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「日本人の現金離れ」進行も、コロナ後は元通り? クレカ=悪の偏見が生む奇妙な決済環境=岩田昭男

キャッシュレス還元事業とコロナ禍が後押しし、現金決済比率が大幅に下がりました。この調子で行けば、2024年にキャッシュレス比率40%という政府の目標の達成はそう難しくなさそうに思われます。ただ、この前向きな数字が出たからといっても、安心とはいかないと私は思っています。基本となるクレジットカードへの「偏見」がいまだに国民の間に根強くあり、薄れないと見るからです。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)

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プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。

キャッシュレス還元事業の成果が如実に表れた調査

日本銀行の情報サービス局内に事務局を置く「金融広報中央委員会」は、2020年8月から9月にかけて「家計の金融行動に関する世論調査」を行いました(2人以上の世帯で2,052世帯が回答)。

買い物など毎日の支払いの主な決済手段を複数回答で聞いたところ、1,000円以下の決済で、現金の割合は前の年(2019年)の84%から70%に低下しました。つまり、現金を使う機会が大幅に減ったのです。一方、クレジットカードは9.1%から14.1%に、電子マネーは、18.5%から29.6%にそれぞれ増えました。

また、1万円を超え5万円以下の決済でも、現金の割合は前年の48.5%から33.9%に低下しました。一方で、クレジットカードは、58.5%から65.1%に、電子マネーは3.4%から6.4%にそれぞれ上昇しました。

いずれも2007年以降の比較可能な年で決済手段としての現金の割合は過去最低に、クレジットカードと電子マネーの割合はともに過去最高となっています。

本調査について「2019年10月のポイント還元制度のスタートがキャッシュレス化を後押しするきっかけとなった。さらに新型コロナウィルスの感染拡大がキャッシュレス化の推進に影響した可能性もある」と金融広報中央委員会では総括しています。
※参考:家計の金融行動に関する世論調査 – 知るぽると

キャッシュレスの便利さに気づいた国民たち

それにしても、なぜ今頃にこれほどの大事なデータが出てきたのか解せません。

ポイント還元事業をめぐって、コロナ禍で「延長すべきだ」「いや、止めるべきだ」とすったもんだしている間にも、国民の間にはキャッシュレスの便利さとお得さが急速に広がっていったと言うことでしょうか。

それがここに裏付けられたと言えるでしょう。

この調子で行けば、2024年にキャッシュレス比率40%という政府の目標の達成はそう難しくなさそうに思われます。

ただ、この前向きな数字が出たからといっても、安心とはいかないと私は思っています。基本となるクレジットカードへの「偏見」がいまだに国民の間に根強くあり、薄れないと見るからです。

Next: 「クレジットカード=悪」の根強い偏見。キャッシュレス社会はまだ先?



「クレジットカードは借金」と決めつける人々

私は30年にわたって全国の消費生活センターでクレジットカードの使い方を話してきました。

その中でいつも痛感したのは、クレジットカードの捉え方が日本人は間違っているのではないかということでした。

講演会には必ず、「クレジットカードは借金」と決めつける人たちも来ていました。彼らが共通して非難するのは、クレジットカードのユーザンス(支払い猶予期間・カード会社による立て替え期間)があるから、それは借金とイコールではないかと叫ぶのでした。

基本、日本人の心の中にはこの考えがあると私は思っています。

米国は「支払い猶予期間」を大歓迎

一方、米国ではこの期間をグレースピリオド(金利を優遇してくれる、金利がなく貸し出してくれる素晴らしい期間)と考えています。

そして締め日の翌日にクレジットカードで買い物すれば、さらに猶予期間が倍に伸びるという裏技まで発明して宣伝に努めていました。

まさにここに日米のクレジットカードの違いが現れています。

私も米国の考え方が全て良いとは言いません。しかし、少なくとも「クレジットカード=悪」と決めつける風潮だけは何とかしないといけません。

正しいキャッシュレスの向き合い方を学ぶ必要

キャッシュレス化が進めば、そのクレジットカード嫌いも少しは薄まっていくでしょうが、放っておいてはいけません。

偏見を持つ前にキャッシュレスの上手な使い方を学ぶべきです。

できれば、義務教育の中で、または高校課程でキャッシュレスを学ぶ時間を設けて、正しい利用方法を学ばせるのが良いと思います。

Next: 普及率だけにこだわるのは危険。キャッシュレス教育をやるべき



普及率だけにこだわるのは危険

今回のキャッシュレス騒動の中で、そうしたオーソドックスな提案がまったく出てこなかった点に、我が国の文化の貧しさが現れているようで悲しくてなりません。

政府は、キャッシュレスの普及率ばかり気にするのではなく、もっと根本的なキャッシュレス教育をしっかりやるべきではないでしょうか。

それを痛感するこの頃です。

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image by:WHYFRAME / Shutterstock.com

達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2021年3月1日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。

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