【白物家電の未来】プロの料理人好みに調理できる究極の電子レンジ

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業務用厨房機器の進化から、『調理家電』の未来を考える

旬刊!ブログで言えない家電の話【神原サリーとゆかいな仲間たち】

不景気だといわれている中、ここ1~2年元気なのが単機能の調理家電。ノンフライヤーやヌードルメーカーを輩出したフィリップスの力は大きいと思いますが、それ以外にもタイガー魔法瓶のタクック(ついに5代目が出ましたね。内釜がホーロー仕様でとても素敵です)、象印の圧力IHなべ、ティファールのアクティフライ、デロンギのコンベクションオーブンなど本当にたくさんの魅力的な家電が発売されています。どれも、シンプルで使いやすく、「何に使うのか」「どうやって使うのか」がわかりやすいのも生活者の心をとらえた一因でした。

さて、次の一手はどこにあるのか?それで私が考えるのが、業務用厨房機器のこと。スチコン(スチームコンベクションオーブン)がもとになって10年前にシャープから登場したのが“水で焼く”というキャッチフレーズの過熱水蒸気式のオーブン「ヘルシオ」でした。

そもそも、このスチコンとは、ドイツに拠点を置くラショナル社によって、1976年に世界で初めて蒸気加熱「スチーム機能」と熱風対流加熱「コンベクションオーブン機能」というふたつの機能を兼ね備えた加熱調理機、コンビ・スチーマー(スチームコンベクションオーブン)として発表されたもの。業務用厨房の世界に大きな変革をもたらし、現在、スチームコンベクションオーブンでの世界シェアは54%以上となっています。

その後もどんどん進化を続け、2011年11月に発表された「SelfCookingCenter whtitefficiency(セルフクッキングセンター ホワイトエフィシェンシー)」は、センサーによる計測を1分間に60回行い、各段を別々にコントロールする機能を備えるため、種類の異なるメニューの同時調理も可能に。例えば、「ピザ」「チキン香草焼き」「ハンバーグ」「サーモンムニエル」「鶏のから揚げ」の調理が10分弱の時間で同時に仕上がってしまうのですから、ただただびっくりしてしまいます。しかも細かな材料の計測をする必要もないというのです。

エネルギー密度とスチーム密度を高め、風速の調整をすることで、これまでスチームコンベクションオーブンでは難しかった生パスタや点心類の調理もOK。専用のベーカリーオーブンを備えなくても160個のクロワッサンを均一な膨らみと焦げ目で焼き上げます。従来なら、グリル、蒸し器、回転釜、大鍋、フライヤーなど複数の調理機器を使って行わなければならなかったものだ。それらがひとつに集約されたことで調理時間も、手間も、機器を置くスペースも、人手も削減することができるのですね。実は、ホテルオークラ別館で開催されたラショナルの「SelfCookingCenter whtitefficiency」の発表会には、私自身も出席していて、プロ用の機器のすごさを目の前にし、感動の連続だったのでした。

で、2011年に発表されたこのスチコンは、今年さらに進化を遂げ、世界で唯一“五感を持つ調理システム”へとステップアップしています。新モデルの「SelfCookingCenter 5 Senses」は、高度な技術のセンサーによって庫内条件と食材の稠密度を感知し、それぞれの食材の大きさ、投入量、状態を認識した後で、最適な焼き色を独自に算出し、予測。希望の仕上がりを得るための理想的な調理プロセス、どのように食材を調理するかを調理中に算出し、それに加えて料理人の好みの調理習慣を記憶し、それを実行するのです。さらに、料理人とコミュニケーションを行い、その指示を実行するために、システムが現在行っていることを常に表示します。

しかも、前モデルのスチコンを導入している人たちも、最新技術のソフトウェアの無料アップデートによって、この「五感」を備えた先進的な厨房機器へと進化することができるという点でも、素晴らしいなと思います。こうなると厨房機器も巨大な頭脳機器ということになるのですね。

家庭用のヘルシオも、2014年モデルではぐっとコンパクトになり、焼き魚と茶碗蒸しが同時調理できたり、高血圧や糖尿病などの疾病を抱える人向けの健康メニューを組み込んだりと、ずいぶん進化していますし、パナソニックの三ツ星ビストロもセンサーを高精度にすることで野菜の分量を気にしないでも煮物ができるなど、使い勝手がよくなっています。

でも、まだまだラショナルの神業にはほど遠いようにも思えます。100Vという日本独自の少ないパワーの中では、調理機器の開発のハードルが高いのかもしれませんが、同時に多彩な料理を作り、しかも短時間で省エネ。ボタンはひとつですべておまかせ…そんな夢の家電が生まれるといいですよね。

最後にもうひとつ、家庭用でも広まるといいなと思っているのが、「真空調理」の手法。これは、従来の調理の「焼く」「蒸す」「煮る」とは異なり、生の食材(又は下処理済の食材)を調味料と一緒に真空袋に入れ、真空パックした後、科学的根拠に基づくそれぞれの食材に最も適した加熱調理温度でパックのまま湯煎又はスチームで低温加熱調理する方法のこと。先日、テレビで紹介されていた有名レストラン「シェ松尾」のブレス鶏のソテーでも、ブレス鶏が真空調理されている様子が映し出されていました。

素材本来の風味やうまみを逃がさず、やわらかくジューシーな仕上がりになるため、調味料や香辛料がよくしみ込み、少量でも味が均一になるのが特徴で、素材の酸化やビタミンの破壊が少ないので、療養食や介護食にも向く方法。国産第1号のスチームコンベクションオーブンを作った電気厨房機器メーカー、ニチワ電機のサイトに詳しく紹介されています。

「下ごしらえ→真空包装→湯煎調理」という一連の流れが簡単にできるような調理家電の提案は、食材のロスを防ぎ、栄養価が高く、調理も簡単で高齢者向けの食事にも向くという点で、家庭にも新しい食をもたらしてくれるように思うのですが、いかがでしょう?

 

『旬刊!ブログで言えない家電の話【神原サリーとゆかいな仲間たち】』第8号(2014年12月27日)

著者:神原サリー/一条真人/岡安学
家電コンシェルジュの神原サリーとITジャーナリスト一条真人、デジタルライター岡安学の3人でお送りするメルマガです。家電の話題を中心に、雑誌やWebでは書ききれない、書けないようなディープな内容、また逆に些細な話題を取り上げていきます。ご質問、ご要望は随時募集していますので、ドシドシメールしてください。
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