昔は経験則や他のお客様の話を交えて何かを伝えたり、指摘をすることが定番でしたが、今ではそのやり方が「コンプライアンス違反」と受け止められる可能性があります。では、どのようにお客様に言いにくいことや聞きにくいことを伝えればいいのでしょうか? メルマガ『菊原智明の【稼げる人、売れる人に変わる知恵】』の著者であり、経営コンサルタントで関東学園大学で教鞭も執る菊原さんは、ひとりの営業スタッフが使っていた「とあるテクニック」が使えるとして紹介しています。
聞きにくいこと、言いにくいことはAIに言わせる
私が重宝していたトークのひとつに「言いにくいことは“他のお客様”に言わせる」というテクニックがある。
お金などのデリケートな内容を聞くときに効果的。だが、ここ数年で状況は変化した。
他のお客様の例を伝えると「この人はコンプライアンスの意識が低いな」と思われてしまう危険性がある。
場合によっては「常識知らずでルールを守れない人」といった印象を持たれることも。今の時代、注意しなくてはならない。
例えばお客様にローンの残債について聞きたいとする。
営業スタッフが「今どのくらいローンが残っていますか?」と質問する。
もしくは「出せる頭金はいくらありますか?」とストレートに切り込む。どちらもタイミングも難しいし、勇気も必要だ。
お客様によっては「いきなり失礼なことを聞く人だ」と思われてしまう。
こちらに悪意がなくとも、お客様にしてみれば「デリカシーがない」と感じる場合もある。
今までは「先ほどのお客様はローンの残債を気にされていたのですが、お客様はいかかでしょか?」といったトークをしてきた。
これならお客様も「自分だけが聞かれているわけではない」と受け止め、答えてくれる可能性が高まる。
いわば「第三者に言わせることで角を立てない」というテクニックだ。
しかし、先ほど述べたように“コンプライアンス、プライバシーの問題”が出てきてしまう。難しい時代になった。
以前の研修でのこと。
この問題を解決するトークに出会った。
ある若い営業スタッフが、お客様に対して「グーグルで調べたところ〇〇と出ていたのですが、いかがでしょうか?」と切り出していた。
このトークを聞いた時「これはうまい言い方だな」と思った。
今までのように「先ほどのお客様がこう言っていました」と口にすると、お客様は「自分の情報も他人に話されてしまうのでは」と警戒する。
しかし「グーグルで調べたところ」と言われれば「客観的なデータなんだな」と自然に受け入れられる。
データという客観的な権威を借りているから、お客様も「確かにそうだよね」という納得感がある。
これは「言いにくいことはグーグルに言わせる」という進化したテクニックなのだ。
さらに、この方法は営業現場だけでなく“人間関係全般”にも応用できる。
たとえば相手が明らかに勘違いをしていたとする。
その際「〇〇さん、それは間違っていますよ」とストレートに指摘したらどうだろう?
仲のいい人なら「そうか、勘違いしていたよ」と納得するかもしれない。
しかし、それほど関係ができていなければ「この人、何言っているの」と反感をかってしまう。
場合によっては「あなたの方こそ間違っている」と反論され、不要な争いに発展しかねない。
そこで「今、グーグルで調べたらこういう情報がありました」とスマホを見せたらどうだろう。
相手は「なるほど、勘違いしていましたね」と素直に受け入れやすい。
人間の直接的な否定ではなく、外部のデータによる“やんわりとした指摘”になるからだ。
相手のプライドを傷つけずに真実を伝えることができる。これは人間関係を円滑に保つ上で非常に有効といえる。
この「言いにくいことを客観的なデータ(検索エンジン、AI)に言わせる」という考え方は、今後ますます重要になる。
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