「見に行った時に『あ、私もやりたい』なんて口を滑らせて」。そんな一言から実現した初のコメディ挑戦に、ベテラン女優が「今、試練の真っただ中」と苦笑します。
このたび、俳優の大森ヒロシさんが主催する「大森カンパニープロデュース」の、役者による大人の芝居コント「更地」シリーズに、NHK『太陽の子』主演や『大好き!五つ子』等で知られる女優の長谷川真弓さんが初出演。
今回の「更地」は、1981年に160万枚を売り上げたシングル『ハイスクールララバイ』を歌った、お化け番組『欽ドン』の企画ユニット「イモ欽トリオ」のお三方がご出演されるとのこと。そこで、都内某所でおこなわれている舞台稽古にMAG2 NEWS編集部・田端がお邪魔し、長谷川さんへのインタビューと稽古の様子を見学して参りました。

舞台『更地にイモ欽 そして歌〜更地23〜』2026年9月9日〜16日、下北沢 小劇場B1 大森カンパニープロデュースVol.58
8歳で芸能界入りし、映像から舞台まで長いキャリアを重ねてきた女優・長谷川真弓さんが、なぜ今コメディに挑むのか。稽古場での焦りや緊張、そして演出家・大森博さんの「諦めない」姿勢への信頼まで、いろいろと率直に語っていただきました。
「私もやりたい」と口を滑らせ(?)実現した初コメディ!
──本日はよろしくお願いいたします。まずは、コント初舞台おめでとうございます(笑)。東京・下北沢の「下北沢 小劇場B1」でおこなわれる大森カンパニープロデュースの芝居コント「更地」にご出演されるとのことですが、今回の舞台について簡単に教えていただいてもよいでしょうか?
長谷川真弓(以下、長谷川):こちらこそ、宜しくお願いします。私が大森カンパニーに初めて出演したのは、2025年11月に上演された「人情喜劇」というシリーズの「家族、片恋」という舞台でした。今回の「更地」はコメディで、オムニバス形式といいますか、まったく関係の無い複数のコントがずらっと並んでいる構成なんです。
「更地」は大森カンパニーの中でも、とても人気のあるシリーズで、私が観に行ったときに「あ、私もやりたい!」なんて口を滑らせてしまって(笑)。それで今回、本当に出演することになったのですが、今はものすごい試練の中にいます(笑)。大変です。私、コメディは初めてなので。
──子役の頃からご活躍されている長谷川さんでも、コメディの舞台は初めてなんですね。
長谷川:前回は「人情喜劇」ということで、ひとつのお話がずっと続いていくお芝居の中の喜劇でしたが、今回は本当のコメディなんです。私は「コメディができる人はお芝居が上手な人だ」と思っているんです。でも、私はそこが苦手分野なので、ぜひやってみたいと口を滑らせちゃって(笑)。ですから、もう本当に苦労しています。

長谷川 真弓(はせがわ・まゆみ) 女優。1970年代より数多くの映画・ドラマに出演。「太陽の子」「父の詫び状」「予備校ブギ」「大好き!五つ子」、舞台は、こまつ座「きらめく星座」、大森カンパニー「家族、片恋」などに出演。繊細な感受性と静かな情熱を併せ持った「朗読」も高く評価されている
──大人の芝居コント「更地」シリーズは長く続いている人気シリーズとのことで、今回はあの「イモ欽トリオ(長江健次、西山浩司、山口良一)」を迎えての公演になります。皆さんとコントをご一緒される形になるわけですよね。イモ欽トリオといえば、私もテクノ歌謡の「ハイスクールララバイ」(作詞:松本隆、作曲:細野晴臣、1981)を6歳か7歳ながら歌マネしていた記憶がありますよ。毎週のようにTBS系の歌番組「ザ・ベストテン」で1位だった大ヒット曲でしたからね。萩本欽一さんの番組『欽ドン!良い子悪い子普通の子』、いつも観ていました。
長谷川:今回は、何回目かの「イモ欽トリオ」さん出演バージョンの「更地」なんですよ。山口良一さんは、大森カンパニーの舞台に全て出ていらっしゃって、前回「家族、片恋」で初めてご一緒させていただきました。その流れで、今回もまた「イモ欽トリオ」さんの一人としてご一緒させていただいています。

稽古場に集まった、舞台『更地にイモ欽 そして歌〜更地23〜』出演者のみなさん。最前列の3人が「イモ欽トリオ」左から山口良一、長江健次、西山浩司の各氏。山口氏の背後に立つのが、大森カンパニーの大森博氏、その向かって右隣が長谷川真弓氏
──ざっくり、どんな雰囲気のコメディなんでしょうか。観ていない方はイメージしづらいと思うのですが、例えば舞台上にはほとんど何もなくて、観た人がイマジネーションでシチュエーションを思い描く、というような感じですか。
長谷川:まさに舞台には机と椅子だけみたいな、そんな感じです。本当に最小限のものだけが置いてあって、あとは衣装などでなんとなく雰囲気を出していく形ですね。
──物に頼れない分、演技力が物を言うといいますか、俳優の皆さんの力量に委ねられているということですね。
初舞台の仲間が繋いだ「大森カンパニー」との縁
──長谷川さんが、最初に「大森カンパニー」さんと関わることになったきっかけは何だったのでしょうか?
長谷川:大森カンパニーの常連である俳優の佐久間哲くんと私は、初舞台が一緒だったんです。私の初舞台は遅くて22歳の時でした。それが「アーリータイムリーズ」という1991年に俳優の萩原聖人くん、鈴木省吾くん、佐久間くん、そして2020年に亡くなってしまった渡辺航くんらによって結成された演劇集団で、彼らがやっていた舞台に誘われたのが、私にとって初めての舞台でした。
みんなとはいまだに仲良しなんですが、その佐久間くんが大森カンパニーの常連で「一度、観に来てよ」と言われて行ったのが最初です。すごく面白いなと思って、「いつかできたらいいね」という話をしていたら、コロナ禍に入ってしまって。
コロナ明けくらいにもう一度観に行ったときに、大森さんとお話しして「出演どうですか?」と誘っていただいたのが、前回の人情喜劇「家族、片恋」出演でした。なので、きっかけは佐久間くんですね。
──その舞台に2025年11月に初出演され、今回「コメディ、面白いから出たい!」と言ったら、本当に出ることになってしまったんですね。実際に稽古をやってみていかがですか?どのあたりが大変なんでしょうか?
長谷川:私は笑いを取ろうということはあまり考えていなくて、それよりもまず、お芝居をきちんとやるということ。大森さんがいつもおっしゃっているのですが、まずはお芝居をきちんとやって、笑いはそこからのお話なので、今はまだそのベースを固めている状態です。かなり焦っていますけれど(笑)、とにかく大森さんのおっしゃることに忠実にやっている感じですね。あとは皆さん魅力的な演者さんたちなので、勉強させてもらっています。

舞台『更地にイモ欽』コント稽古中の長谷川氏(左)、大森氏、弘中麻紀氏(中央)、本間剛氏(右)
8歳でデビュー、11歳で『太陽の子』主演
──長谷川さんご自身のキャリアの最初のスタートは、何歳の時ですか?
長谷川:8歳の時に児童劇団に入って、9歳くらいからぼちぼちCMやドラマに出させてもらった、という感じですね。
──長いキャリアをお持ちですが、コメディは今回が初めてなんですね。実は以前、昔の長谷川さんの映像(NHKドラマ『太陽の子』主演:長谷川真弓)を見せていただきました。あれは何歳の時ですか?
長谷川:撮ったのが11歳ですね、小学6年生です。もう、あれ以上の演技はできません(笑)。
──劇団に入られてから3、4年しか経っていない頃に、すでにあれだけの演技をされていたんですね。22歳で初舞台を踏まれてからは、舞台には定期的に出演されてきたのですか?
長谷川:そこまで数はやっていないんです、やはり映像出身なので。ただ、初舞台の翌年に、出演したNHKドラマ「父の詫び状」が舞台化されて、紀伊國屋ホールで舞台もやらせていただきました。その次の年も舞台をやって、さらにその次の年には、こまつ座の「きらめく星座」というお芝居で半年ほど地方を回らせていただきました。その後は少し間が空いて、ポツンポツンとやらせていただいている感じです。
一番印象に残っているのは、お昼の帯ドラマでやっていた『大好き!五つ子』シリーズ(TBS系)の演出家の方が初めて舞台を手がけるという時に「やらない?」と誘ってくださった作品です。「ぜひ!」とお答えしたのですが、当時は二人目の子どもの不妊治療をしている最中で「もしかしたら妊娠するかもしれないんですけど」というお話をしていたんですね。台本は一応上がっていたのですが、やはりその後に授かったので、役を「妊婦」の設定に変えていただいたんです。
──すごいですね。妊婦の役に変えてでも長谷川さんに出演していただきたかったんですね。その舞台のタイトルは?
長谷川:「せんにゅうかん」という作品です。妊娠7か月だったかな。お腹に子どもがいる状態で、バタバタと動き回る役をやったという。今でもすごく印象に残っています。親の介護をしつつ、子どもを授かって、でも旦那とはうまくいっていなくて、というような、いろいろな話が詰まったとてもいい作品でした。いまだに舞台はいつも緊張します。稽古場でもいつもオロオロしています(笑)。
「諦めない」大森博の演出。毎回変わる舞台
──今回、ご自身で「コメディをやりたい」と言い出したとはいえ、何か意気込みのようなものはありますか?
長谷川:とにかく本番が怖いんですけど、でも楽しみでもあり、困りごとでもあり(笑)。まだ稽古が半分くらいまでしか進んでいないので、もう少しなんとかしたいですね。とにかく皆さんにご迷惑をかけないように。おそらく楽しめるところまではいかず、ずっと緊張しっぱなしだと思うのですが、それでも楽しみです。
──公演を楽しみにされている皆さんへ、「こういうところが見どころ」というものがあれば、言える範囲で教えてください。
長谷川:演者の皆さんが本当に芸達者で、素敵な方たちばかりです。それから、コメディに対する大森さんの緻密さ、「諦めない」姿勢。前回もそうだったのですが、毎回本番が終わると、次の日の朝にもダメ出しがあって、「こうなったらこうしよう」と。台本が変わるわけではないのですが、より良くするために、最後まで本当に諦めないんです。私はそこがすごく好きで。

「イモ欽トリオ」のコントを指導する大森氏(左から2番目)。右端は風間水希氏
今回もきっと、最後まできちんと皆さんに良いものを見せるということに、大森さんのこだわりがたくさん詰まっていると思います。それについていく人たちが集まっている座組なので、楽しみにしていただければと思います。ですから、一度と言わず、二度でも三度でも観に来ていただければ嬉しいです(笑)。
──確かに、舞台は毎回違いますからね。数日後に観に行くと、また違ったものが見られるかもしれない、ということですね。今回は、そんな大森さんの「更地」シリーズに長谷川さん初出演、そしてイモ欽トリオさんが出演されるとのことで、子供の頃からイモ欽好きだった私も楽しみです。もちろん、あの歌も…出てくるのでしょうか?

コントを稽古中の「イモ欽トリオ」。あれ、このポーズはもしかして…
長谷川:それも、舞台を見てのお楽しみということで(笑)。本日はありがとうございました!

【取材を終えて】
8歳から演技のキャリアを積み上げてきた長谷川真弓さんも、今回が「コメディ初挑戦」とのことで、稽古場では緊張感さえ漂っていました。そんな長谷川さん個人の事情に反して、ネタの方は爆笑間違いなしの面白さです。真面目な顔してバカなことをやるのって、とても自分にはできないなーと感じました。そして、憧れの「イモ欽トリオ」を生で観れたことの幸せは一生ものでした。だって、あの動きや、あの声が目の前にあったんですから。そんなコントや歌が目白押しな舞台『更地にイモ欽 そして歌〜更地23〜』、ぜひ劇場に足を運んで楽しんでいただきたいと思います、なー!(取材:MAG2 NEWS・田端宏章)
取材協力(敬称略):
大森博(大森カンパニー)
ソニー・ミュージックアーティスツ
濱田髙志
【関連情報】


大森カンパニープロデュースvol.58
『更地にイモ欽 そして歌~更地23~』
2026/09/09(水) ~ 2026/09/16(水) 全11公演
下北沢 小劇場B1
東京都世田谷区北沢2丁目8-18 北沢タウンホール
笑いで昭和から令和を旅しましょう!
結成もしてないが解散もしていないそんなイモ欽トリオが45周年
メモリアルを記念して『更地』の舞台に再び登場
役者による大人の芝居コント『更地』
芝居と歌、充実の二部構成?
にやり、くすくす、ゲラゲラ、ドッカン
ここに来れば笑いがある
劇場でお待ちしております!
台本提供:故林広志 脚本・構成・演出:大森博
出演:山口良一、西山浩司、長江健次、天宮良、大森ヒロシ、風間水希、本間剛、弘中麻紀、長谷川真弓、大川亜耶
チケット購入はこちらから
https://ticket.corich.jp/apply/468302/010/
【長谷川真弓さん出演情報】

『朗読劇 愛に似ている』
女優・作家の中江有里さんが書き下ろした新作を、渡辺満里奈さんと長谷川真弓さんが朗読し、田ノ岡三郎さんのアコーディオン生演奏が彩ります。終演後には出演者3人によるアフタートークも予定されています。
【日時】2026年10月3日(土)・4日(日)
【場所】MAMEHICO 銀座(東京都中央区銀座2‐2‐18 TH銀座ビル 10F)
【時間】1st Stage 開場:13:00/開演:14:00
2nd Stage 開場:17:00/開演:18:00
【出演等】
《作》中江有里
《出演》渡辺満里奈、長谷川真弓
《音楽》田ノ岡三郎









