今や名実ともに「自動車大国」となった中国。そんな隣国の新エネルギー車(NEV)の販売を巡る報道が、日英で「食い違い」を見せています。何がこのような事態を招いたのでしょうか。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では今回、NHKとロイターが中国のNEV販売について「真逆」に報じた理由を考察。さらにどちらの報道がより実相に近いかについても論じています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ロイター「低調」、NHK「好調」、中国NEV販売なぜこうなる?
ロイター「低調」、NHK「好調」、中国NEV販売なぜこうなる?
ロイターは2025年9月8日「中国EV・ハイブリッド車販売、8月は1年半ぶり低い伸び」と報じた。
NHKは2025年9月11日「中国 8月新車販売 去年同月比16.4%増 「新エネルギー車」好調」と報じた。
ロイターは新エネルギー車(NEV)販売低調、NHKはNEV販売好調と全く真逆の報道になっているのが象徴的だ。
なぜこんなことになっているのか?
ここには中国の新車販売統計の違いがあり、そして中国のNEV販売が今まさに転換点を迎えていることと関係している。
中国の新車販売統計
中国の新車販売に関する統計データは、中国汽車工業協会(中国自工会)と乗用車市場情報聯席会(乗聯会)から出される。
通常、毎月の上旬から中旬にかけて、まず乗聯会が先行発表し、その後中国自工会が発表する。
中国自工会は名称通り、「工業」に比重があり、乗聯会は中国汽車流通協会の傘下で、その名の通り「流通」に比重がある。
そのため、両者が発表するデータは全く異なりはしないが、細部で微妙な差異が出てくる。
どちらかというと、中国政府とつながりが深い中国自工会のデータの方が有力視される。
ロイターの報道は乗聯会の、NHKの報道は中国自工会の、それぞれ発表したデータに基づく。
ロイター・乗聯会
まずロイターが基とした乗聯会のデータから見ていくと、今まで乗聯会では、流通にこだわりがあるように、新車の生産・小売・卸売の三つの台数を発表してきた。
しかし今回の2025年9月発表8月統計から、生産・卸売・小売・輸出と四つの台数、及び順番を入れ替えた。
こうすると、工場での生産、工場出荷台数、国内販売店などでの販売、海外での販売と分かれてすっきりする。
ロイターの報道では、この説明がなく、乗聯会の小売、つまり国内販売のみを焦点に充てている。
それによれば、2025年8月、中国のBEV販売は前年同月比17%増、PHEV販売は同7%減、REEV販売は同±0%、以上のNEV販売全体では同7.5%増となった。
PHEV販売が減少に転じていることが象徴的で、これはすなわちBYDの販売減速との関連が極めて強い。
素直に見れば、BEVは好調だが、PHEVが足を引っ張り、NEV全体の成長を1桁プラス成長にとどめた、となる。
NHK・中国自工会
一方のNHKが基にした中国自工会のデータを見ていくと、こちらは生産・(国内)販売・輸出の三つの指標を出している。
また、NEVに関しても乗聯会とは違い、BEV、PHEV、FCVに分けており、REEVはPHEVに含めているようだ。
FCVはごく少量なので、今回は割愛するとして、中国自工会の2025年9月発表8月統計では、BEV販売は実に同41%増、PHEVが同8%増となった。
その結果、NEV販売全体では同27%増になっている。乗聯会と違い、中国自工会のNEV統計では商用車も含まれていると思われるが、商用車販売は微量だとは考えられる。
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