自公連立解消の一番の理由として、「政治と金」の問題を挙げた公明党。しかし彼らは自民党を責め立てられるほど、カネにクリーンな政党なのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、公明党の支持母体である創価学会が抱える「宗教団体と金」の問題を指摘。さらにあれほどの巨大な宗教組織が国税による税務調査を受けずに済んできた理由を解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:公明党は「政治と金」より「宗教と金」の問題の解決を
公明党は「政治と金」より「宗教と金」の問題の解決を
宗教法人優遇税制の闇
公明党が自民党との連立から離脱しましたね。
公明党は離脱した理由として「政治と金」の問題を挙げています。これだけ見ると、公明党は金に対してクリーンな印象を受けます。しかし、ご存じのように公明党は創価学会という宗教団体を母体に持つ政党です。
そして、日本の宗教団体というのは、金に対してお世辞にもクリーンとは言えません。統一教会問題に見られるように「宗教団体と金」の問題は、「政治と金」の問題と同じように日本社会の癌ともいえるものです。
そして「宗教団体と金」の問題がなかなか解決してこなかったのは、創価学会をはじめとする宗教団体が政治に大きな力を持っていたからでもあるのです。つまり公明党も「宗教団体と金」の問題に少なからず影響を与えているのです。
このメルマガでも以前にご説明しましたが、そもそも宗教法人というのは、税制上、非常に優遇されています。
宗教法人というのは、驚くほど金を持っていることがあります。あまり名前の知られていない宗教法人が、巨大な施設を建てているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか?またオウム真理教が事件を起こした時、その莫大な資金力に驚いた人も多いはずです。
実際、宗教法人は非常に金を持っています。日本全体の宗教法人の総収入は2兆円を超えるとされており、金融資産は20兆円~30兆円と推定されています。不動産を含めると、その資産力は計り知れないといえます。
たとえば、2013年、創価学会は東京・信濃町に、総工費170億円の新本部ビルを落成させています。また真如苑は、2000年代、東京都の千代田区や、武蔵村山市などの土地、800億円以上を購入しています。宗教法人は、経済主体として決して無視をすることのできない存在です。
なぜ宗教法人というのは、それほど金を持っているのでしょうか?
宗教法人というのは、金を集めやすい性質を持っています。信者がお布施や寄進、寄付という形で、対価なくお金を出してくれます。信者一人一人の寄付は少なくても、多大な金額になります。たとえば、1万人の信者が年間1万円ずつ寄付をしたとしても、それだけで1億円になるのです。
しかもその1億円には、一般の企業のように、「仕入れ経費」などはないので、1億円が丸々、収益になるのです。だから、信者の多い巨大宗教団体は、容易に巨額の資金力を得ることができるのです。
また宗教法人の運営には、人件費があまりかかりません。信者たちがボランティア的に運営を手伝ってくれるので、専任の職員は少なくて済むのです。また専任の職員も通常は信者なので、薄給で済む場合が多いのです。
そして、宗教団体へのお布施、寄付などには、原則として税金はかかりません。ビジネス的に言えば、宗教法人というのは「元手があまりいらない上に、税金がかからない」ということです。そのため、宗教団体は、非常にスピーディーに金を貯めることができるのです。
この記事の著者・大村大次郎さんを応援しよう
※ワンクリックで簡単にお試し登録できます↑
¥330/月(税込)初月無料 毎月 1日・16日
月の途中でも全ての号が届きます
宗教法人の優遇税制とは?
まず宗教法人の税金制度について、整理しておきましょう。
冒頭で述べたように、宗教法人というのは、非常に税金で優遇されています。宗教法人の宗教活動で得たお金というのは、原則として税金はかかりません。宗教活動で得たお金というのは、お布施や寄付などのことです。神社などで売られているお守りやおみくじの販売も、宗教活動として非課税となっています。国税庁のホームページでは次のように解説されています。
お守り、お札、おみくじ等の販売のように、その売価と仕入原価との関係からみてその差額が通常の物品販売業における売買利潤ではなく、実質的な喜捨金と認められるような場合のその物品の頒布は、収益事業には該当しません。
つまりは、おみくじやお守りなどは、本来の原価は大したものではなく、神仏の「御利益」を売りにしている商品については、宗教活動と認めます、ということなのです。
また墓地の販売も、非課税となっています。国税庁のホームページでは、宗教団体の墓地貸付事業について、次のように説明しています。
宗教法人が行う墳墓地の貸付けは収益事業に該当しないこととされており、この墳墓地の貸付けには、その使用期間に応じて継続的に地代を徴収するもののほか、その貸付け当初に「永代使用料」として一定の金額を一括徴収するものも含まれます。
墓地の場合、「販売」とされていても、実は「永代の貸付」とされている場合が多く、つまり、宗教法人が営む墓地販売業は、非課税ということです。
収益事業に関する税金も、普通の企業の約60%でいい
宗教法人は、宗教活動とは別に「収益事業」を行なったりすることもあります。収益事業というのは、不動産の貸付や、駐車場、出版や物品販売などのことです。物品販売も、先ほども述べたようにお守りやおみくじなどは、宗教活動として非課税になります。収益事業を行っていた場合は、当然、普通の企業と同じように税金がかかるはずです。が、この収益事業に関しても、宗教法人は優遇されているのです。
宗教法人が収益事業を行っていた場合、所得金額(利益)の80%に関して、法人税がかかります。つまり、所得金額の20%は免除されるということです。
また宗教法人の収益事業の法人税は、税率が19%となっています。普通の企業の、法人税は約23%です。普通の法人税の8掛けでいいということです。
しかも所得が20%免除されているので、つまり、実質的な法人税率は約15%です。つまり、宗教法人は、普通の企業の税金の6割でいいということなのです。宗教活動で得た利益には税金はかからず、収益事業で得た税金も普通の6割でいいというわけです。
この記事の著者・大村大次郎さんを応援しよう
※ワンクリックで簡単にお試し登録できます↑
¥330/月(税込)初月無料 毎月 1日・16日
月の途中でも全ての号が届きます
宗教法人優遇税制の問題点
筆者は宗教法人について、頭から否定するつもりはありません。宗教というのは、太古から人の心の救いになってきた面は必ずあるし、それを信じる人たちにとっては命よりも大事な場合もあります。
また現在の宗教団体の中には、地域のコミュニティーとしての機能を果たしているようなケースも多いものです。生活に苦しい人に信者同士で仕事を融通したり、生活の相談に乗ってくれたりもします。
貧しい家庭や孤独な老人にとって、宗教に入ることが救いになるケースも多いと思われます。現代日本が失いつつある「地域の機能」を、宗教法人が代わって果たしている面もあるでしょう。
だから、宗教法人がある程度の税制優遇を受けるのは、不自然ではないともいえます。
が、今の宗教法人税制を手放しで容認するわけにはいきません。今の宗教法人税制は、多々の問題点を抱えているといえるのです。
というのも、まず第一の問題点は、「透明性」です。
社会からこれだけの巨額のお金を集め、税制でもこれだめ優遇されているのだから、会計などには、当然、「透明性」が求められます。それが社会的義務でもあるはずです。が、今の宗教法人は、会計などに「透明性」があるとは決して言えないのです。
幹部などが宗教法人の金を個人的に費消したりするケースは多々あり、本来それには幹部個人に所得税や住民税が課されなくてはなりません。
しかし巨大宗教の場合、その多くは見逃されているのです。
宗教法人は、収益事業をしていれば税務署の申告の義務があります。また収益事業をしていなくても、宗教活動で8,000万円以上の収入があれば税務署に申告しなければなりません。だから、名だたる宗教法人のほとんどは、税務署の監査を受ける立場にあるといえます。
しかし、名だたる宗教法人のほとんどは、その政治力を駆使し、税務署の監査をきちんと受けていないのです。
たとえば、創価学会は、1990年に税務調査に入られ、墓石の売上など経理ミスで、多額の追徴課税を受けました。が、それ以降は、税務調査に入っていません。
これほどの巨大宗教団体が、25年に渡って、ほとんど税務署から接触されていないというのは、異常なことです。1993年以降、政権与党に入ったため(一時的に政権から離脱したことはある)と考えられるのです。
国税側の意気地なしぶりもさることながら、創価学会側としても、国民の理解を得るためにも、税務調査を受けるべきではないでしょうか?本当に国民に支持をされる宗教団体になるためには、税務調査受けるくらいの社会的責任はまっとうしなければならないはずです。またそれは国民に対して、宗教法人の透明性を証明する上でも不可欠なことです。
公明党が「政治と金の問題」を指摘するためには、その母体である創価学会は「宗教と金の問題」を自ら解決すべきでしょう。
(本記事はメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2025年10月16日号の一部抜粋です。「高齢一人暮らしの幸福度は収入が左右する」「男性の“高齢一人暮らし”は不幸になりやすい?」「国民には大増税、自分たちには大減税をしてきた財務省」を含む全文はご登録の上ご覧ください。初月無料です)
この記事の著者・大村大次郎さんを応援しよう
※ワンクリックで簡単にお試し登録できます↑
¥330/月(税込)初月無料 毎月 1日・16日
月の途中でも全ての号が届きます
【ご案内】元国税調査官の大村大次郎氏が、事業者向けの専門記事をプラスした「特別版」の有料メルマガを新創刊しました。さらに高度な情報をお楽しみください。
【関連】日本よ「こども家庭庁」をぶっ潰せ。知れば誰もが激怒する血税7.2兆円「中抜きし放題」の実態!省庁廃止で少子化が解決する理由(作家・元国税調査官 大村大次郎)
image by: X(@公明党)