貿易の勝ち逃げをしたアメリカ
第二次世界大戦の要因の一つとして、1929年の世界大恐慌が挙げられます。
この世界大恐慌は、単に「アメリカのバブル崩壊」として片づけられることが多いものです。
しかし、この世界大恐慌というのは、決して偶発的なものではなく、当時の世界経済が抱えていた矛盾が一気に噴き出したものだといえるのです。
そして、この世界経済の矛盾に関して、アメリカの責任は大きいのです。
大雑把に言うならば、アメリカが世界経済の秩序を壊したために、世界経済は破たんしたといえるのです。
というのも、アメリカは国際経済における大事な義務を放棄していたからです。
その義務とは、「貿易の勝ち逃げをしてはならない」という義務です。
もしこの義務を怠れば、世界経済は回っていかないのです。
またアメリカは当時の国際経済のルールを無視して、ひたすら自国に富を貯め込んだのです。
それが、世界経済に様々なひずみをもたらし、破綻を招いたのです。
アメリカの経済は第一次大戦で大きく成長しました。
本土は戦争による被害をまったく受けなかった上に、連合国に莫大な軍需物資を売りつけました。
第一次世界大戦前のアメリカは世界一の債務国でしたが、戦後は世界一の債権国になったのです。
アメリカが世界の経済大国になったのは、このときからだといっていいでしょう。
第一次世界大戦でアメリカは大儲けしたのですが、戦争が終結すると軍需が急になくなってしまいました。
そしてヨーロッパ諸国は勝者も敗者も戦争で疲弊し、これまでのようにアメリカ製品を大量に輸入することはできませんでした。
そのためアメリカは、農業製品も工業製品も輸出が大きく落ち込んだのです。
これに警戒感を覚えたアメリカは、自国の製品を自国で消費するために、外国からの輸入を締め出す方針「高関税政策」を緊急に打ち出すのです。
1920年、1922年に関税を大幅に引き上げる法案を成立させました。
これにより、平均16.4%まで引き下げられていた関税率は、平均44.7%にまで大幅に引き上げられたのです。
このアメリカの高関税政策が、世界大恐慌の要因の一つにもなったと見られています。
前述したように第一次世界大戦の軍需により、アメリカは世界最大の債権国になっていました。ヨーロッパ諸国は、アメリカに対して莫大な借金を背負っていたのです。
その借金を返すには、世界一の金持ち国になったアメリカにたくさん物を買ってもらわなくてはならなかったのです。
しかし、そのアメリカが輸入を閉ざしてしまったのだから、借金を返すすべがなくなってしまったのです。
もちろんヨーロッパ諸国は、どこも経済状態が非常に悪化してしまいました。
イギリス、フランスなどの戦勝国は、敗戦国ドイツに巨額の賠償金を課すことで、経済を建て直そうとしました。
では多額の賠償金を課せられたドイツはどうなったのでしょうか?
経済破綻に追い込まれてしまったのです。
そしてドイツの経済破綻は、決してドイツだけの問題にはとどまりません。
ドイツに多額の金を貸しているアメリカにも大きな打撃となったのです。
それが世界大恐慌の大きな要因の一つと見られます。
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