政権批判が支持率低下を招く「蟻地獄」に直面している野党
こんな風潮を利用した高市首相の「情報戦」が、予算審議の短縮要請だった。予算審議に70~80時間かけるというのは古臭い政治の慣行であって、永田町の論理そのもの。囚われる必要は全くない。年度内に予算を成立させることこそが、国民の期待に応えることだ。そんな高市首相の姿勢に共感し、政治改革の旗手のごとくイメージする人々もいるだろう。
むろん、高市首相はリスクのある論戦を極力回避し、SNSや街頭演説など一方通行の発信を優先する傾向がある。野党から追及される時間が少ないほど都合がいい。だが、この「情報戦」の巧妙なところは、それとともに、「守旧的な野党vs改革志向の高市政権」というイメージをつくり上げる効果を狙っていることだ。
同じような戦略が埋め込まれているものが他にもある。高市首相が消費税減税や給付付き税額控除の実現に向けて設置をめざす超党派の「国民会議」がそれだ。
もともと消費減税は野党が言い出したこと。高市首相はそれを衆院選における自民党の公約として取り込み、「争点つぶし」に成功した。それなら首相の決断で政府案として国会に提出すればいいのに、わざわざ与野党と有識者による「国民会議」なるものを設置して「結論を出す」と言う。
しかも、国民会議と言いながら、中道、国民民主党、チームみらいには参加を呼びかけ、参政党などその他の野党を締め出そうとする。このやり方が何を意図しているのか判然とせず、中道、国民は慎重な構えを示している。
財務省や党内の抵抗勢力を説得するのに「国民会議」は都合がいいのかもしれないが、野党にとってはこの上もなく厄介だ。参加したら「高市政権の補完勢力」と言われ、拒否すれば「減税を訴えていながら、なぜ議論の場に加わらないのか」と批判されかねない。
2月24日に開かれた衆院本会議の代表質問で中道の小川淳也代表は「国民会議の設置に本気なら党首会談を呼びかけてほしい」と迫ったが、高市首相は取り合おうとしなかった。敵方のペースには乗らないということだろう。
この通常国会、本来なら、高市氏をめぐる統一教会問題などを追及すべく野党は手ぐすね引いていたはずである。ところが、世間の関心はそこに向いていかない。原因として最も大きいのが、高市首相の「台湾有事」発言に端を発する中国政府の執拗な高市批判ではないか。
いかに中国から責めたてられようと相手にせず、毅然とした態度を崩さないというのが高市戦略だ。中国側の“言いがかり”ばかりが大きく報じられ“外圧”への反発心が日本国内で燃え盛るほどに、内政のさまざまな問題が小さく見えてくる。
“裏金議員”たちへの怒りはもはや冷めてしまったのか、高市首相が彼らを要職に起用してもさしたる不満の声は世間から聞こえてこない。むしろ、「政権批判」をすればするほどSNSで反発の声が広がり、政党支持率が下がる蟻地獄に野党は直面している。にわかづくりの中道は方向感を失い、参院の立憲民主と公明が合流する見通しも立っていない。
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