「景気が悪い中国」は本当か?イラン戦争でEV覇権と技術革新が加速する隣国の真実

 

AI人材は月収46万円、文系は厳しい現実

ロボットに仕事を奪われる未来は確かに悩ましいが、それ以前の問題として求人の現場では、すでに「理高文低」の傾向は顕著となり、技術革新の変化の影響は避けられない状況のようだ。 この視点で中国の求人状況を見てみたいのだが、その前にまず「景気が悪い中国では失業者があふれている」という日本に定着した印象を修正しておきたい。

まず16歳から24歳の失業率は16.1%(2026年2月時点)と実際に高い。 これは大卒の人数が多すぎるという別の問題があるのだが、ここでは一旦横に置いておこう。知っておいてほしいのは全体の失業率で、これは2025年の実績では5.2%だ。 全体の数字が若年層失業率から大きく下がるのは、30歳から59歳という労働人口の大部分を占める層の失業率が4.2%と比較的安定した低水準にあるからだ。

これを踏まえた上で求人の現場を見てゆくと、明らかに人手不足に陥っている業種もあり、文系の場合それは介護人材に集中している。理系では非常に多くの業界で人材の奪い合いが起きているようだ。 中国共産党中央機関紙『人民日報』は3月18日、「この種の人材が不足 平均月収は2万元(約46万円)」という記事を配信している。 記事によれば〈今年の傾向として人工知能(AI)、クラウドコンピューティング、ビッグデータなどの業界で、「人材獲得競争」が起きている〉と報じている。

理系で技術があれば引く手あまたで、新人時代からけっこうな高給にも恵まれるというわけだ。 一方の文系の人材はどうかといえば、前途はなかなか厳しいようだ。 冒頭でイラン戦争がEV化を推進する駆動力になるという話をしたが、これと同じように、消費の低迷によってサービス産業が窮すれば、人件費を抑えるためにもロボットが仕事を代替する機会が増えると予測されるからだ。 なかなか大変な世の中だが、中国の現在は世界の未来かもしれない。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年3月29日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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