AIに相談してはいけない心の悩みとは?精神科医kagshunが語るAI時代のメンタルヘルスと未来への備え

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現役精神科医として、SNSやVoicyで発信を続ける加賀谷隼輔さん。活動を通じて、精神医療への偏見をなくすために声を上げ続けてきました。

そんな加賀谷さんが今、最も注目しているのが「AIとメンタルヘルス」です。AI技術の発展が私たちの心にもたらす影響について、メールマガジン『Dr.kagshunのメンタル×AIラボ』を通じて体系的な発信を始めました。

Z世代の34%が「誰にも相談したことがない悩み」をAIに打ち明けているという衝撃的なデータ。AIが仕事を代替した後の世界で、私たちはどう心を保てばいいのか――精神科医の視点から見た「AI時代を生き抜くための知恵」について、加賀谷さんに話を聞きました。(聞き手・MAG2NEWS編集部)

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【関連】12月11日開催!ウェビナー『AIで整える、心と脳のセルフケア 〜精神科医kagshunが教える、ストレス社会を生き抜く新しいメンタルケア〜』

偏見との戦い――精神科医として発信を始めた理由

――本日はインタビューをお受けいただきありがとうございます。まず、加賀谷さんが発信を始められたきっかけを教えていただけますか?

加賀谷:私が目指しているのは、「精神疾患の患者さんが生きやすい世界にすること」です。精神疾患は目に見えない病気なので、医療現場でさえ偏見が強い領域なんですね。

救急外来でリストカットをした方や大量服薬の方が運ばれてきても、「また精神科の奴らか」みたいな扱いを受けることがまだあるんです。でも、リストカットは単にまわりの気を引きたいからやるのではなくて、切った瞬間に脳からエンドルフィンが出て、一時的に苦しみが和らぐという面がある。ご本人なりの「つらさをやり過ごすための手段」になってしまっていることが多いんです。

医療者の中でもこういう偏見があるわけですから、世の中的にはもっと偏見があります。症状自体もつらいのに、さらにまわりからは一段下に見られてしまうというようなこともある。そんな人たちが少しでも生きやすくなるように、「あなたのせいじゃないんだよ」ということを伝えたくて、SNSでの発信を始めました。

Z世代の34%が「誰にも話せないこと」をAIに打ち明ける時代

――メールマガジン第1号で紹介されていた「Z世代の34%が誰にも話したことがないことをAIに打ち明けている」というデータが興味深かったです。先生から見ても、これは驚きの数字でしたか?

加賀谷:それはそうだろうなって気がしますね。精神科に来られる方は氷山の一角ですし、メンタルヘルスのことを外に出すのは恥ずかしいとか弱いと思われるという風潮は、日本では特に強いです。

欧米諸国と違って、日本はカウンセリングを気楽に受けるという文化が成熟していません。どこに行ったらいいかわからないし、誰に聞いたらいいのかもわからない。そういう状況であれば、AIは相当入ってきやすい国民性が実はあるのかなと思っています。

――AIで相談されている内容と、実際に精神科で相談される内容は違いがあるんでしょうか?

加賀谷:異なる可能性がありますね。よりプライベートな話、精神科医やカウンセラーにも言えない本当の本心みたいなものも、AIは受け止めます。ジャッジメントをしないので、内容もかなり異なっていると思います。受け皿としては非常に大きいのかなと。

AIに相談していいケース、危険なケース

――こういうケースはAIに相談してもいい、あるいは使わない方がいいという線引きはありますか?

加賀谷:やはり「死にたい」というような深い悩みは危険が高いです。AIは共感して「わかるよ」と言ってくれますが、そこで止まってしまう可能性があります。リアルな人間であれば「身近な人に相談してください」「病院に通うべきです」と言ってくれますが、AIはそこでの会話で、何とか解決しようとしてしまうんです。

今のところおすすめなのは、病院にかかる手前の人たち、セルフケア領域の部分で使うことです。病的な部分を踏み越えてしまっていると、間違ったことを言われた時に鵜呑みにしてしまうリスクがあります。

病気の前の段階、治療じゃない部分での使用が今のところのおすすめです。ただ、その線引きは本人にはなかなか難しいかもしれません。

AIが仕事を奪った後に起きる、新たな精神疾患

――AI時代の到来で、新たな精神疾患が生まれると考えていますか?

加賀谷:うつ病はすごく増える可能性があります。人間はストレスが少なすぎてもうつになるんです。

例えば、極端に刺激の少ない環境に閉じ込められると、短期間で不安が強くなったり、思考がまとまりにくくなったりすることが知られています。仕事や家事、「今日やらなきゃいけない」というめんどくさいことの摩擦に向き合っているから、人は割とメンタルを保っているんです。

それをロボットやAIがやってくれるようになった時、新たな課題を自分で見つけて進める人はいいんですが、受け身で消費するだけの状態になった多くの人たちは、おそらくあっという間にうつ病になります。

依存症も増えるでしょう。AIへの過度な依存や、アルコール・薬物といった依存症……こういった容易に自分を楽しくさせるものにはまっていく可能性が高いです。

あとは、対人恐怖症ですね。最近の若い人には、電話をかけることが怖い・できないということが増えています。同じように、コミュニケーションを取ることへの不安はすごく高まると思います。人と直接話したり向き合わなくてよくなるので、摩擦がぜんぶなくなったツルツルの世界になってしまう。

メンタルヘルスのレジリエンス(回復力)がすごく下がってしまって、親が亡くなるなどの大きな衝撃を受けた時に、容易に折れてしまう。実際、若い方の自殺は、SNS時代と同期してどんどん増え続けているんです。

――メールマガジンを読み続けることで、読者さんにはどんなメリットがありますか?

加賀谷:おそらく、物質の時代から精神性が重要な時代へと移っていきます。AIが仕事をすべてやるようになって、労働の価値が薄まっていった時、人の心をどう保つかの方が重要になってきます。

今までは仕事をがんばっていれば何とか保てたメンタリティが、崩れる可能性がある。そういった大きな流れの中で、AIが来る未来を先取りして、メンタルヘルスへの影響やどう対策したらいいのかを早めに知っておくことで、手を打つことができます。

例えば、今のうちに趣味や人間でしかできないことを始めておくとか、そういう対策が取れるようになります。お子さんを育てている方は、AIから子どもが受けるメンタルヘルスの影響を今から知っておくことで、子どもとAIを使うときの約束ごとを家庭で決めるなど、早めに対策を打つことができます。

早め早めに対策を打つことができるというのが、私のメルマガを読んでいただくことの1つのメリットだと思います。

ロボットと暮らす未来――精神科医だからこそ語れること

――メールマガジンではどんな内容を発信していくのか、今後の構想を教えていただけますか?

加賀谷:AGI(汎用人工知能)ができるんじゃないかと言われている世界で、仕事を人間がやらなくて良くなったあと、自分の役割を失ったあとに、どうやって「自分である」ことを肯定すればいいのか、そういった問題を深掘りしていきたいです。

あと、実は私、最近発表された家庭用ヒューマノイド「Neo」を注文したんです。1Xという会社の人型ロボットです。それがうちに来ることになります。

私の子どもはまだ1歳なんですが、ロボットと一緒に家で育っていくことになります。その中で、ロボットに心が宿るかどうかは別として、ロボットと暮らしていく人間がどういう心理的な価値をそのロボットに持っていくのか。もしそのロボットを廃棄しなきゃいけなくなった時、その喪失をどう受け止めていくのか。人を失った時の悲しみとどう違うのか。

そういった哲学的なところも含めて考察していきたいですね。他にはないようなことを、自分だったら書けるのかなと思っています。

――最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

加賀谷:一言で言えば「未来、一緒に見ませんか?」ということです。

私自身が「未来思考」な人間で、これからがどうなっていくのかということに非常に関心を持っています。変化の時代だからこそ、ただいたずらに怖がるわけじゃなくて、どうなっていくのかをみんなで予測して推測して、それに備えてこころ・メンタルを守りながら一緒に楽しんで未来を作っていこうよ、という想いがあります。

精神科医としての立場ではありますが、その一助になれたら嬉しいです。読み続けることで、必ずマインドが変わります。AI時代を生き抜くための自衛策として、ぜひメールマガジンを活用していただければと思います。

——本日はお時間をいただき、ありがとうございました!

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12月11日開催!ウェビナー『AIで整える、心と脳のセルフケア』

AIが仕事を変えたように、いま「心のケア」の形も変わり始めています。ChatGPTをはじめとするAIツールを上手に使えば、ストレスを整理し、感情を整える“新しいセルフケア”が誰にでも実践できます。本ウェビナーでは、精神科医 kagshun(加賀谷隼輔)先生 が、脳科学とAIを融合させた「心を整える方法」をわかりやすく解説。テクノロジーと人間のこころの関係を、科学的かつ実践的にひもときます。

<このウェビナーで学べること>

  • 「心の疲れ」は脳のどこで起きているのか?
  • ストレス反応を脳科学的に理解する方法
  • ChatGPTなどAIを活用した感情整理とセルフカウンセリング
  • 今日からできる、脳を整える生活習慣とマインドセット
  • AIを依存ではなく支えに変えるメンタルデザイン

<開催概要>

日時:2025年12月11日(木)20:00〜21:30
形式:Zoomウェビナー(オンライン開催)
参加費:一般 6,600円(税込)/有料メルマガ読者 5,500円(税込)
初月無料のメルマガ読者に送られるコードを入力すれば5,500円に値下げされます
メルマガお申し込みは「こちら」から
主催:株式会社まぐまぐ
アーカイブ配信:あり(12月31日まで視聴可能)
当日に時間がない方でも、あとからゆっくり見ることができます

<こんな方におすすめ>

  • 忙しさの中で“心の疲れ”を感じている方
  • 不安・不眠・ストレスを軽減したい方
  • ChatGPTなどAIを活用したセルフケアに興味がある方
  • 精神科医が語る、科学的なメンタルケアを学びたい方

image by:Andrey_Popov / Shutterstock.com

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