米国と台湾「握手」の代償。大国に奪われるTSMC(台湾積体電路製造)と“新冷戦時代”幕開けの予兆

 

そうした流れの中で今週、象徴的な2つの動きがあった。一つはロシアのウラジーミル・プーチン大統領を自国に招いたインドのナレンドラ・モディ首相の動き。もう一つはフランスのエマニュエル・マクロン大統領を国賓待遇で迎えた中国・習近平国家主席の動きだ。

モディは関税に加えてロシア産原油の輸入を理由にアメリカからの制裁に晒されている。一時は、ロシア産原油の取引から手を引く様子も見せたが、ここにきてロシアに再び大きく歩み寄り、笑顔で握手しロシアの兵器購入についても話し合った。

アメリカが面白いはずはない。

そして中国の動きだ。

日本との対立を深めるなか、マクロンに「フランスは対中関係を重視し、『一つの中国』政策を揺るぎなく遂行している」と言わせる抜け目なさを発揮するだけでなく、ギクシャクする欧州委員会(EU)との関係の調整も引き受けさせた。

世界情勢が不安定となるなかでフランスと中国の関係が重要であるとの認識を共有し、「習主席のグローバル・ガバナンスの改革・改善、グローバル経済により均衡をもたらすとした意見に完全に賛同する」という言葉も引き出した。

さらに「中国側との協力を強化し、大国の責任を共に担い(中略)世界の平和と繁栄の促進に貢献したい」との発言も得たのである。

いまや不可逆的に関係が薄まると考えられるアメリカと欧州の隙間にしっかり楔を打ち込み、多極化の流れをフランスとの間にも固め始めたことが伝わってくる。

アメリカ一極から多極化へと向かう流れは加速するばかりだ。

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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