北朝鮮との交渉において、日本はどのようなカードを持っているのでしょうか。拉致問題の解決が長期化する一方、北朝鮮を取り巻く国際環境は大きく変化しています。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』では、著者で国際政治経済学者の浜田和幸さんが、戦前の日本統治時代に作成された地質資料などに着目し、それらが北朝鮮との交渉においてどこまで有効なカードとなり得るのかを考えます。
日本は北朝鮮に対する交渉カードを活かせず
ぶっちゃけ、日本は拉致問題を解決する上での貴重な交渉カードを「宝の持ち腐れ」にしてしまいました。
戦前の日本統治時代に朝鮮総督府などが作成した詳細な地質図や探査データは、北朝鮮の北部山岳地帯に眠るマグネサイトやタングステン、鉄鉱石などの位置を正確に記録した貴重な資料です。
国連主導の経済制裁を受け、前途多難の北朝鮮ですが、豊富な地下資源の開発ができれば、間違いなく豊かな社会に変身することが可能になるでしょう。
高市首相は、拉致問題を「国家の主権と国民の生命に関わる最優先課題」と位置づけていますが、その解決に向けた具体的なアプローチはできていません。
北朝鮮にとっては日本が地下資源の開発に必要なデータや技術、資金を提供してくれれば、拉致問題の解決は格好のディールになります。
北朝鮮は過去、地下資源と拉致問題をセットで解決しようとの提案を水面下で繰り返していましたが、日本政府は効果的な交渉をできないままでした。
日本政府の基本方針は、2002年の日朝平壌宣言に基づき、「拉致・核・ミサイル」の諸問題を包括的に解決した上で国交正常化を行い、その後に過去の清算としての「経済協力(数千億~1兆円規模とも言われる資金援助)」を行うというもの。
もし拉致問題が解決に向かい、国交正常化の交渉が本格化すれば、日本が提供する経済協力資金を使って「北朝鮮の地下資源を日朝で共同開発し、日本企業が買い取る」というスキームは非常に有効なメニューになります。
しかし、日本政府が決断を先送りしたため、北朝鮮は友好国である中国のサポートを受けて鉱物資源の近代的な探査・採掘を行うようになりました。
また、本年5月には、露朝軍事同盟の緊密化を背景に、ロシアの地質調査船が北朝鮮の排他的経済水域内で大規模な石油・天然ガス探査を実施。
つまり、北朝鮮はすでに中ロの最新の衛星データや探査技術を取り込んでおり、日本が持つ「過去のデータ」の相対的な価値は著しく低下してしまいました。
北朝鮮に圧倒的に不足しているのは、データではなく「採掘するための電力・重機」「精錬するための先端技術」そして「輸送するための鉄道・港湾インフラ」です。
「北朝鮮には数百兆円~数千兆円規模のレアメタルが眠る」との報道もありますが、これは国際基準の調査を経ておらず、推定埋蔵量に過ぎません。
現状では北朝鮮が中ロの傘下に完全に組み込まれつつあるわけで、日本のデータは埋もれたままで終わりそうです。
ぶっちゃけ、高市首相には「拉致被害者を全員帰して日本の巨額の経済支援(資源の共同開発を含む)を受け入れ、国家の発展を可能にするか」と、金正恩総書記に直接迫る、まさにタフなトップ外交ができるかどうかが問われています。
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