5月13日、楽天モバイルは目玉としてきた月額「ゼロ円」で利用できるプランの廃止を発表。契約数は4月から6月で23万件減少したことが明らかになりました。契約の際にスイッチングコストをかけてくれたユーザーを簡単に手放したことに疑問を投げかけるのは、メルマガ『 石川温の「スマホ業界新聞」 石川温の「スマホ業界新聞」 』著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。値上げするにしてもサブ回線として維持させる値付けは可能だったはずで、採用していればKDDIの障害を受けたサブ回線需要も取り込めたのではないかと指摘しています。
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楽天モバイル、ゼロ円プラン廃止で契約者23万減──逃した魚は大きかったのか
楽天モバイルの最新の契約者数が明らかになった。6月末現在で546万契約と、4月末現在と比べて23万件、減少した。理由は「ゼロ円プラン」の廃止だろう。三木谷浩史会長は「解約ユーザーの8割はゼロ円ユーザー」だと語る。23万件の純減ではあるが、当然のことながら、新規契約者もいるわけで、実際に楽天モバイルに愛想を尽かせて解約したユーザーはもっと多い。
この契約者数は楽天モバイルが想定するよりも多いのか、少ないのか。そのあたりを三木谷会長に尋ねたが「当然、ゼロ円だったユーザーや、正直、全く使ってなかったユーザーもいた。ある意味一定の離脱は致し方ない」とはぐらかされてしまった。
確かに短期的に見れば、回線を維持するためだけだったり、1GB以下しか使わないという、利益をもたらさないユーザーを切るというのは経営的には正しいことなのかも知れない。
しかし、これらのユーザーはわざわざ新規契約の手続きをしてくれ、本人確認書類なども提出してくれた人たちだ。スイッチングコストを負担してまでも楽天モバイルに加入してきてくれた人を他社に移行させてしまうのはなんだかもったいない気もしなくもない。もうちょっと踏ん張って、1GB以上を使わせる努力もできたような気がする。
実際のところ、ほとんどのユーザーがメインではなく、サブ回線として契約しているのだろう。KDDIの通信障害によって「サブ回線需要」というものが出始めてきているだけに、何とももったいない。ゼロ円といわないまでも、1GB以下250円ぐらいの値付けであれば、他社にもまだまだ勝てる値付けであるだけに、流出するユーザーはグッと減ったのではないだろうか。
流出したユーザーに対して、三木谷会長は「楽天モバイルは進化している。これから5Gも本格化するし、最先端の技術を投入している。楽天ポイントの獲得率も大幅に上げた。総合的に見て、また時期を見て楽天モバイルを検討していただければと思う」と語ったが、一度、見切りをつけたユーザーが同じブランドを選ぶというのは至難の業だ。
実際、過去にはソフトバンクの通信品質がイマイチだった頃、一度、ソフトバンクを辞めたユーザーがまたソフトバンクに帰ってくることはほとんどないとされていた。
ただ、一方で、あるMVNO幹部は「ゼロ円で釣ったユーザーは定着しない」と語る。ゼロ円ユーザーに早々に見切りをつけたのは正しかったのか。それとも、もうちょっとゼロ円ユーザーが優良顧客に育つまで待つべきだったのか。この判断が正しかったのかがわかるのは、もうちょっと時間がかかるのかも知れない。
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