「戦争慣れ」が引き起こしつつある紛争とビジネスのデカップリング
それぞれの思惑に影響される形で現行の非常に複雑怪奇な国際情勢が日々動いているのですが、このところ顕著になってきたのが、紛争コミュニティと経済・金融・ビジネスコミュニティーの動きやトレンドが連動しなくなってきているように見えます。
ロシア・ウクライナ戦争は終わりが見えず、イスラエルによる中東地域の席捲と人道危機の拡大も外交的なコミュニティでは非難の的となり、イスラエルの孤立を印象付けていますが、ビジネスがそれで止まることはなく、金融の動きも戦争に慣れっこになったのか、
戦況に関係なく動いています。
戦争に慣れっこになったがゆえに、その世界下で生きるための調整が行われたのだという意見もありますが、いろいろな話を聞き、状況を分析してみると、紛争とビジネス・金融のdecouplingが起きているように見えてきます。
とはいえ、戦争絡みではしっかりと軍需産業は利益を拡大しており、それは敵味方の別なく、各国の経済を引っ張っていることも現実です。よく以前“死の商人”という否定的な表現で武器商人の存在が語られましたが、このコーナーでもご紹介したように、毎年2月のイスタンブールでの武器市は年々盛況で、いかに長引く戦争がもたらす悲劇と破壊を横目に、戦争が利潤を生みだしているという非常に皮肉な状況が露わになっています。
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しかしその利益を享受する存在こそが、アメリカであり、ロシアであり、中国であり、そして欧州各国であり、そして例外をいえばトルコのように、世界有数の軍需産業を抱える国々であり、そして皮肉にも“戦争当事国”であるか、少なくとも“近日中に武力衝突が起きると言われ続けている国”(例:中国と台湾、ロシアとバルト三国、など)でもあるというのは、何かあるような気がしてきませんか?
直前まで開催が危ぶまれていた中国における抗日戦争勝利80周年式典は、滞りなく勧められ、天安門広場に居並ぶ中ロ朝の3首脳のそろい踏みと28か国の首脳が集った姿は、新しく構築される国際秩序の中心に中国が位置しようとしていることを表しているように見えてきました。
アメリカに追いつけから、アメリカと肩を並べる存在へのステップアップ。中国がその地位に立った暁には、世界はどのような姿になっているのでしょうか?アメリカとロシアを取り込んだ3頭体制での安定と支配なのか?それとも…。
複雑怪奇で混乱極まる国際情勢の渦の中に埋もれてみて、いろいろと感じてしまう今日この頃です。
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年9月5日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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