日傘のUVカット率や接触冷感シーツのひんやりとした冷たさ。そうした目に見えない「機能」の寿命って、どのくらいだと思いますか?
見た目では劣化が分からないからこそ、本来の性能を発揮できないまま使い続けているケースは少なくありません。
今回は、判断の難しい「機能の寿命」を専門家にリサーチ。道具を最高の状態で使い切り、次へ繋ぐための「サイクル」のあり方を紐解きます。

第3回のテーマは「高機能インナー」。体に直接触れて、汗や蒸れを逃がす働きをする夏場の重要アイテムのサイクルについて、専門家であるグンゼに話を伺ってきました。
見落としがちな機能劣化のサイン

──さっそくお聞きしたいのですが、高機能インナーの「機能的な寿命」はどれくらいで訪れるものなのでしょうか? 「破れていないから」と何年も着続けている人が多い印象です。
藤本さん(グンゼ 商品企画課、以下敬称略):正直にお伝えすると、着用頻度や洗剤、手入れの仕方で個人差が大きいため一概に何年と言い切るのは難しいところです。糸そのものの性能による機能は比較的長持ちしますが、表面へのコーティングなどの後加工による機能は摩擦や洗濯の影響を受けやすく、劣化が早い傾向にあります。
もちろん機能開発時には一定の耐久性を考慮して設計されていますが、メーカーとしての希望や推奨でいえば、1シーズンでの買い替えをご提案しています。
──1シーズンですか! 2〜3年前のインナーをまだ着ていました。買い替えのサインを見逃さないために、自宅でできるチェック方法はありますか?
東浦さん(グンゼ MD戦略部、以下敬称略):生地がヨレたり薄くなったりという分かりやすいサイン以外だと、大きくふたつのポイントがあると思います。
ひとつ目は洗濯しても落ちないニオイがある場合。繊維の奥深くに汚れや皮脂が蓄積すると、雑菌の温床になります。洗濯して乾かしたはずなのに着用するとすぐニオイが戻る場合、防臭・抗菌機能がすでに低下している可能性が高いです。
ふたつ目は生地のガサつき(手触りの変化)を感じる場合。綿を多く含んでいる生地の場合、摩擦で繊維が絡まってささくれたり固まってきてしまうことがあります。こうなると繊維はかなりダメージを受けた状態になっています。
──なるほど。見た目以外でも「洗濯してもニオイが取れなくなったら」というのはかなり分かりやすい基準ですね。さっそく手持ちのインナーをチェックしてみようと思います!
寿命を縮めるNG行動と長持ちさせるケアの方法

──せっかく買ったインナーの機能を長持ちさせるために、やってはいけないNG行動はありますか?
藤本:意外とやりがちなのが、柔軟剤の過剰使用です。柔軟剤は繊維の表面をコーティングして肌触りをよくする働きがあるため、過剰に使用してしまうと、インナー本来の吸水性や通気性を阻害する場合があります。
東浦:あとは、「ネットに入れずに洗う・直射日光での長時間の天日干し・高温(アイロン・熱湯での洗濯)」の3点も寿命を縮めやすいポイントです。
酷暑でインナーの需要はどう変わった?

──この数年の酷暑で、ハンディファンや日傘のような暑さ対策グッズの需要が爆発的に伸びていますが、高機能インナーの市場やユーザーの意識についての変化はありますか?
藤本:はい。弊社でも定点調査を行っているのですが、特に2024年に「アセドロン」というブランドを立ち上げる際、大きな意識調査を実施しました。その結果、夏向けの高機能インナーを使っている人の約7割が「実は不満を持っている・満足していない」という実態が分かったんです。
──7割もですか! 意外ですね。皆さん具体的に何に不満を感じていたのでしょうか?
藤本: 冷感を謳う商品は世の中に溢れていますが、実際に汗をかいた時のベタつきや蒸れといった「汗の悩み」そのものが解決されていないという声が非常に多かったんです。これまではひんやり感(冷感)を求めるニーズが主流でしたが、ここ最近はそれだけでなく、着用時の汗や湿気を根本的に逃がしてくれる機能も求められているように感じています。
──確かに、着た瞬間だけ冷たくても、汗をかいて蒸れてしまっては意味がないですもんね。「アセドロン」の反響はいかがですか?

東浦:リリース以来非常にご好評をいただいておりまして、販売も好調に推移しています。2024年のブランド立ち上げから着実に支持を広げており、それだけ夏場の暑さ対策に対するお客様のニーズが高まっているのだと実感しています。
代表的なインナーシリーズ「in.T」と「アセドロン」
──お客様からの評価も高いんですね。グンゼさんといえばTシャツ専用インナーの「in.T(インティー)」も大ヒットしていますが、「アセドロン」とはどう役割が違うのでしょうか?

藤本:解決しようとしている悩みの切り口がそれぞれ異なりますね。
「in.T」はTシャツを快適に着るための機能性を追及したシリーズで、襟・袖・裾を切りっぱなしにするカットオフ技術でTシャツにラインが響かず、首元や袖口からインナーが見えません。さらに大きめの脇汗パッドで、Tシャツへの汗ジミや透け、汗による黄ばみを対策します。

「アセドロン」は汗と蒸れの解消に特化したシリーズで、繊維に大きな特徴があります。繊維の中に微細な隙間を多数形成させることで、汗や湿気を一気に吸い上げ、汗を素早く吸い取り外に逃がす仕組みになっています。
──珪藻土マットのような構造を糸で再現しているんですか!?

提供:グンゼ
アセドロンに使用されている糸の断面図
藤本:そうなんです。最初は本物の珪藻土を糸に混ぜ込もうとしたのですが、自然のモノなのでどうしてもうまくいかず(笑)。試行錯誤の末に微細な隙間をたくさん作った糸構造を開発しました。汗を大量にかいた後でも「さらっとした肌ざわり」が持続するため、肌離れがよく、ベタつきにくいです。
「the GUNZE」というもうひとつの選択肢
──今回の連載では「手放したあとのサイクル」もテーマにしています。役目を終えたインナーの「正しい循環」について、グンゼさんとして取り組まれていることはありますか?
藤本:肌着という性質上、衛生面の問題から着用済みの直接回収・リサイクルは業界全体としてハードルが高いのが現状です。その代わり、製品パッケージの脱プラスチックや環境配慮型原料の採用を積極的に進めています。また、グループ会社で行っている「緑化事業」を通じてCO2吸収量を増やすなど、事業全体でカーボンネガティブへの取り組みを行っています。
──最後に、グンゼ社員が推す「おすすめのインナー」を教えてください。

東浦:今回取り扱っていただいた2製品以外だと、直営店限定ラインの「the GUNZE(ザ グンゼ)」をおすすめしたいです。綿100%でありながらく分子レベルで綿の質をアップデートする独自技術(改質)を施しており、洗濯を繰り返しても通常の綿より吸湿性が高く、白さが長持ちし、汚れが落ちやすく、消臭効果が長続きします。化繊が苦手な方にはぜひ試していただきたいです。
──分子レベルでの改質ですか! 機能性インナーはどうしても化繊頼みの印象でしたが、綿100%でそこにアプローチしているのすごいですね……。素材の仕組みや、ケアの方法まで、参考になるお話をありがとうございました。
まずは手元のインナーのセルフチェックから!

「破れていないから」と何年も着続けてしまいがちな高機能インナー。繊維に蓄積した皮脂やヨレによって、本来の吸汗性や防臭機能は少しずつ損なわれていってしまうことが今回の取材で分かりました。
だからこそ、柔軟剤の過剰使用を避けたり洗濯ネットを使ったりと、日々のちょっとしたケアで機能を正しく引き出してあげることが大切です。
生地が薄く痩せ細ってしまったり、今回教えてもらった買い替えのサインが出ていたりする1枚があれば、それは新しい快適さを得るタイミング。本来のポテンシャルを発揮できる最高の状態でインナーを身につけることは、蒸れの不快感を減らすための近道かもしれません。
残暑がまだまだ続く8月。引き出しに眠るインナーたちの機能がまだ生きているかを、まず確かめてみませんか?
>>アセドロン特集ページ【グンゼストア】
>>in.T特集ページ【グンゼストア】
Text and Photographed by Motoki Taguchi
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提供元:ROOMIE









