オーバーツーリズムに「知らんぷり」
問題は、オーバーツーリズム批判に関する態度で、富士急Gとしては、あるいは関係する政治家、つまり堀内ファミリーと、その他の自民党政治家が「知らんぷり」を決め込んでいることです。
例えばですが、河口湖で「コンビニのローソン」が「映えスポット」になって交通が混乱しているというような「外国人問題」が起きています。ですが、この問題は、
「せっかく河口湖駅にやってきて電車(またはバス)を降りたのに、どこへ行ったら富士山が見えるのか分かりにくい」
ということに過ぎません。分かりやすい案内体制がないので、結果的に駅に一番近くで富士山が見える「ローソン」に観光客が押しかけるだけのことです。そのために、「青い帯のローソンの上に富士山が乗った写真」がバズっていますが、これは結果としてそうなったということです。
せっかく来たのに「富士山を見るにはどうしたら?」という疑問に対して、明確に案内する体制をケチっているだけ、つまりは富士急Gのビジネスが手抜きだから生まれた混乱だと言えます。
トイレ不足を「外国人問題」にすり替え
もっとひどいのは、桜と五重塔と富士山が見える映えスポットで、「外国人が用足しをしている」という「外国人問題」で騒いでいることです。この問題も似たような構造になっています。問題は
「せっかく映えスポットになったのに、マネタイズの仕組みも作らないし、そもそもトイレの用意もしない」
ということです。おかしな話です。外国人が用足ししていると書けば、まるでマナーを知らない野蛮な外国人がヒドい行動をしているように見えます。ですが、話は違うのです。トイレが足りないという、ただそれだけの問題です。そして、どうしてトイレが足りないのかというと、マネタイズの仕組みを作れない、それだけです。
いやいや、あれは神社の問題で、宗教施設だからマネタイズは難しいし、静岡県側なので富士急Gでも手は出せないという反論が来そうですが、確かに具体的なこの一件については、富士急の責任ではないかもしれません。ですが、仮に真面目にビジネスをやろうというのなら、日本的な景色と富士山が撮影できる映えスポットを、しっかり構築して、そこへ誘客することをやっているのかというと、答えはノーです。やっていないのです。
オーナー家が政治に「うつつを抜かして」観光ビジネスについて戦略的に向き合っていないからです。
儲けておいて「外国人ガー」は許されない
ここまでは、まだ良いのです。できる対応を積み重ねて行くしかないのです。問題は、政治家が「自分たちが作った観光産業に弊害が出た」というだけの話について、「外国人ガー」という話に歪曲してゆくのを放置していることです。「どうせ自分の選挙区は排外感情に火をつけたほうが票になる」という安易な計算をしているに違いありません。
そこまでなら全国でやっている悪どい話の一つに過ぎません。それこそ、高市総理も集票を焦って「鹿がどうのこうの」という発言をやってしまった「アレ」です。ですが、富士山問題に関しては、そう単純ではないわけです。地域の政界を牛耳っている富士急G、そのオーナーである堀内ファミリーは、それこそインバウンドで大儲けしているのです。
自分がインバウンドで儲けておいて、そのくせオーバーツーリズム対策をしっかりやらず、起きたトラブルを「外国人問題」にして集票しようという、これはダメだと思います。余りにも話として悪質だからです。ハッキリ申し上げますが、富士山の関係で起きているトラブルは「外国人問題」ではありません。大儲けしておきながら、必要な対策をしない観光産業と政治の問題なのです。
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