あまりに一方的と言わざるを得なかった、米国トランプ大統領による各国に対する相互関税。これは「トランプ関税」と呼ばれ、世界中から非難されました。そんな米国の高関税政策ですが、何も今に始まった話ではありませんでした。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、そもそも世界大恐慌も先の大戦も「アメリカの関税が原因」という衝撃的な事実を暴露。世界中を不景気のどん底に叩き落としただけでなく、当時の日本が戦争に進まざるを得なかった背景について詳述しています。
世界大恐慌を引き起こしたアメリカの関税
世界中から大ブーイングを浴びたトランプ大統領の高関税政策。
一時は日本の自動車に25%の関税を課すという事を言われ、日本の自動車業界は大慌てしました。
実は、アメリカは戦前も高関税政策を行なっていたことがあります。
そしてこの高関税政策が、第二次世界大戦の原因の一つになっていたのです。
アメリカが、他国に先んじて高い関税を設定したことで、世界経済に大混乱を引き起こしたのです。
今回はその経緯を説明したいと思います。
実はアメリカというのは、建国当初から関税が非常に高い国でした。
というのも、アメリカ人は所得や財産に税金を課せられることを嫌ったので、関税で国家財政を賄うしかなかったのです。
しかも建国当初のアメリカは、まだ未開の途上国だったので、自国の産業を保護するためにも高い関税を敷いていたのです。
当時、輸入品に40%もの関税が課せられており、国家税収の8~9割は関税収入だったのです。
アメリカが関税以外の「本格的な税金」をつくったのは、20世紀に入ってからでした。
1913年に、ようやく所得税が創設されたのです。
今でこそ、アメリカ連邦政府の主財源は所得税ですが、1910年代までのアメリカには所得税がなかったのです。
所得税というのは、1799年にイギリスで世界最初に導入された新しい税金なのです。
といっても、人の収入に税金をかけるということは太古から行われてきました。
ローマ帝国やキリスト教の10分の一なども、広義の意味では所得税といえます。
ただ、現代的な「所得額を正確に算出して累進的な税率をかける所得税」というのは、この1799年のイギリスの所得税が世界初だとされているのです。
それ以来、ヨーロッパ諸国はこぞってこの所得税を導入しました。
日本でも1887年に所得税が導入されています。
しかし、アメリカはなかなか所得税を導入していませんでした。
アメリカ人は伝統的に直接税を嫌っていたので、所得に税金をかけられることも拒んでいたのです。
そのアメリカが、なぜ1913年に所得税を創設したのかというと、当初は関税を下げるのが目的でした。
なぜ関税を下げたかったのかというと、「関税は貧富の差を広げる」ということで、世間の批判があったからです。
関税というのは輸入品に均等にかかるため、金持ちも貧乏人も輸入品を買えば払うことになります。
当時のアメリカは、衣料品などの生活必需品も輸入品に頼っていました。
だから、日常生活をしていく上では、金持ちも貧乏人も輸入に頼っていました。
貧乏人は収入に占める消費の割合が高いものです。
貯金をする余裕がありませんから、収入のほとんどが消費で消えてしまいます。
その消費の中には、輸入品も多く含まれており、その輸入品の価額には関税が含まれています。
一方、金持ちは、収入のうち消費に回すお金はごく一部です。
だから、収入における関税の負担割合も高くはありません。
つまり、「収入のほとんどを消費してしまう貧乏人ほど、関税の負担割合が高くなる」ということです。
そのため関税は貧富の差が広がるということで、関税を減らし、金持ちを中心に課せられる「所得税」を創設しようということになったのです。
この所得税の創設により、アメリカの関税は一時16.4%にまで引き下げられました。
アメリカの関税は建国以来、40~50%で推移していたので、革命的な関税の引き下げだったわけです。
が、この低関税は、長くは続きませんでした。
10年足らずで、もとの高関税に戻してしまったのです。それが、世界大恐慌を引き起こす原因ともなったのです。
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