ソウルに生きる市民は変わってしまったのか?20年前に住んでいた韓国で「民主主義の源」を探しに

 

変わってしまった風景の中でも息づく、この韓国の声。

普段の声で言えば、昼休みの官庁街の食堂は賑やかである。

昼の食堂は同僚と話をしながら食べるグループが圧倒的に多い。

日韓で働いて感じるのは、韓国では1人で食べる人が少ないこと、いや、日本が1人で食べる人が多いのだろうか。

私もここで仕事をしていた時に、昼ご飯を一緒に食べることは習慣のように語られていた。

生憎、私の仕事の場合、新聞社の夕刊の閉め切り時間があり、午後2時ごろでないと、一息がつけないから、多くは断ることになったが、今でも昼間に食事に行く職場の習慣は変わらないようだ。

最新のビルが建て替わり、風景の変化に酔いながらも、食堂に行くオフィス街の韓国の声、表情には常に街頭民主主義の片鱗を見せている。

そして、入国の際に見た光景を思い出し、顔を綻ばせた。

それは仁川国際空港の入国審査での事。

外国人向けの審査には、長蛇の列が出来ていた。

この列に紛れ込んだ年配の韓国人の夫妻は、のんびりと列を進める日本人の若者に韓国語「はい、もっと前へ行きなさい」「あなた、あっちの前に行きなさい」と大きな声で指図する。

その勢いに気おされ、若者たちが何となく歩を前に進める風景はコントのワンシーンのよう。

この夫妻が並ぶべきなのは、韓国人専用のレーンで、明らかに本人たちが間違っているから、誰かが教えなければならない。

しかし、私が教えようにも、列から離れられず、もうスムーズにお二人を諭す力強い韓国語も口から出て来ない。

だから、ひたすらこのおじさんとおばさんと戸惑う日本人の若者を観察することにした。

そして、思ったのが、これがよく出会った韓国人の「やさしい元気なおせっかい」で、これにずいぶんと私も戸惑いつつ助けられた、と思い出す。
そして、これが街頭民主主義のパワーの源である、と感じ入る。

これは、むしろ心地よい、日韓のふれあいのようにも思えてきた。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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