正恩の妹・金与正が突然「失踪」の怪。いま北朝鮮の権力中枢で何が起きているのか?

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北朝鮮の権力中枢にいたはずの金与正(キム・ヨジョン、正恩の妹)が、最高人民会議の国務委員会人事から突然姿を消しました。党内では副部長から部長へ昇進した直後の出来事であり、その異例さが波紋を広げています。代わって浮上したのは趙甬元(チョ・ヨンウォン)で、「北朝鮮は外に向けて話す気がない」という意思表示とも受け取れます。今回のメルマガ『キムチパワー』では、韓国で教育関係の仕事に従事する日本人著者が、この人事の背景と金正恩一極集中体制の行方を、現地での報道を要約しながら詳しく読み解いています。

北朝鮮の金与正、突然「失踪」。

北朝鮮の権力中枢の一人と見なされてきた金与正(キム・ヨジョン)労働党総務部長が、国務委員会の人事から突然姿を消し、その背景をめぐる解釈が相次いでいる。金総務部長の党内職位は昇進したものの、国家機関からは外れるという異例の人事が行われたことで、権力構造変化のシグナルだという分析も提起されている。

去る22日、北朝鮮は平壌で最高人民会議第15期第1回会議を開き、国務委員会と内閣の人事を断行した。この場で金正恩総書記は国務委員長に再選され、主要国家機関の人事も新たに構成された。会議には最高人民会議代議員と党中央委員会、内閣、軍関連機関の人事が登場した。

今回の人事で最も目立つ変化は、金与正労働部長の国務委員会からの除外だ。彼女は2019年以降、国務委員を務めてきたが今回は名簿に含まれなかった。特に最近の労働党大会で副部長から部長へと昇進した直後であることから、職位上昇と同時に国家機関から外れた点が注目される。

国務委員会は北朝鮮の対外活動において重要な役割を担う組織だ。中国のように党中心の外交が可能な国家と異なり韓国やアメリカなどとの関係では国務委員会が前面に出る構造となっている。こうした点から対外メッセージを主導してきた金与正労働部長が同機関から外れたことは、予想外だという評価が出ている。

「二つの国家」政策との関連

一部では、北朝鮮が「二つの国家」政策を推進し、対南組織を整理してきた流れと関連付けて解釈する向きもある。対南機能の縮小に伴い、既存の役割が再編された可能性があるというものだ。この政策は憲法への反映まで検討されるなど、北朝鮮の対外戦略変化と絡む核心事案として挙げられている。

一方で、党内役割の拡大に伴う自然な調整だという見方もある。金与正が総務部長として党運営全般を担うことになり、国家機関の役割との重複を減らした可能性が提起されている。党中心の権限が大きくなった分、役割の分離が不可避だった可能性があるという分析だ。

一部では、国務委員会の構成基準自体の変化の可能性も取り沙汰されている。同機関は通常、内閣と党、国家機関を代表する人物で構成されるが、総務部長の役割がこれに直接合致しない可能性があるという点から、除外の背景として解釈されてもいる。

趙甬元の台頭が意味するもの

一方、今回の最高人民会議では権力構造の再編も同時に行われた。既存の重鎮人事が退いた座を側近人事が埋める様子が見られた。特に趙甬元(チョ・ヨンウォン)が最高人民会議常任委員長に選出され、核心権力として浮上する様相だ。

国務委員会の構成でも一部人事が交代し、新規人物が追加されるなど変化が感じられた。外交と国防関連の人事は維持されたものの、組織と幹部管理を中心とする人物が前面に配置されたという分析が出ている。

今回の人事を通じて、北朝鮮の権力構造が金正恩中心にさらに再編される様相が鮮明になったという評価が相次いでいる。金与正の役割変化もまた、こうした大きな流れの中で解釈される必要があるという分析が出ている。【ここまでモバイルTV パク・ソヒョン記者コラムベース】

趙甬元の台頭は一言で言うと、「北朝鮮が外に向けて話す気がない」という意思表示ともとれる。韓国にとっては、対話の糸口がさらに見えにくくなった点や劇的な挑発よりは静かな無視が続く可能性が強くなったと考えてもいいだろう。とまれ、あの金与正が権力構造の座から降ろされたということは、当然のことだが金正恩への一極集中がさらに強まっていくことを意味する。

image by: Kim Jinseok (Official photographer of the Blue House, Republic of Korea), Blue House (the executive office of the Republic of Korea head of state, the President of the Republic of Korea) / KOGL Type 1

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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