氷河期世代の起業と改革の試みが潰された日本のデジタル化の現実
その延長で、氷河期世代がデジタル世代として、古い仕事の進め方だけでなく、自分たちを一旦は苦しめた年功序列や新卒一括採用などを駆逐して、実力主義でフレキシブルな組織を作ることもできたはずです。自分たちを氷河期に追いやった日本の制度を、全く新しい産業構造を作り上げることで乗り越えるというわけです。
例えばですが、シリコンバレーで起業し、全く新しいジャンルの事業をグローバルな巨大ビジネスにした人たちがいます。この人々は、例えばGoogleを起業したセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジなどはどちらも1973年生まれで、団塊2世、正に日本の氷河期世代に当たります。国際的に見ても、氷河期世代はデジタルで「世界を変える」世代であったはずです。
では、日本の氷河期世代は起業家精神が脆弱だったのかというと、決してそうではなかったのだと思います。様々なチャレンジが日本でも行われていたのは間違いありません。ですが、90年代から2010年代にかけて、多くの試みがアナログ世代によって警戒され、そして潰されていったのだと思います。
アップルやアマゾンなど外資がやってくると、EC(電子商取引)も電子書籍も進む、けれども国内で同じようなデジタル化を進めようとすると、旧体制が潰しにかかる、この時期の日本ではそうした「負け戦」が繰り返されていたのでした。結果的に、DXは進まず、生産性はどんどん競争力を失っていったのでした。
今、ようやく世代交代が進む中で、DXにしても、AIの利用についても10年前とは比べ物にならない勢いで日本社会は変わりつつあります。ですが、こうした変化が実現するまでに、氷河期世代による苦しい戦いの時期があったことは記憶しておくべきなのだと思います。
そう考えてみると、例えば竹中平蔵氏の派遣労働に関する規制緩和については、少なくとも紙とハンコによる事務作業のコストダウンに寄与することで、間接的にDXを妨害したとも言えます。その意味では、全く罪がないとは言えないのかもしれません。
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