どこも報じない、山口敬之氏「疑惑」の背後でうごめく権力の闇

 

一方、伊藤さんの事実認識は全く異なっている。TBSワシントン支局への就職の件を相談するために会った山口氏に連れられて入った一軒目の店でビール2杯とワイン1~2杯を飲んだ伊藤さんは、二軒目に立ち寄った鮨屋で2~3合の日本酒を飲みトイレに入った後記憶がなくなった

目を覚ましたのは、激しい痛みを感じたためだった。…下腹部に感じた裂けるような痛みと、目の前に飛び込んできた光景で、何をされているのかわかった。棚の上に不自然に、ノートパソコンが開いて載せてあり、電源が入って画面が光っているのがわかった。…こちらに向けた画面の角度から、直感的に「撮られている」と感じた。…「痛い、痛い」と何度も訴えているのに、彼は行為を止めようとしなかった。…「トイレに行きたい」と言うと、山口氏はようやく体を起こした。その時、避妊具もつけていない陰茎が目に入った。…意を決して(トイレの)ドアを開くと、すぐ前に山口氏が立っており、そのまま肩をつかまれ、再びベッドに引きずり倒された。…必死に体を硬くし体を丸め、足を閉じて必死で抵抗し続けた。頭を押さえつけていた手が離れ、やっと呼吸ができた。…もう一つのベッドは、ベッド・メイクされてカバーがかかった状態で、使われた形跡がなかったのを、はっきりと覚えている。(ブラックボックスより)

伊藤さんは、合意なき性行為、すなわち性的暴行の被害を赤裸々に記述している。

自分の中から消し去ってしまいたい記憶を呼び起こし、ジャーナリストとして気力をふりしぼったのだろう。ここまで書くのはよほど勇気のいることだ。

伊藤さんが謝罪を要求したメールに対し山口氏はこう返信している。

意識不明のあなたに私が勝手に行為に及んだというのは全く事実と違います。私もそこそこ酔っていたところへ、あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきて、そういうことになってしまった。

このように、メールのやりとりにおいては、山口氏は明確に性行為のあったことを認めているのである。

反論記事は「部屋のなかでもあなたの意思に反する行動は一切していない」「大人の女性として行動し、また眠ったのです」と曖昧な書き方ですましているが、伊藤さんの意思、大人の女性というところに、合意のうえでの性行為を示唆したつもりかもしれない。

高輪署の捜査で、二人がホテルまで乗ったタクシー運転手の「近くの駅で降ろしてほしいと伊藤さんが懇願していたという証言や、泥酔状態の伊藤さんをタクシーから引きずり降ろす山口氏の防犯カメラの映像などが確認された。そうした証拠に基づいて裁判所は逮捕状を出したのであろう。

にもかかわらず、逮捕状の執行はストップされ、捜査にあたっていた高輪署の捜査員A氏と担当検事は事件からはずされた。山口氏は不起訴となり、伊藤さんの申し立てで開かれた検察審査会でも「不起訴相当」の結論が下された。

野党議員が、事件の内容について審査会に誰がどのように説明したかを追及しても、法務省、最高裁ともに、固く口を閉ざしている。小沢一郎氏の陸山会事件における検察審への捏造捜査報告からみて、捜査当局が一般市民で構成する審査会をコントロールすることは容易である。

しかしこの結果をもって、山口氏は次のごとく冷ややかに断言した。

あなたの勘違いと思い込みが行政と司法によって粛々と退けられただけのことです。

さらには、この一件により、伊藤さんが大手出版社から本を出し野党政治家らの支援も獲得したとして、あたかも売名行為であるかのごとく批判した。

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