風呂キャンセル界隈、外出キャンセル界隈、病院キャンセル界隈など「○○キャンセル界隈」という言葉がもはやスタンダード化した感のある現在。その影響は、人材募集の世界にも波及しているようだ。それが「履歴書キャンセル界隈」という、にわかには信じ難い界隈の存在。一体どういうことなのか?
そもそも「履歴書あり」だと応募自体が少ない
「履歴書の提出を必須にすると、そもそも応募自体が少ないんですよ」
都内にある某上場企業の採用担当者はそう嘆く。これは「アルバイト募集」に限定する話だそうだが、履歴書の提出に抵抗感のある人たちが増えている印象だという。
この会社では、履歴書を必須で人材募集サイトでアルバイト募集の掲載をしたとことろ、応募者は0だったとしている。
そこで「履歴書の提出は必須」を外したところ、いきなり4件の応募があったという。理由は「学歴を知られたくない」「個人情報を知られたくない」などが考えられるが、そもそも「履歴書を書くのがメンドい」という人が多いようだ。
採用の判断材料として、過去のバイト歴、スキル、勤務地までの所要時間(住所や在校先)という情報の収集は外せないはずだ。
ならば、応募があった後から「履歴書を送ってほしい」とお願いすれば問題はなさそうだが、「そうは問屋が卸さない」という。
履歴書を送って欲しいと担当者から連絡すると「音信不通」に
同採用担当によれば、応募者に「履歴書を送って」と連絡した途端に返信がまったく来なくなり、挙げ句の果ては音信不通になってしまったという。
これでは、採用しようにも「履歴書」が障壁となって、採用活動がイチから振り出しに戻ることを繰り返してしまうことにもなりかねない。
「どんな人が応募して来るのか、前もってある程度の選別ができないのだとしたら、ある意味<賭け>になりますよね。こちらとしては、どのようなスキルがあるかだけは事前に知りたいだけなんですが…」
この企業では、今もアルバイトの採用が進んでいないという。
「履歴書なし」にすると応募は増えるが「面接ドタキャン」
「うちでは、最初から<履歴書なし>にして募集しています。ところが今、また別の問題が浮上しているんです」
そう語るのは、かつて関西で起業し関東に進出した某企業の採用担当者だ。
履歴書なしの状態で、人材募集企業を通じて、とりあえず面接日だけを設定してもらい、片っ端から会うことで採用を進めるようにしているという。
しかし、履歴書なしの面接で問題になっているのが「ドタキャン」の頻発だ。
把握できている連絡先はGmailかLINEのみの場合が多く、返信はなく既読にもならないことが多いという。面接の当日、だれも来ない会議室の中で、待ちぼうけの時間だけが過ぎてゆく日がかなり多いそうだ。
かつては「字が綺麗な人が有利だ」と言われたり、採用されやすい書き方のコツを伝授する本まであった「履歴書界隈」だが、今ではパソコンで入力したものを提出する「電子化」の履歴書が一般的だ。
そして、その履歴書すらキャンセルする人たちが増えてきたことで、もしかすると履歴書は正社員の採用でさえも「昭和・平成の遺物」として消えゆく存在なのかもしれない。
さて、お次は「何キャンセル界隈」が出るのやら。
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