幼少期の浅い学習経験が将来、あなたの「認知症リスク」を上げる

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高齢化社会に突入したと言われて久しい日本。平均寿命は世界トップクラスと言われ、65歳以上の高齢者の数は年々増加傾向にあります。そんな高齢化問題の中でもっとも深刻と言われているのが、認知症患者の増加。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田安春さんは、認知症を患う高齢者のほとんどが後天的要因によるもので「多くの認知症は予防可能だ」とし、その予防方法について持論を展開しています。

超高齢社会と認知症

これまで65歳以上が高齢者の定義に使われていました。最近になって、この定義を引き上げたほうが良いという意見が学会から提案されました。新しい高齢者の定義は75歳以上とすべき、というものです。提案したのは日本老年学会と日本老年病学会です。65歳から74歳まではプレ高齢者とみなすとよいと提案しています。

日本人の平均寿命は世界トップクラスです。65歳以上でも体力と知力そして気力が旺盛な人々は大勢います。65歳以上の定義はそもそも前世期の人々の平均寿命に基づいたものでした。故日野原重明先生は85歳以上で社会貢献を活発に行っている人々を新老人と定義付けました。日野原先生自身も新老人として活躍を続けて105歳の天寿を全うされました。

しかしながら、日本のこの超高齢社会には大きな課題があります。それは認知症の増加です。年齢毎に過去と比較したときには、認知症の発症率は減ってきてはいますが、高齢人口が爆発的に増えているために認知症患者さんが増えているのです。

最近、アルツハイマー病及びその他の原因による認知症患者の死亡者が急激に増加しています。地球規模で見ても大きな問題です。2015年のデータでは、世界中で約4千7百万人もの人々が認知症を患っていると推定されています。これは21世紀の最大の課題となっています。

認知症に対する治療

これまで認知症は高齢になったために起こった自然な結果だと思われてきました。現在のところ、認知症には有効な治療方法はありません。そのことが、高齢者の必然的な結果だと思われるマインドセットとなったのです。

ドネペジルやガランタミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬というお薬はアルツハイマー病やレヴィー小体型認知症の進行を遅らせる可能性はあります。

また、メマンチンはアルツハイマー病やレヴィー小体型認知症の中で重症者の進行を抑える可能性があります。しかしながらこれらの薬は軽度の認知機能障害には有効ではありません。

認知症の要因

実は、多くの認知症は予防可能なのです。認知症全体に対しての原因の割合を比較したデータがあります。それによると、遺伝的に認知症になりやすい要因を持って認知症になった人は7%のみでした。多くの要因が遺伝以外の後天的なものなのです。

認知症患者の全ての人々のうち後天的な要因でそれぞれ認知症となった割合を見てみましょう。まず、小児期における学校での浅い学習経験が8%の認知症に関連しています。小学校を中途退学すると、将来認知症になるリスクが高くなります。小児期の学習は認知機能の発達に重要なのです。

中高年では、高血圧と肥満が合わせて3%のケースに関連しています。また、中年期での聴力障害が9%の認知症に関連しています。聴力障害がなぜ認知症になるのかの詳しいメカニズムはまだ完全に解明されていませんが、明らかなリスクとなっています。

65歳以上の要因では、全部合わせると15%の認知症の原因となっています。これらには、糖尿病運動不足喫煙うつ病、そして社会的孤独が含まれます。

糖尿病、運動不足、喫煙は動脈硬化性の認知症の原因となります。また、うつ病は脳の機能を低下させます。そして、社会的孤独はコミニケーション不足となり脳の神経細胞が使われなくなるため認知症が進みます。

認知症の予防

これらの小児期から中年そして65歳以上の時期について、認知症の要因を全て取り除くと35%ものケースが予防できるのです。認知症の予防は子供も中年期の人たちもよく考えるべきでしょう。若い頃から絶えず騒音などに曝露されていると将来、認知症のリスクが高くなるでしょう。

認知症のケアでは家族と介護者のメンタルヘルスについても考慮しなければなりません。家族と介護者の多くは生活の質が下がっており、これらのうち約40%の人々に不安神経症やうつ病が発症するといわれています。家族や親戚だけでなく、社会全体での対応を真剣に考えて取り組むべきでしょう

認知症の発症年齢を平均で5年間遅らせるだけでその数を半分に減らすことができます。認知症はもう年齢による必然的な結果とみなしてはならないと思います。予防可能な部分がかなりあります。みんなで予防について真剣に考えると良いでしょう。

文献
Dementia prevention, intervention, and care. Lancet. Published: July 20, 2017
http://thelancet.com/commissions/dementia2017

image by: Shutterstock

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