表でトランプの顔を立て、裏では高笑い。天安門の楼上で揃い踏んだ習近平プーチン金正恩ら独裁者たちが描く狡猾なシナリオ

 

復活しかねない「力あるものが世界の趨勢を決める」という外交

北朝鮮については、核兵器不拡散の取り決めを無視し、国際社会からの抗議を受け、国連安保理決議による制裁措置の対象となりつつも、核開発および弾道ミサイル技術の進展に勤しむ姿は、また多国間主義の尊重という観点からは大きな疑念が生じます(ほかにも国民に対する人権問題や拉致問題への関与など、ネガティブなポイントを挙げればキリがありません)。

ロシアの対ウクライナ戦争の継続をバックアップする見返りにロシアから得た弾道ミサイルと核関連の技術とノウハウを受けて、すでに“質の高い”核保有国の仲間入りを果たしたと思われますが、これは北東アジアの安全保障に重大な懸念を付け加えることに繋がります。

ロシアについては、いうまでもなく、中国同様、国連安保理常任理事国という特別な地位を持ち、国際安全保障の維持に大きな責任を負う国(平和の番人)でありながら、2022年2月24日にウクライナに侵攻したことは、明らかな国際法違反であると同時に、国連中心の安全保障体制の限界と崩壊を印象付けることになっています。

中ロ朝が連携を強め、多国間主義(枠組み)の守護者といったイメージを国際社会において宣伝することがまかり通った暁には【侵略国が非を一切認めず、平気で開き直ることができる】という大きな矛盾を認め、かつ中ロ朝と歩みを同じくする国々にも伝播していく恐れが強まります。

アメリカ政府から敵対視され、最近はB2戦略爆撃機による核施設へのバンカーバスター投下という攻撃に遭い、常にイスラエルからの攻撃に晒されるイランは、中ロの技術的・軍事的・経済的、そして外交的なバックアップを得て、確実に中ロ陣営に組み込まれています。

現在、英仏独が挙ってイラン政府に対してウラン濃縮の停止を求め、さもなくば国連安保理決議に基づく対イラン制裁の復活を匂わせてイランに圧力をかけていますが、それに対して中ロは“原子力の平和利用の権利はイランを含むすべての国がもつもの”と主張して、英仏独の主張に真っ向から対立する姿勢を取って、イランをバックアップする姿勢を明確にしています。

これが何を引き起こしかねないか?

各地域におけるエゴがぶつかり合った結果、生じる地域戦争が互いに連鎖して、戦争が世界中に広がっていくという恐ろしい状況です。

そしてそれはまた力あるものが世界の趨勢を決めるという力の外交の復活を意味し、多国間主義を掲げつつも、反欧米支配に異を唱える国々を次々に味方につけ、自らの陣営に引き込んで、欧米社会とその仲間たちに対する一大勢力圏を築こうとしています。

このブロックが見据えるのは、欧州ではなく、あくまでもアメリカ合衆国とのバランス、つまりequal standingでやり取りをする新国際秩序の構築であると見ています。

その先にあるのは【米・中・ロという大国だけで国際的な問題の行方を決める】というTripolar system(3極制度)の世界なのかもしれません。

これに何らかの成果が欲しいトランプ大統領が乗ってくるようなことがあれば、確実に国際ルールに基づく、法による支配による国際秩序は崩壊し、その代わりに力がものをいう世界が生まれることになります。

それはつまり多極化の世界でありつつ、多国間主義や国際協調に基づく国際秩序ではなく、弱肉強食の世界で、かつ強いものの論理がまかり通る異常かつマルチスタンダードの国際社会になります。

~中略~

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

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