っていると言えるのです。

日本では外国人労働者を受け入れる環境が整っていない

よく「他の先進国では、日本よりももっとも移民を受け入れている」ということで、「日本の移民の数は少ない」という主張も見られます。

が、他の先進国は、日本よりもはるかに「移民が入ってくるための社会システム」が整えられています。

たとえば、賃金の問題もそうです。ほかの先進国では、労働者の権利などが守られており、移民が入ってきても自国民の賃金は上がるようなシステムがあります。だから前述したように、先進国は移民が多くても賃金はちゃんと上昇しています。

日本では、そういう労働者の権利を守る土台ができておらず、ろくに準備もしないまま外国人労働者を大量に受け入れてしまったのです。

また先進諸国も、移民が増えることを決して良しとはしておらず、欧米各国で「移民をこれ以上受け入れるな」という主張が大きくなっています。

筆者は、日本という国が本気で、世界の貧しい国の人たちを助けたい、日本の豊かさや技術を分けてあげたいという方針を持ち、入念な計画と準備をした上で移民を受け入れているのであれば、何の文句もありません。

しかし、今の日本は、自国民に対しては、「まともに働いても配偶者と子供二人を養うことさえ難しい」というような苦しい生活を強いています。「豊かさを他の国に分け与える」ことなど、とても無理な状況です。

しかも、移民を受け入れようと画策してきた人たちは崇高な理念を持っているわけではありません。ただただ自分の目先の利益ためだけに、無理くりで外国人労働者を大量に受け入れ、そのために様々な問題を引き起こしているのです。

次回では、誰が何のために外国人労働者をこれほど受け入れてきたのかを追及したいと思います。

(本記事はメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2025年9月1日号の一部抜粋です。「札幌国税局の違法な税務調査が発覚?」「国民の大半が税金払い過ぎになっている」を含む全文はご登録の上ご覧ください。初月無料です)

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【関連】財務省の秘密警察部門、国税庁が「国会議員の不倫調査」を得意とするワケ。全国民監視の強大権力、分割急務(作家・元国税調査官 大村大次郎)

image by: Shutterstock.com

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