触り始めたばかりのClubhouseで「奇跡の出会い」がありました。今回は私が体感した面白さ・すごさと、同社の買収に動くのはどこか?について解説します。(『週刊 Life is beautiful』中島聡)
※本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2021年2月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ブロガー、起業家、ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)、MBA(ワシントン大学)。 NTT通信研究所、マイクロソフト日本法人、マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発に携わっている。
Clubhouseで「GameStop株急騰劇」の当事者に出会えた
触り始めたばかりのClubhouseですが、先日、すごいことが起こりました。話題の「GameStop現象」に関して、私なりの解説をしようと部屋を用意したところ、「奇跡の出会い」が起こったのです。
部屋を用意すると、すぐに数人の人が入って来てくれたので、「聞き手役」の人を募集すると、すぐにメルマガの読者の1人が手を上げてくれました。そこで彼をスピーカーの1人として招待し、まずは前回のメルマガに書いたこと(ロビンフッド、WSB、ショートセラー、ショートスクイーズとは何かなど)を10分ほどで解説しました。
そして、「質問やコメントのある人は手を上げてください」と言うと、すぐに2人の人が手をあげてくれました。
1人目はフロリダに住む日本人で、実際にWSBに書かれた情報を見て、ロビンフッド経由で Gamestopの株を購入している人でした。
私がなぜそんな無謀なことをするのかと尋ねると、必ずしもキャピタルゲインを狙っているわけではなく、個人投資家とヘッジファンドとの戦いに当事者として参加するための「お布施」ぐらいの気持ちで投資をしているとのことです。
なので、少しぐらい上がったからと言って売る気はないし、万が一投資した額全部を失ったとしても構わないと言うのです。
彼らロビンフッダーたちの気持ちに関しては、おおよそ想像は出来ていましたが、当事者から直接話を聞くことができたのはとても有意義でした。
彼らにとっては、これは「投資」ではなく、エンターテイメントとギャンブルが融合したものなのです。純粋なギャンブルと違うのは「みんなでヘッジファンドの鼻を明かす」ことが一番の目的になっており、その後どうするのか(どの時点で売り抜けるのか)などは、あまり深く考えていないのです。
なんの準備もせずに思いつきで開いた部屋に、この事件の当事者の1人が参加してくれた。これだけでも、Clubhouseの面白さ・すごさを体感できる出来事でした。
ヘッジファンド側の当事者も同時に参加していた
さらに、同時に参加してくれた人がまさに奇跡でした。
彼女はニューヨークのヘッジファンドで働いている日本人で、そのヘッジファンドは、もう一方の当事者であるMelvinCapitalに投資をしているのだそうです。
Clubhouseではそんな彼女の目線から見た今回の事件について語っていただきましたが、Melvin Capitalと彼らを救済したCitadelとの関係、および、Melvin Capitalとそのファンドへの投資家(LP)との関係などを、当事者の目線で語っていただいたのは、私にとってもとても良い勉強になりました。
あまりにも素晴らしいセッションになったので、私が「録音していないのがもったいない」と発言すると、彼女は「オフレコだからこそこんなことが言える」と答えてくれたのですが、それがまさにClubhouseの魅力なのだと思います。
Next: 最大の魅力は、世界中の人と「オフレコ」の話ができること
世界中の人と「オフレコな会話」が成立してしまう
リアルの世界でも、「オフレコだからこそ聞ける話」はありますが、それは特定の場所で、特定の人と出会ってこそ成り立つ会話であり、よほど積極的で社交的な人でない限り、自分の普段付き合っている人の枠組みを超えてそんな会話を持つことはとても困難なのです。
しかし、Clubhouseという仕組みを使うと、こんな風に、一瞬のうちに世界中の人と「オフレコな会話」が成立してしまうのです。
上手に利用すると、Clubhouseは、とんでもない価値のある「学びの場」になってくれる可能性があると感じました。
実生活に悪影響も? Clubhouseの「正しい使い方」はまだ存在しない
Clubhouseは実時間を奪うため、気をつけて使わないとエンジニアとしての生産性が落ちてしまうので注意が必要です。実際、Clubhouseを始めてから、プログラミングをする時間が大幅に減ってしまいました。
生産性のためには、「Clubhouseは封印した方が良い」とも考えたこともありましたが、先日の体験があまりにも素晴らしかったので、今後は時間を決めて限定した形で参加したいと考えています。
1つ考えているのはClubhouseのインタビューへの応用です。私のところには時々日本のメディアから取材がありますが、それをあえてClubhouseを使ってオープンな形で行うことにより、取材そのものをエンターテイメント・勉強する場にしようというアイデアです。
ちょうど、日本の新聞社から取材の申し込みがあったので、「Clubhouseを使いませんか?」と提案したところです。それに加え、このアイデアを Twitterでつぶやいたところ、2件ほど取材の申し込みがありました。
Clubhouseのような新しいプラットフォームは、「これが正しい使い方」のようなものはないので、こんなふうに、自分の都合の良いままに利用してみるのが一番良いと思います。
Next: Clubhouseはどこが買収する?世界的エンジニアの予想
Clubhouseはどこが買収するか
ちなみに、ネット上で「Clubhouseはどこが買収するか」が話題になっていました。
「Clubhouseが流行ると困る」という意味で言えば、FacebookとSpotifyが筆頭です。
ClubhouseはPodcastとガチに競合するので、最近Podcastを成長戦略として位置付けているSpotifyにとっては大問題です。私がSpotifyのCEOであれば、何としてでも吸収合併に持ち込むと思います。Spotifyの株価総額は現時点で$65 billionですが、最大で25%程度の希薄化を起こしてでも買収する価値があると思います。
実際の交渉は、$5 billionぐらいから始まるでしょうが、$15 billionという巨額買収(全額株式)があっても不思議はないのです。
別の言い方をすれば、もしSpotifyが株式交換でClubhouseを吸収合併すると発表したら、私はすぐにSpotifyの株を入手します。
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『週刊 Life is beautiful』(2021年2月9日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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