各地で相次いでいる大規模な火災。自分たちも身近にもいつ起こるかわからない災害のため、用心しておくに越したことはありません。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で健康社会学者の河合薫さんは、火災の際に発生する火災旋風について紹介しています。
「火災旋風」知ってますか?
各地で大規模な火災が相次いでいます。
火事と気象は密接な関係があるため、古くから研究が蓄積されてきました。
少しでも知識があることが、火の用心の意識につながると思いますので、今回は「火災旋風」について書き綴ります。
火災旋風とは、火災の際に発生する竜巻状の渦で、この中に炎が巻き込まれると、通常の火災に比べて燃焼速度が驚異的に速まり、大きな被害につながります。
例えば、1923年9月1日に発生した関東大震災では、死者・行方不明者約10万5千人という大被害になりました。このとき多くの人の命を奪ったのが、火災
旋風です。
以前、関東大震災のときの話を取材しているときに、ある男性が「うちの爺ちゃんは渦巻が迫ってきて、あわてて逃げた。九死に一生を得たと言っていた」と話してくれたことがあります。おそらくこれが「炎を巻き込む前」の火災旋風だったのでしょう。
火災旋風のメカニズムはいまだに分からない点が多いとされています。
ただ、一つだけ明らかなのは、風の中には渦を巻きやすい部分が存在し、その部分に風が集まることで渦の回転速度が強くなることです。
この渦に炎が含まれたものが「火柱」になります。
一方で、炎を含まない火災旋風は空気の竜巻です。この火災旋風には、土埃や煙などが含まれているため、黒い柱のように見えるそうです。
先日、大規模な火災に発展した大分県佐賀関では、強風で火の粉や火種が拡散し離れた所で着火する「飛び火」によって燃え広がったとされていますが、火災旋風の可能性を指摘する専門家もいます。
また、火炎風下の床面(地表面)付近には、旋風の源ではないかと思われる数種類の渦が発生していることや、渦が形成される過程には、火炎風下の複雑な空気の流れが関与していることなども消防研究センターの実験でわかっています。
恐ろしいのは、火災旋風は都心などの住宅街でも発生し、それらが住宅の密集地帯を動き回ることでさらに、回転速度が早まり、火災規模が拡大する可能性です。ビル風が日常的に吹いている場所は十分に気をつけた方がよさそうです。
近くに山がなくても、木々がなくても、いくつかの要因が重なり火災旋風が発生するとたくさんの命が危機にさらされます。関東大震災で東京では約110個の火災旋風が報告されていますので、いかに恐ろしい状態だったか。
想像してみてください。
みなさんのご意見もお聞かせください。
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