台湾の現状を直視せよ。自民党総裁選で全候補者が掲げた「アメリカ頼りの嫌中外交」と「防衛予算の大増額」が日本を滅ぼす明白な理由

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自民党の総裁選挙で、まともな議論がなされなかったと言っても過言ではない外交や安全保障をめぐる政策。こと中国に関しては、候補者たちは習近平政権を危険視するばかりで、いかに向き合っていくかという建設的な主張は皆無に等しいものでした。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、総裁選を通じて浮き彫りとなった日本外交の「無策」を厳しく糾弾。さらにトランプ外交に振り回される台湾の現状を反面教師として、日本が今こそ築くべき現実的な対中戦略のあり方を提言しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:外交無策を露呈させた総裁選 日本はトランプ外交に翻弄される台湾を反面教師にせよ

トランプに翻弄される台湾を反面教師に。「外交無策」を露呈させた自民総裁選

自由民主党第29代総裁には、誰が選ばれるのか。そんな話題が日本列島を席巻した1週間が過ぎた。

選挙はほぼ下馬評通り、高市早苗と小泉進次郎の決選投票となり、最終的に185票を獲得した高市が新総裁に選出された。

選挙結果に関する分析は政治の専門家に委ねるとしよう。本稿では選挙戦の中で繰り広げられた政策論争を振り返り、候補者たちが発した対外政策、就中対中政策について扱ってみたい。

いや、扱いたいとは言ったものの、残念なことに選挙戦を振り返ってみても特筆すべき政策があったかといえば、首を傾げざるを得ない。

とくに対中国だ。

日本の利益や安全を根本から変えかねない隣の大国との付き合い方をめぐり、まともな政策どころか意見にさえ出会わなかったことは、逆に病巣の深さを浮き彫りにしていて興味深かった。

候補者に共通していたのは、中国への警戒心の強調と中国との距離の遠さのアピールだった。これは換言すれば中国のことは「何も知らないし、見えていない」と公言しているようなものだ。その姿勢がかえってアピールポイントになるのだから日本も幼稚な国だ。

一方でスパイ防止法の必要性に言及し、日本にスパイ組織を作るとの意見も聞かれた。防衛費を対GDP比で2%以上にすることも既定路線のように聞こえた。

いずれも勇ましい話だが、要するにガキ大将の後ろで、気の合わない相手を嫌って遠ざけ、批判だけしていれば済むという相変わらずのスタンスだ。そんな無責任な外交がいつまで通用すると思っているのか。

しかもガキ大将の変質は激しい。

セント・アンドリューズ大学のフィリップス・P・オブライエン教授は『フォーリン・アフェアーズ』10月号で

1945年以降、同盟諸国は米主導の世界に順応し、有事にはアメリカが守ってくれると信じていた。だが、そうした日々は終わったのかもしれない。

とはっきり書いている。

共和党の他の指導者たちも、少なくとも、もはや世界で民主主義を守る義務があるとは考えていないと明らかにしている。

とも記す。

もちろん「だからこそGDP比で2%なんだ」という議論なのだろう。しかし本当にそれで中国に太刀打ちできるのか。

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