ホンマでっか池田教授が初めて「不眠症」に?眠れないつらさを知った夜に気づいたこと

 

これはリセットしなければと思って起き出して、椅子に座って落ち着いてウイスキーのお湯割りを飲む。時計を見れば午前1時である。こんなことならば、最初から午前1時に寝ればよかったと後悔する。ウイスキーのお湯割りを追加でもう1杯飲んで、これで眠れるだろうとベッドに戻ったのだが、これがやっぱり眠れないのだ。しかし、もうしょうがないので、ベッドで目を瞑っていたが、眠れたのか眠れなかったのかよくわからない状態で、5時に起きて講演に行ったのだ。まあひどい目に遭ったわけだが、眠れない人の苦しみが身にしみてわかった。不眠の癖がついたのか、それから時々眠れない夜が訪れるようになった。

眠れない時は、どうせ眠れないみたいだから、スッと眠れる時と、眠れない時は何が違うのだろうと、つらつら考えてみる。眠れる時は、頭の中が空っぽでほとんど何も考えていない時と、睡眠以外のよしなしごと(例えば、次に書きたい本の漠然とした構想とか、採ったことがない珍品のカミキリムシのこととか、エロいこととか)を考えている時だ。しばらく経つと、知らぬ間に眠りに落ちて、次に目覚めた時にああ眠っていたんだと気づく。眠れないのは、眠ることを考えている時で、いつになったら眠りに落ちるのだろうとか、これはどうも不眠モードに入ったらしいとか、そういったことが頭の中を回り始めると、もういけない。まずしばらくは眠れない。

少し前までは覚醒から眠りへの移行は徐々に起こると考えられていたが、最近の研究では、まるでスイッチを切り替えるように急激に眠りに落ちると言われている。私自身の体験でも、意識のある状態からいつ眠ったか(無意識の状態になったか)はわかった験しがない。眠る直前までは意識があり、直後は意識がないので、今眠ったと意識することは、無意識から意識を振り返ることと同義なので、これが不可能だということはよくわかる。一方、目覚めの瞬間は、意識から無意識を振り返っているので、これは簡単にわかる。

若い時は毎日のように、眠る前に金縛りにあっていた。金縛りはレム睡眠時に起きて、体は眠っている状態だが、意識はあるので、頭で体を動かそうと思っても動かないという実に気持ちの悪いことが起きる。奈落の底に落ちていくような感じがしたり、あるいは、体がすごい勢いで膨張するような感じになったりする。覚醒から金縛りになった瞬間は、頭は目覚めているので、今金縛りに堕ちたということがわかる。極めてリアルな夢を見ることもあり、人によってはこの時に見た夢を現実だと思い込んでしまう。いわゆるせん妄である。

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