マネーボイス メニュー

中国共産党の「超独裁国家」建設は最終段階。創設100年機に権力集中、習近平が日本と世界を監視支配する=江守哲

中国共産党は今年7月に創設100年を迎える。今年秋に開かれる党の重要会議では、習近平氏の長期体制確立の準備がさらに進むことになるとみられている。独裁国家のさらなる独裁化の進展である。このような国が、今後どのような進展を見せるのか、非常に興味深い。(『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』江守哲)

本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2021年1月8日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリファンドマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

創設100年を迎える中国共産党

中国共産党は今年7月に創設100年を迎える。習近平総書記は2期目の総書記任期が切れる22年秋の党大会後も最高権力者の地位を保つことを目指し、様々な施策を打ってくるだろう。

中国共産党の創設は1921年である。その後、49年に中華人民共和国が成立している。したがって、共産党のほうが国より上にあるというのが、中国の独特の構図である。

その後、66年に文化大革命があり、72年にはニクソン米大統領が訪中し、日中国交正常化が実現した。毛沢東死去の後、78年に鄧小平が実権を握り、改革開放を推進。79年には米中国交が樹立した。

しかし、89年に天安門事件が起き、世界の批判にさらされた。その後、江沢民が総書記に就任した。97年には鄧氏が死去し、7月末に香港が返還された。その後、2001年には世界貿易機関(WTO)加盟に、02年には胡錦濤氏が総書記に就任した。

08年には北京五輪を成功させ、10年には世界2位の経済大国に成長した。12年に習近平氏が総書記に就任し、18年には国家主席の任期制限が撤廃され、事実上の永久的な主席となった。

その後は強権的な政治手法が目立つようになり、19年には香港で大規模抗議デモが発生した。そして、湖北省武漢市で新型コロナウイルスの最初の感染者が確認された。また、20年には香港統制を強化する「国家安全維持法」が施行され、香港は大いに混乱した。

そして、今年21年には党創設100年を迎えるのである。結成時には50人余りだった共産党の党員は、現在では約9,200万人に増えたもようである。

さらなる権限強化で「力業」の政治が続く

国民党との内戦後、1949年に毛沢東が主導し、中華人民共和国が成立した。文化大革命などの混乱を経て、改革開放にかじを切った後も一党独裁体制を維持しながら、米国に次ぐ世界2位の経済大国に成長したことはすでにご承知のとおりである。

中国経済も昨年は新型コロナで大きな打撃を受けたものの、一時マイナスに落ち込んだ成長率はプラスに転換した。今年は8%前後の高い成長が予想されている。

習氏は年末のテレビ演説で「21年は共産党誕生100年であり、我々は追い風に乗り波乱を突き進み、必ず中華民族の偉大な復興を実現できる」と訴えたとされる。長期政権に意欲満々の習氏は、今後ますます権限を強化し、力業による政治を推し進めるだろう。

しかし、新型コロナによる国内の不安定さにも気を配ろうとしている。そのため、すでに10年比でGDPを倍増させたとして、今後は「小康社会(ややゆとりのある社会)を全面的に実現した」と宣言する予定のようである。昨年の「貧困ゼロ」達成に続き、共産党政権の実績を誇示することで、権限をさらに強化する狙いがある。

Next: 先進国の「社会資本主義化」が加速。米国も日本も例外ではない



先進国の「社会資本主義化」が進む

全国人民代表大会(全人代)は昨年、コロナの影響で5月に延期されたが、今年は例年通りに3月5日に開幕する予定である。そこでは第14次5カ年計画(21-25年)や35年までの長期目標を正式に採択し、「世界に先駆けた正常化」が演出されるとみられている。まさに演出や力の誇示ありきである。

この長期目標の設定は、習氏が3期目以降も実権を握り続けるための布石とみられている。今年秋に開かれる党の重要会議で習氏の長期体制確立の準備がさらに進むことになるとみられている。独裁国家のさらなる独裁化の進展である。

このような国が、今後どのような進展を見せるのか、非常に興味深いところである。

しかし、世界は新型コロナをきっかけに、社会資本主義化が進んでいる。資本主義の権化である米国でさえもそうなりつつある。日本は党の昔にそうなっているのだが、この傾向は先進国でもますます進みそうである。

バイデン政権でも米中の溝は埋まらない

さて、トランプ政権に苦しめられた中国だが、バイデン政権下でも外交では厳しい局面が続くだろう。

トランプ政権を通じて対立が深まった米国との関係は、バイデン新政権でも修復は容易ではない。また、関係が良好だった欧州とも香港問題などをきっかけに軋轢(あつれき)が生じている。

このような状況もあり、習氏は「自力更生」を掲げ、内需中心の成長を目指す方針を示している。内向きの政策である。

習近平のIT企業「締め付け」強化は悪手

しかし、一方で電子商取引最大手・阿里巴巴(アリババ)集団をはじめとするIT企業への締め付けを強化していると報じられている。

しかし、このやり方は、習氏の首を絞めることになるだろう。国内外に強硬姿勢を取れば、四面楚歌になり、政権運営が不安定化するからである。

特に最近のアリババへの圧力は異常ともいえる。何か身の危険を感じてるのだろうか。やましいことがあるため、それを暴かれたくないのだろうか。

アリババであれば、習氏の何かしらの情報を持っていてもおかしくはない。ネット上では、アリババ創業者のジャック・マー氏が行方不明になっているとの報道もなされていた。実際にはそうではなかったようだが、そのような憶測を呼ぶほど、この件については様々な立場の人々がナーバスになっている。

Next: 日米欧は後れを取る?「デジタル人民元」導入は最終段階へ



北京五輪までに「デジタル人民元」導入へ

一方で、内々に進んでいるのが、デジタル人民元の導入である。すでに準備は最終段階に入っている模様である。

昨秋には実際の利用を想定した大規模な実証実験がスタートしたが、中国政府は22年2月の北京冬季五輪までに中銀が発行する法定通貨では世界初となるデジタル通貨が流通する目標を立てていた。それがいよいよ、21年中にも登場する見通しである。

当面は現金との併存が続くようだが、いずれ経済のデジタル化が進展し、社会の仕組みが大きく変わるだろう。

報道によると、実態はかなり進んでいるようである。例えば、インターネットに接続していない状態でもデジタル元をやりとりすることができるようになっているという。スマホ同士を接触させるだけでお金の受け渡しができ、通信状況に関係なく取引できることが確認されたようである。まさに、手渡しがスマホに代わっただけである。

このようなオフラインのやりとりはオンラインよりも高度なセキュリティーが求められるとされている。しかし、いまや暗号資産(仮想通貨)などに利用されているブロックチェーン技術の進化で、このようなことがすでに可能になっているという。

これにより、法定通貨のデジタル化が現実のものになりつつある。そして、その先鞭をつけているのがデジタル元である。

世界の中銀も実証実験を計画しているが、人民元のデジタル化は明らかに先行しているようである。

中国はデジタル人民元を足掛かりに、人民元の国際化を進めようとしている。デジタル人民元の誕生で、それが一気に進む可能性もある。すでに中国はアジア諸国を取り込みつつあり、将来は巨大経済圏構想「一帯一路」参加国を中心にデジタル人民元の利用拡大を図る方針のようである。まさに「デジタル人民元経済圏」の構築である。

デジタル人民元の国際化はまだ先か

こうなると、他国はもはや止められないだろう。このように、新しいことは先駆者利益がある。

米国はデジタルドルの開発・導入に慎重である。しかし、そうこうしているうちに、中国はすでにデジタル通貨の導入に向かってい進んでいる。国が力を入れていることも、他国との大きな違いである。

一方、現実的にはデジタル人民元がすぐに世界に広がる可能性は極めて低い。というのも、中国は人民元と外貨の交換を制限しているからである。

したがって、当面は貿易決済での利用を促すなどして、国際化に向けた地ならしを進めるとみられている。

Next: 焦る日米欧の中銀。中国の「監視社会」化はさらに進む



加速する中国「監視社会」化

日米欧の中銀は、中国の素早い行動に焦りを感じていることだろう。20年10月のG7財務相・中銀総裁会議は中国を念頭に、「デジタル通貨は透明性、法の支配、健全な経済ガバナンスの3条件を満たす必要がある」としていた。

一方、デジタル元の導入には、中国国内の電子決済サービスを担う阿里巴巴(アリババ)集団や騰訊(テンセント)の民間2社を抑制することが求められる可能性がある。両者は圧倒的なシェアを占めるが、当局は民間企業が資金の流れを把握することを警戒し、独占禁止法でアリババなどへの締め付けを強めているもようである。

いずれにしても、デジタル人民元が一般に普及すれば、当局が資金の流れを見張りやすくなり、中国の「監視社会」化がさらに進むだろう。まさに共産党の思い通りである。

このように、中国政府は国内外の状況を硬軟織り交ぜながら把握し、掌握する方向にある。これはもう止めようがない。

このようなトレンドをよく理解することが、2021年以降の市場動向を見極めるうえで重要である。

続きはご購読ください。初月無料です

<初月無料購読ですぐ読める! 1月配信済みバックナンバー>

※2021年1月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2021年1月配信分
  • 「トランプ劇場」の終末(1/8)

いますぐ初月無料購読!


本記事は『江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』2021年1月8日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2020年12月配信分
  • 「コロナに振り回された一年も終わる」(12/26)
  • 「バイデン政権は中国に屈する」(12/11)

2020年12月のバックナンバーを購入する

2020年11月配信分
  • 「バイデン政権も中国を止められない」(11/27)
  • 「バイデン氏の勝利確定までは紆余曲線」(11/13)

2020年11月のバックナンバーを購入する

2020年10月配信分
  • 「米大統領選挙はトランプ氏の勝利へ」(10/23)
  • 「トランプ大統領がコロナに感染」(10/9)

2020年10月のバックナンバーを購入する

2020年9月配信分
  • 「米中対立は真の戦争に発展か」(9/25)
  • 「中国の脅威」に怯える米国(9/11)

2020年9月のバックナンバーを購入する

2020年8月配信分
  • 「安倍首相が辞意」(8/28)
  • 「米中対立の末路は米国にとって悲惨な結果に」(8/14)

2020年8月のバックナンバーを購入する

2020年7月配信分
  • 「米英同盟はこのまま沈没するのか」(7/24)
  • 「トランプ大統領は末期症状」(7/10)

2020年7月のバックナンバーを購入する

2020年6月配信分
  • 「北朝鮮は学習しない」(6/26)
  • 「トランプとともに沈みゆく米国」(6/12)

2020年6月のバックナンバーを購入する

2020年5月配信分
  • 「ますます追い込まれる米国」(5/22)
  • 「200年ぶりの大変革が起きるのか」(5/8)

2020年5月のバックナンバーを購入する

2020年4月配信分
  • 「米国の怒りと新秩序への序章」(4/24)
  • 「新型コロナウイルスと米大統領選の行方」(4/10)

2020年4月のバックナンバーを購入する

2020年3月配信分
  • 「新型コロナウイルスはとんでもない大事件」(3/27)
  • 「新型コロナウイルスの影響は甚大」(3/13)

2020年3月のバックナンバーを購入する

【関連】日本は破滅ルートを選んでしまった。2021年が失業 諦念 怨嗟の年になる理由=鈴木傾城

【関連】西友売却は喜べない。ウォルマートは危機的デフレ不況の日本を見限った=児島康孝

【関連】キャッシュレス決済で中国にデータ筒抜け。日本人が習近平の監視下に=黄文雄

image by:Alessia Pierdomenico / Shutterstock.com

江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ』(2021年1月8日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

江守哲の「ニュースの哲人」~日本で報道されない本当の国際情勢と次のシナリオ

[月額880(税込) 毎月 第2金曜日・第4金曜日(年末年始を除く)]
このメールマガジンでは、国際情勢や国内外の政治情勢の「真の背景」を読み解きます。経済は政治で決まり、政治は国の組織が決めます。そして、すべてのことがシナリオに基づいて動いています。しかし、その舞台裏は意外とシンブルです。それらの「真の背景」を理解すれば、すべてが面白いように見えてきます。毎月第2・第4金曜日にお届けするこのメルマガでは、これまで世界各国の人間と仕事をしてきた経験と人脈から、マスコミが報じることができない独自の見解をお届けします。ビジネスマン、投資家、学生など、様々な立場のひとにとって有益な情報となるでしょう。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。